常満寺鐘楼とは
常満寺鐘楼は、愛知県犬山市大字犬山字西古券にある浄土宗西山禅林寺派の寺院、日輪山常満寺の境内に建つ寛政8年(1796年)の鐘楼で、平成19年(2007年)12月5日に登録有形文化財に登録された。本堂の南方に東西棟で建つ、木造平屋建・建築面積19平方メートルの小さな建物である。
形式は袴腰付鐘楼。地面から立ち上がる下部を板や漆喰で袴のように覆い、その上に鐘を吊る軸部を載せる作り方で、江戸時代の寺院で広く用いられた。屋根は入母屋造、葺材は桟瓦葺とする。
上部は方一間、つまり柱間ひとつ四方の吹放ちで、壁がない。四周には縁が廻る。柱は円柱ではなく角柱で、その上に載る軒まわりの構成が、常満寺鐘楼の見どころをほとんど決めている。
軒下を読む
文化庁の解説は、常満寺鐘楼の構造をかなり具体的に記している。「方柱を頭貫と台輪で固め、三斗組とし、中備に蟇股を置く。軒は一軒疎垂木で、妻は木連格子とする」。順に見ていくと、この鐘楼が何を選び、何を選ばなかったかがわかる。
頭貫は柱の頂部を貫いて横に繋ぐ材、台輪はその上に載せる平たい輪状の材である。角柱の頭を二重に締めることで、壁のない吹放ちの軸部が捩れないようにしている。壁で支えられない建物ほど、この部分の仕事が重くなる。
三斗組は、大斗の上に肘木を渡し、その上に三つの斗を並べて軒桁を受ける組物である。禅宗様の建物に見られる三手先のように何段も前へ持ち出す形ではなく、一段で受け止める簡素な部類にあたる。柱と柱の中間、いわゆる中備には蟇股が入る。左右に足を広げた輪郭の板材で、荷重を分けながら装飾も兼ねる。
軒は一軒疎垂木。垂木を一段だけ、間隔をあけて配する構成で、二軒にすれば軒はより深く見える。妻側は木連格子、細い材を縦横に組んだ格子で塞ぐ。彫刻を多用せず、材の組み方そのもので面を作る選択がここに出ている。
文化庁が「伸びやかな屋根勾配」と評したのは、この軽い軒まわりの上に載る入母屋屋根の伸び方を指す。建築面積19平方メートルという寸法に対して、屋根は大きく見える。
登録の理由と、火災を越えたこと
登録番号は23-0267、登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。登録年月日は平成19年(2007年)12月5日、官報告示は同月19日にあたる。登録有形文化財は平成8年(1996年)に始まった届出制の保護制度である。使い続けることを前提に、外観の大きな改変を届出の対象とする仕組みになっている。
文化庁の解説は、常満寺鐘楼を「境内景観を彩る」建物と位置づける。個々の細部の希少性というより、境内という場のなかでこの建物が担っている役割が評価されている。
その境内が大きく変わったのが平成30年(2018年)である。寺の公式サイトによれば、この年に火災に見舞われ、令和5年(2023年)に本堂・客殿を含む伽藍が再建された。犬山市が公表する登録有形文化財一覧に載る常満寺の物件は、現在この鐘楼(23-0267)と山門(23-0270)の2件である。常満寺鐘楼は、境内で寛政年間の姿をとどめる数少ない建物になった。
見どころ
袴腰の面と、上部の軽さ
下から見上げると、袴腰の閉じた面と、その上の吹放ちの軽さが対になっているのがわかる。下半分は塞ぎ、上半分は抜く。鐘の音を遮らないための構成であり、同時に鐘楼という建物の見た目を決めている要素でもある。
四周を廻る縁は、鐘を撞く人が立つ場所である。実用の床でありながら、外から見れば建物の腰を一周する線として働く。
低い位置から軒を見る
三斗組と蟇股は軒下にあるため、離れて立つと屋根に隠れる。少し近づき、視線を上げて軒の裏へ入れると、大斗・肘木・三つの斗という順序が読み取れる。中備の蟇股は柱間の中央にあるので、柱の位置を先に確かめてから探すと早い。
妻面に回り込む
東西に棟が延びるため、妻面は南北を向く。木連格子はここに現れる。正面から見ているだけでは目に入らないので、鐘楼のまわりを一周してみたい。細い格子越しに小屋組の影が見える角度がある。
山門との関係
常満寺鐘楼は、参道から山門をくぐるとすぐ視界に入る位置にある。山門は犬山城松の丸裏門を明治10年(1877年)に移した城門で、こちらは同じ境内の登録有形文化財である。城の門と寺の鐘楼という出自の違う二棟が、数十メートルの距離で並んでいる。
常満寺鐘楼の見学方法
常満寺の境内は、寺の公式サイトによれば全日午前9時から午後5時まで開門している。拝観料の設定は公表されていない。鐘楼は境内に建つため、開門時間内であれば近くまで寄って見上げることができる。
鐘は寺の法要と行事に用いられるもので、自由に撞くことはできない。ただし公式サイトは、12月に「フライング除夜の鐘撞き会」を行い、どなたでも参加できると案内している。大晦日を待たずに一足早く鐘を撞く行事で、日程は天候や寺の都合で変わるため、訪れる前にお知らせを確認したい。この情報は2026年8月31日に確認した。
撮影の可否について寺の公式な案内はない。境内は法要の場でもあるので、堂内や参列者にレンズを向けることは避け、迷うときは寺務所に声をかけるとよい。
アクセスは名鉄犬山線・犬山駅から徒歩約10分。城下町の本町通りから一本西の大本町通りに面した参道を西へ入る。境内には無料の専用駐車場がある。犬山城の天守までは北へ600メートルほどである。
Q&A
- 常満寺鐘楼は見学できますか。拝観料はかかりますか。
- 常満寺の境内は全日午前9時から午後5時まで開門しており、この時間内であれば鐘楼を間近で見学できます。拝観料の設定は公表されていません。堂内に上がる形の公開ではなく、境内から外観を見る形になります。
- 常満寺鐘楼の鐘を撞くことはできますか。
- 普段は自由に撞くことはできません。ただし常満寺の公式サイトは、12月に「フライング除夜の鐘撞き会」を開き、どなたでも参加できると案内しています。大晦日より早い時期に鐘を撞く行事です。日程は変わることがあるため、事前にお知らせをご確認ください。
- 常満寺鐘楼はいつ建てられたものですか。
- 文化庁の国指定文化財等データベースは年代を寛政8年、西暦1796年としています。江戸時代後期の建築で、平成19年(2007年)12月5日に登録有形文化財に登録されました。
- 常満寺鐘楼は平成30年の火災で燃えなかったのですか。
- 常満寺の公式サイトは、平成30年(2018年)に火災に見舞われ、令和5年(2023年)に本堂・客殿を含む伽藍を再建したと記しています。犬山市が公表する登録有形文化財一覧には、現在も鐘楼(23-0267)と山門(23-0270)の2件が載っています。
- 常満寺鐘楼へは犬山駅からどう行きますか。
- 名鉄犬山線・犬山駅から徒歩約10分です。本町通りから一本西の大本町通りに面した参道を西へ入り、山門をくぐると本堂の南側に鐘楼が建っています。境内には無料の専用駐車場があります。
基本データ
| 名称 | 常満寺鐘楼(じょうまんじしょうろう) |
|---|---|
| 所在地 | 愛知県犬山市大字犬山字西古券281 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) |
| 指定年 | 平成19年(2007年)12月5日登録 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 建築面積19平方メートル、木造平屋建 |
| 所有者 | 宗教法人常満寺 |
| 公開状況 | 境内は全日午前9時から午後5時まで開門。外観のみ見学可能 |
参考文献
- 国指定文化財等データベース「常満寺鐘楼」(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00006605
- 文化遺産オンライン「常満寺鐘楼」(文化庁)
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/142368
- 犬山市の文化財(犬山市 教育部 歴史まちづくり課)
- https://www.city.inuyama.aichi.jp/kurashi/bunka/1001063/1001068.html
- 犬山市歴史文化資源データベース(犬山市)
- https://www.city.inuyama.aichi.jp/kurashi/bunka/1001063/1012722.html
- 日輪山 常満寺 公式サイト
- https://jhoumanji.jp/
最終更新日: 2026.08.31