主屋の背後に立つ小さな道具蔵
篠永酒造土蔵は、愛媛県四国中央市具定町正之森にある昭和12年(1937年)建築の蔵で、平成15年(2003年)12月1日に登録有形文化財に登録された。
建築面積は17平方メートル。畳にしておよそ10畳分という小ささで、酒造りの道具をしまうために建てられた道具蔵である。土蔵造の平屋建で、屋根は切妻造の桟瓦葺。棟を南北に通し、軒側に出入口を設ける平入とする。
建つ位置は主屋の背面にあたる。通りに面した主屋や門とは違い、敷地の奥まったところに置かれた実用の建物で、所有は篠永酒造株式会社である。
「再現することが容易でない」建物として
篠永酒造土蔵の登録番号は38-0046、第39回登録である。ここで適用された登録基準は「再現することが容易でないもの」で、同じ日に登録された主屋と門が景観への寄与を理由としたのとは別の基準にあたる。文化庁データベースの分類も、主屋や門が産業関係とされるのに対し、この蔵は住宅の区分に置かれている。
基準の違いが指しているのは、この建物にかけられた手仕事の水準である。17平方メートルという寸法だけを見れば物置の域を出ないが、外壁に費やされた左官の技量は蔵として上等な部類に入る。今から同じものを作ろうとすれば、材料の調達より先に、これを塗れる職人を探す段階でつまずく。制度の枠組みについては登録有形文化財に詳しい。
昭和12年(1937年)という年代も、土蔵としては新しい部類である。伝統的な土蔵の技法が、戦前の地方の酒造家の敷地でなお現役だったことを示す例といえる。
七宝文の海鼠壁と雲形の持ち送り
近づいて見るべきは腰壁である。平瓦を張り、目地を漆喰で盛り上げた海鼠壁だが、目地の割り付けが七宝文になっている。円を四つ重ねた連続模様で、ふつうの菱形や四半(斜め格子)とは手間が違う。曲線を白い漆喰でまっすぐ太さを保ったまま盛るには、鏝の運びに相当の熟練が要る。
窓は平側に開き、鉄格子が嵌め込まれている。道具の盗難を防ぐためのもので、白い壁面のなかで黒い縦線が数本走る形になる。
その窓の上に付く小さな庇を、雲形の持送りが下から受けている。渦を巻くような輪郭を漆喰で作り出した部材で、二つとして同じ形にならない。小さな蔵の、しかも雨よけを支えるだけの部分にこれだけの造作を入れているところに、施主と職人の考えが表れている。
篠永酒造土蔵は主屋の裏手にあるため、道路からは屋根と壁の一部しか見えない位置にある。何が見えるかは立つ場所によって変わるので、通りを歩きながら角度を探すことになる。
篠永酒造土蔵の見学方法とアクセス
篠永酒造土蔵は篠永酒造株式会社の敷地内にあり、公開されていない。拝観時間や拝観料の制度はなく、内部に入ることもできない。敷地の奥に建つため、主屋や門と比べて道路から見える範囲はさらに限られる。
撮影は公道上からであれば差し支えない。ただし敷地内に入る、塀越しにカメラを差し出すといった行為は避けてほしい。私有地であり、会社が業務に使っている場所である。
行き方はJR予讃線の伊予三島駅が起点となる。駅の南西、直線で約2キロメートルの位置にあたり、徒歩なら30分前後、タクシーで10分ほどをみておきたい。訪問者用の駐車場はないので、車の場合は市街地に停めてから歩くことになる。近隣は生活道路が細く、路上に車を置くと通行の妨げになる。
よくある質問
- 篠永酒造土蔵は見学できますか。内部に入れますか。
- 公開されていません。稼働中の会社の敷地内にあり、内部に入ることはできません。拝観時間や拝観料の設定もありません。
- 篠永酒造土蔵はいつ建てられ、何に使われていた建物ですか。
- 昭和12年(1937年)の建築で、酒造りの道具をしまう道具蔵として建てられました。建築面積は17平方メートルの小規模な蔵です。
- 篠永酒造土蔵が登録有形文化財になった理由は何ですか。
- 「再現することが容易でないもの」という登録基準によります。七宝文の海鼠壁や雲形の持ち送りに見られる左官技術の水準が評価されました。
- 篠永酒造土蔵は道路から見えますか。
- 主屋の背面に建つため、道路から見えるのは屋根と壁の一部に限られます。見える範囲は立つ位置によって変わります。
- 篠永酒造土蔵への行き方を教えてください。
- JR予讃線の伊予三島駅から南西へ直線距離で約2キロメートルです。徒歩30分前後、タクシーで10分ほど。訪問者用の駐車場はありません。
基本データ
| 名称 | 篠永酒造土蔵(しのながしゅぞうどぞう) |
|---|---|
| 所在地 | 愛媛県四国中央市具定町正之森250-1 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) |
| 指定年 | 平成15年(2003年)12月1日登録 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 建築面積17平方メートル |
| 所有者 | 篠永酒造株式会社 |
| 公開状況 | 非公開(外観の一部のみ前面道路から見学可) |
参考文献
- 国指定文化財等データベース「篠永酒造土蔵」(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00003717
- 国指定文化財等データベース「篠永酒造主屋」(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00003715
- 登録有形文化財(建造物)(文化庁)
- https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/yukei_kenzobutsu/toroku_yukei.html
- 四国中央市内の指定文化財・登録文化財(四国中央市)
- https://www.city.shikokuchuo.ehime.jp/soshiki/34/1988.html
- 伊予三島駅(JR四国)
- https://www.jr-shikoku.co.jp/01_trainbus/kakueki/iyomishima/
最終更新日: 2026.09.05