旧街道に向けられた造り酒屋の顔

梅錦山川主屋は、愛媛県四国中央市金田町金川にある明治時代中期建築の造り酒屋の店舗兼住宅で、平成13年(2001年)に登録有形文化財となった。

建物は、川之江から山を越えて土佐(現在の高知県)へ抜ける旧道に西面して立つ。道からわずかに引いた位置に据えられているため、長い正面を一度に見渡せる。建築面積は231平方メートル、入母屋造の屋根を本瓦葺とし、低い中2階のつし二階風に構える。重く、長く、急がない構えで、これが梅錦山川という酒蔵の第一印象をつくっている。

営むのは梅錦山川株式会社。創業は明治5年(1872年)で、初代の山川由良太が金生川の水車で営んでいた製油業に精米を加え、やがて酒造りに移ったのが始まりだという。銘柄の「梅錦」は、金川一帯がかつて梅林で知られていたことに由来し、大正5年(1916年)に商標登録されている。

商いと暮らしを分けた間取りが評価された

登録年月日は平成13年(2001年)4月24日、告示は同年5月15日、登録番号は38-0013。登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」で、文化庁の解説は、この主屋が南方の仕込蔵とともに地区のランドマークになっていることを明記している。

評価の核にあるのは間取りである。文化庁の記録によれば、ほぼ南半をシモテ、北半をカミテとする。この種の商家においてシモテは客を迎えて商いをする下手の空間、カミテは家族の生活と格式ある客の応対にあてる上手の空間を指す。ひとつの屋根、ひとつの正面のもとに、性格のまったく異なるふたつの領域が同居している。

店舗兼住宅というこの形式は、西日本の地方の酒屋や商家では標準的なものだった。ただし、この規模のまま、しかも中で商売が続いている例は多くない。梅錦山川主屋の価値は、個々の意匠の妙よりも、19世紀の商家の平面がいまも設計どおりに機能していることのほうにある。

年代について1点、記録の食い違いを記しておく。文化庁は建築年代を明治中期(1868年から1911年)とするが、梅錦山川株式会社の公式サイトは明治10年(1877年)頃としている。本記事は一次資料である文化庁の記録に従い、差異があることを併記する。

旧道から見るときの勘どころ

まず旧道に立って、正面の長さを測るように眺めたい。梅錦山川主屋は道から引いて建つので、狭い地方道でありながら全体を一望できる。これは同規模の建物では珍しい条件である。本瓦葺の厚い瓦が、軒に濃い影の線を落とす。

次に軒下の杉玉を探す。杉玉は新酒ができたことを知らせるために酒蔵の軒先に吊るす杉の葉の球で、はじめは青々としており、季節と酒の熟成にあわせて茶色く枯れていく。梅錦山川では毎年これを掛ける。まだ青ければ、搾りを終えたばかりということになる。

つし二階の見え方にも注目したい。総2階ではなく屋根裏を利用した低い階で、もとは物置と通風のためのものである。この階があることで、建物は高くならずに横へ伸びる。道から読むと、長く低い壁の帯、その上に背の低い層、そして大量の屋根、という積み重ねになる。

同じ場所から南を向けば、土蔵造の仕込蔵が視界に入る。2棟は同じ日に登録されており、もともと一対として読まれるべき建物である。

梅錦山川主屋の見学方法

酒蔵見学は事前予約制で、料金は無料。受付時間は平日の午前8時から午後5時まで。土曜、日曜、祝日と、12月31日から1月3日までの年末年始は休みとなる。予約は電話(0896-58-1211)で受け付けている。

見学はまず約20分の映像で酒造りの工程を追い、そのあと案内付きで建物や作業場を見て回り、最後に梅錦の製品を試飲する流れになっている。3月中旬から10月末までの仕込みを行わない時期は、建物内の見学のみとなる。実際に酒が仕込まれている場面を見たいなら、11月から3月中旬までに訪れるとよい。

梅錦山川主屋は営業中の私有建築なので、内部の撮影は当日、担当者に確認してほしい。旧道に面した外観については、公道からの撮影に制限はない。

場所はJR予讃線川之江駅から約3.3キロメートル、車やタクシーで10分ほどで、便利な路線バスはない。駐車場は無料で、普通車約10台と大型車2台分が用意されている。なお見学の最後に試飲が組み込まれているため、運転する人はその点を織り込んで計画したい。

Q&A

Q梅錦山川主屋は見学できますか。料金はかかりますか。
A見学できます。酒蔵見学は事前予約制で無料、受付は平日の午前8時から午後5時までです。予約は電話(0896-58-1211)で受け付けています。土曜、日曜、祝日および12月31日から1月3日は休みです。
Q梅錦山川主屋はいつ建てられたのですか。
A文化庁は明治中期、すなわち1868年から1911年の間としています。梅錦山川株式会社の公式サイトは明治10年(1877年)頃とより狭く記していますが、一次資料は文化庁の記録です。
Q梅錦山川主屋の間取りにはどんな特徴がありますか。
A店舗と住宅を兼ねた造りで、南半を商いのためのシモテ、北半を家族の生活と客の応対にあてるカミテとします。屋根は入母屋造の本瓦葺で、低いつし二階風の構えをとります。
Q梅錦山川主屋を訪ねるのに適した季節はありますか。
A11月から3月中旬です。この時期は仕込みが行われており、見学に作業場が含まれます。それ以外の時期は建物内の見学のみとなります。軒下の杉玉も、仕込み期の初めは青々としています。
Q梅錦山川主屋へのアクセスを教えてください。
AJR川之江駅から約3.3キロメートル、車またはタクシーで10分ほどです。無料駐車場があり、普通車約10台、大型車2台分を停められます。見学の最後に試飲がある点にご留意ください。

基本情報

名称梅錦山川主屋(うめにしきやまかわしゅおく)
所在地愛媛県四国中央市金田町金川14
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年平成13年(2001年)4月24日登録、同年5月15日告示
員数1棟
寸法木造2階建、瓦葺、建築面積231平方メートル
所有者梅錦山川株式会社
公開状況酒蔵見学は事前予約制で無料、平日の午前8時から午後5時。土日祝および12月31日から1月3日は休み

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース「梅錦山川主屋」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00002182
文化遺産オンライン(文化庁)「梅錦山川主屋」
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/167492
梅錦山川株式会社「梅錦ヒストリー」
https://www.umenishiki.com/history
いよ観ネット(愛媛県公式観光サイト)「梅錦山川」
https://www.iyokannet.jp/spot/2631

最終更新日: 2026.09.04