遍路道に面して建つ明治の主屋

篠永酒造主屋は、愛媛県四国中央市具定町正之森にある明治19年頃(1886年頃)建築の木造建物で、平成15年(2003年)12月1日に登録有形文化財に登録された。

建物が正面を向けているのは、市の北部を東西に横切る四国八十八ヶ所の遍路道である。屋根は入母屋造桟瓦葺で、軒の側に出入口を設ける平入。建築面積は186平方メートルを測る。文化庁の登録原簿は構造を木造平屋建と記録し、解説文では天井の低いつし2階を持つ形としている。大正6年(1917年)には増築の手が加わった。

所有者は篠永酒造株式会社。同じ敷地には南側に接続する門と、背面に建つ土蔵があり、いずれも主屋と同じ日に登録されている。

篠永酒造主屋が登録された理由

登録番号は38-0044、第39回登録にあたる。適用された登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」で、建物そのものの珍しさより、街道の景観をつくる一員としての役割が評価されたことになる。官報告示は平成15年(2003年)12月25日。

文化庁データベースは篠永酒造主屋を産業関係(第3次産業)の建築物に分類している。酒造業の生産の場でありながら、住まいとしての性格も併せ持つ建物で、遍路が歩く道に面してこの規模の商家造りが残っている点が、登録の判断材料になった。

登録有形文化財は、国が重要なものを厳選して規制をかける指定制度とは別に、平成8年(1996年)に始まった届出中心のゆるやかな保護制度である。所有者が使い続けながら守っていくことを前提としており、篠永酒造主屋も現役の会社の建物として今日に至っている。制度の詳細は登録有形文化財を参照されたい。

大棟の飾瓦と妻の狐格子

道から見上げてまず目に入るのが、大棟の胴板に張り付けられた飾瓦である。波間を泳ぐ魚をかたどっており、屋根の一番高いところで白壁を背にはっきりと形が読み取れる。火伏せの願いを込めた意匠と考えられるが、篠永酒造主屋のものは魚の胴のうねりまで作り込まれていて、既製品を載せたものではない。

妻側の三角形の壁面には狐格子が入る。細い部材を格子状に組んだ換気のための造作で、白い壁を背景に縦横の線が細かく走る。

正面の壁は腰の部分を竪板張とし、その上を柱の見える真壁とする。身舎は出桁造で、軒桁を柱筋より前へ出して深い軒を支えている。この張り出しが、通りに沿って歩く人の頭上に影をつくる。

足を止めて見比べたいのは、主屋の腰竪板張と、南隣の門に取り付く袖壁の高さである。両者がぴたりと揃えられていて、敷地の正面全体が一続きの構えとして設計されていることが分かる。

篠永酒造主屋の見学方法とアクセス

篠永酒造主屋は篠永酒造株式会社が所有し、実際に使用している建物である。内部は公開されておらず、拝観時間や拝観料の設定もない。見学できるのは前面道路から見た外観に限られる。

撮影は道路上からであれば妨げられないが、敷地内に立ち入っての撮影はできない。門の内側や庭にカメラを向ける行為も控えたい。呼び鈴を鳴らして見学を求めることも避けてほしい。

最寄り駅はJR予讃線の伊予三島駅で、篠永酒造主屋までは南西へ直線距離で約2キロメートル、歩けば30分ほどかかる。タクシーなら10分前後。駅から南へ向かうと土地が緩やかに上がり、山側の集落に入ったあたりが具定町正之森である。駐車場は用意されていないため、車で近くまで来る場合は路上駐車をせず、市街地側で停める場所を確保してから歩いて向かうのが確実である。

よくある質問

Q篠永酒造主屋は内部を見学できますか。拝観料はいくらですか。
A内部は公開されていません。稼働中の会社が所有し使用している建物のため、拝観時間や拝観料の設定もありません。見学は前面道路からの外観に限られます。
Q篠永酒造主屋はいつ建てられ、いつ登録有形文化財になりましたか。
A明治19年頃(1886年頃)の建築で、大正6年(1917年)に増築されています。登録は平成15年(2003年)12月1日、官報告示は同年12月25日です。
Q篠永酒造主屋の写真を撮ってもよいですか。
A前面道路からの撮影は制限されていません。敷地内へ立ち入っての撮影や、門の内側にカメラを向ける行為は控えてください。
Q篠永酒造主屋への最寄り駅とアクセス方法を教えてください。
AJR予讃線の伊予三島駅が最寄りです。駅から南西へ直線距離で約2キロメートル、徒歩30分ほど、タクシーで10分前後です。専用駐車場はありません。
Q篠永酒造主屋で特に見ておくべき部分はどこですか。
A大棟の胴板に張られた、波間を泳ぐ魚をかたどった飾瓦です。あわせて妻の狐格子、腰竪板張の外壁、深い軒を支える出桁造もご覧ください。

基本データ

名称篠永酒造主屋(しのながしゅぞうしゅおく)
所在地愛媛県四国中央市具定町正之森250-1
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年平成15年(2003年)12月1日登録
員数1棟
寸法建築面積186平方メートル
所有者篠永酒造株式会社
公開状況非公開(外観のみ前面道路から見学可)

参考文献

国指定文化財等データベース「篠永酒造主屋」(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00003715
文化遺産オンライン「篠永酒造主屋」
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/150325
登録有形文化財(建造物)(文化庁)
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/yukei_kenzobutsu/toroku_yukei.html
四国中央市内の指定文化財・登録文化財(四国中央市)
https://www.city.shikokuchuo.ehime.jp/soshiki/34/1988.html
伊予三島駅(JR四国)
https://www.jr-shikoku.co.jp/01_trainbus/kakueki/iyomishima/

最終更新日: 2026.09.05