旧北陸線樫曲トンネルとは

旧北陸線樫曲トンネルは、福井県敦賀市樫曲にある明治26年(1893年)竣工の旧鉄道トンネルで、平成28年(2016年)2月25日に登録有形文化財となった。読みは「かしまがり」。敦賀駅の北東約3.7キロに位置し、延長87メートル、幅員3.9メートルのまっすぐなトンネルである。

敦賀から今庄へ向かう旧線で最初に現れるトンネルで、すぐ先に続いた獺河内トンネルはすでに失われている。峠区間の葉原トンネルまでは北へ約6キロ離れているため、旧北陸線樫曲トンネルは13基のなかで一つだけ離れた位置にある。竣工年は、文化庁のデータベースに載る13基のなかで最も早い。所有者は福井県である。

旧北陸線樫曲トンネルが登録された理由

旧北陸線樫曲トンネルは、旧北陸線のほかの12基とともに「国土の歴史的景観に寄与しているもの」として登録された。敦賀の市街を離れて山あいへ入る旧線の入口を、今も形として示している。

このトンネルを請け負ったのは太田六郎である。文化庁の解説は、太田を工学士として初めて請負会社を設立した人物と紹介し、敦賀市の解説は工部大学校土木科の2期生だったと記す。大学で近代土木を学んだ技術者が自ら会社を興して鉄道工事を請け負った、その早い例が旧北陸線樫曲トンネルに残っていることになる。

意匠の面でも特別である。石積みを多く使う旧北陸線のトンネルのなかで、内壁と坑門をすべて煉瓦で積んだのは、敦賀側の樫曲トンネルと失われた獺河内トンネル、今庄側の山中・伊良谷トンネルに限られる。

旧北陸線樫曲トンネルの見どころ

まず坑門の上部を見てほしい。ほかのトンネルなら切石で作る笠石や帯石まで、旧北陸線樫曲トンネルでは煉瓦で築いている。水平の帯も煉瓦の目地で表現されていて、石を使わずに坑門の格を整えようとした工夫が分かる。

次に、坑口のアーチの縁に注目したい。文化庁の解説によると、覆工は煉瓦五枚厚で築かれている。アーチの断面に煉瓦が何重に巻かれているかを数えると、87メートルの短いトンネルにも厚い覆工を与えた当時の基準が実感できる。

内部は側壁がイギリス積み、アーチが長手積みで、段ごとに煉瓦の長い面と短い面が入れ替わる壁から、長い面だけが並ぶアーチへと表情が変わる。まっすぐなトンネルなので、入口から出口の明かりまでを一度に見通せる。

旧北陸線樫曲トンネルの見学方法

旧北陸線樫曲トンネルは国道476号のすぐ脇に口を開けており、現在は車の通らない歩行者用の通路として使われている。拝観料や受付はなく、中を歩いて通り抜けながら煉瓦の積み方を間近に見られる。

峠区間のトンネル群からは6キロほど離れているので、ほかのトンネルとは別に立ち寄ることになる。国道に面しているので、坑門を正面から撮影するときは車道に出ず、安全な位置を選びたい。夕方以降は坑内が暗くなるので、明るい時間に訪ねるのがよい。

Q&A

Q旧北陸線樫曲トンネルの読み方と場所を教えてください。
A「きゅうほくりくせんかしまがりとんねる」と読みます。福井県敦賀市樫曲にあり、敦賀駅の北東約3.7キロ、国道476号のすぐ脇に位置します。
Q旧北陸線樫曲トンネルはいつ造られ、いつ登録有形文化財になりましたか?
A明治26年(1893年)に竣工し、平成28年(2016年)2月25日に旧北陸線のほかの12基とともに登録有形文化財に登録されました。13基のなかで最も早い竣工です。
Q旧北陸線樫曲トンネルを施工したのは誰ですか?
A工学士として初めて請負会社を設立した太田六郎です。敦賀市の解説によると、太田は工部大学校土木科の2期生でした。
Q旧北陸線樫曲トンネルの煉瓦にはどんな特徴がありますか?
A内壁も坑門もすべて煉瓦で、坑門の笠石や帯石まで煉瓦で築いています。覆工は五枚厚で、側壁はイギリス積み、アーチは長手積みです。
Q旧北陸線樫曲トンネルの中は歩けますか?料金はかかりますか?
A現在は歩行者用の通路として使われており、歩いて通り抜けられます。料金や受付はありません。国道沿いなので、撮影の際は車の往来に注意してください。

基本情報

名称旧北陸線樫曲トンネル
所在地福井県敦賀市樫曲
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年2016年(平成28年)登録
員数1基
寸法延長87m、幅員3.9m
所有者福井県
公開状況歩行者用の通路として通行可(料金・受付なし)

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース「旧北陸線樫曲トンネル」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00010951
文化遺産オンライン「旧北陸線樫曲トンネル」
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/273242
日本遺産ポータルサイト 構成文化財「樫曲トンネル」
https://japan-heritage.bunka.go.jp/ja/culturalproperties/result/4961/
国土交通省 明治期のインフラ「樫曲トンネル」
https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/region/infratourism/assets/pdf/meiji/kinki065.pdf
文化庁 国指定文化財等データベース「旧北陸線葉原トンネル」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00010952
敦賀市「国・県指定文化財一覧」
https://www.city.tsuruga.lg.jp/page/4435.html

最終更新日: 2026.10.07