旗本とは

旗本は、江戸幕府に直属した将軍の家臣のうち、将軍に謁見できる御目見得以上の身分の武士である。大名より石高が小さく、江戸に屋敷を持ちながら知行地を与えられた。

文化財の記録には、建物の由来を説明する語として現れる。愛知県の瀧川家住宅主屋は文化11年の建築で明治2年に移築されたもので、「旗本設楽氏の陣屋を移築したもの。裏山中腹の、東西に長い敷地のやや東寄りに南面して建つ。平屋、桟瓦葺(もと茅葺)で、表側2間続きの座敷を中心に、裏に納戸をとり、東側に大きな地炉のある土間、台所等を配する。数少ない旗本陣屋の姿を伝えていて貴重」と解説されている。

同じ瀧川家住宅の長屋門は宝暦13年の建築で、「戸口廻り、正面の武者窓等の構えはよく残り、旗本代官屋敷としての家格を伝える」と解説されている。旗本の知行地を治める代官の屋敷として、門の構えが家格の根拠に挙げられている。

旗本は江戸に住むのが原則であったため、知行地には陣屋を置き、代官に統治を委ねた。地方に残る旗本関係の建物は、多くがこの代官の屋敷か陣屋にあたる。

記録の読み方

建物の記録に旗本の名が出るときは、その建物が旗本自身の住まいではなく、知行地の統治施設であることが多い。瀧川家住宅主屋も旗本の陣屋を移築したものであって、旗本が住んだ江戸屋敷ではない。

旗本陣屋は数が少なく、記録で「数少ない」と評価される。大名の城や陣屋と比べて規模が小さく、民家に転用されて残った例が多いためである。

記事に書くときは、旗本、代官、陣屋の三語の関係を押さえたい。旗本が領主、代官がその家臣として現地を治める役人、陣屋がその役所と住まいである。

参考文献

文化庁 文化財の紹介 登録有形文化財(建造物)
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/yukei_kenzobutsu/toroku_yukei.html
国指定文化財等データベース(文化庁)瀧川家住宅主屋/旗本設楽氏の陣屋を移築、座敷・納戸・地炉のある土間を配す
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00004579
国指定文化財等データベース(文化庁)瀧川家住宅長屋門/西寄りに鏡柱を立て脇戸付の戸口を開き、正面の武者窓等の構えが旗本代官屋敷の家格を伝える
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00004580

最終更新: 2026.09.02