記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財とは
記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財は、重要無形民俗文化財にも登録無形民俗文化財にもなっていない無形の民俗文化財のうち、特に記録を残す必要があるとして文化庁長官が選択したものである。根拠は文化財保護法第91条で、同条は無形文化財の選択を定めた第77条を準用している。
対象となる無形の民俗文化財は、同法第2条第1項第3号が定める民俗文化財のうち形をもたないもの、つまり衣食住、生業、信仰、年中行事等に関する風俗慣習、民俗芸能、民俗技術である。田植えの囃子、盆の迎え火と送り火、からくり人形の芝居のように、地域で毎年くり返されることで伝わってきた行為そのものが選択の対象になる。
文化庁の集計では、令和7年4月1日現在で661件が選択されている。同じ時点の重要無形民俗文化財は337件で、選択の件数はその2倍に近い。
名称が長いため、自治体の解説や案内板では「国選択無形民俗文化財」「記録選択無形民俗文化財」と略して書かれることが多い。いずれも同じ制度を指す。
選択と指定の違い
選択は指定とは主体も効果も異なる。重要無形民俗文化財は文部科学大臣が指定し、その旨を官報に告示する(第78条)。これに対して選択は文化庁長官が行う措置で、目的は記録の作成にある。
選択されると、文化庁長官は自ら記録を作成し、保存し、公開することができる。国は、地方公共団体など適当な者が行う記録の作成や公開に要する経費の一部を補助できる。文化庁は、選択されたもののうち変容や衰退のおそれが大きい行事について、映像や報告書による記録を計画的に進めている。
反対に、選択には現状変更の届出や公開の制限といった規制が一切伴わない。保持者を認定する仕組みもない。選択は行事の担い手に義務を課すものではなく、失われる前に記録を確保しておくための制度である。
選択されていた民俗文化財が、のちに重要無形民俗文化財に指定されることもある。この場合、経歴の上では選択の年と指定の年の二つがあるため、年を書くときはどちらの年かを明記する。記事では「選択された」と書き、「指定された」とは書かない。基本情報の区分欄でも、重要無形民俗文化財と同じ「指定」の語でくくらないようにする。
参考文献
- e-Gov法令検索 文化財保護法(昭和二十五年法律第二百十四号)
- https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0100000214
- 文化庁 文化財の紹介 民俗文化財
- https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/minzoku/
- 文化庁 文化財の紹介 概要(文化財の種類,指定・選定・登録)
- https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/gaiyo/
最終更新: 2026.10.04