日本にほかに例のない屋根

厳島神社摂社大元神社本殿は、広島県廿日市市宮島町の大元公園にある三間社流造・板葺の本殿で、大永3年(1523年)の造営、昭和24年(1949年)2月18日に重要文化財に指定された。

歩いて訪ねる理由は屋根にある。広島県教育委員会はこれを異例の長板葺と呼び、中世の絵巻物には見られるが他に類例がないとしたうえで、「六枚重ね三段葺」の建物としては日本唯一だと記す。嚴島神社は土地の呼び名を使う。大元葺である。

それが実際に何を指すかは、軒下から見上げると分かる。宮島の他の建物がほぼ例外なく用いる薄い割板や檜皮の代わりに、長い板を六枚重ねて三段に葺く。結果として屋根面は厚く、わずかに不揃いで、檜皮葺よりはるかに濃い影を落とす。石段の下に立てば、軒先で層の数を数えることができる。

屋根の下の形式は素直である。流造の三間社で、前の流れを参道の上へ長く伸ばす。内部には玉殿が三殿並び、厳島神社摂社大元神社本殿の前には拝殿が建つ。

建物より古い中身

昭和24年(1949年)2月18日の指定は1棟。宮殿3基と銘札2枚がとして記録されており、宮殿はいずれも一間社流見世棚造・柿葺の小さな社である。

そのうちの一つに嘉吉3年(1443年)の墨書がある。周囲の社殿より80年古い。広島県教育委員会はこれを端的に記したうえで、社殿の彫刻も以前の建物からの再利用と考えられると付け加えている。つまり大永3年という年代が確定させるのは軸部であって中身ではなく、先行する社の部材がそこへ持ち込まれている。

県も嚴島神社も、大元神社の鎮座が海辺の本社より古いとする伝えを記録している。嚴島神社はさらに、古くから地主の神、あるいは本社の旧址とも伝わるとする。いずれも文献で裏づけられた歴史ではなく伝承であり、資料もそう扱っている。ただ、人混みから徒歩15分の小さな社が指定を受けている理由は、そこにある。

大元公園と、1月の神事

場所そのものが効いている。大元公園は大願寺の南、海沿いの松と紅葉の林で、ほとんどどの時間帯も静かだ。木のあいだで鹿が草を食んでいる。厳島神社摂社大元神社本殿は水際からやや引いた低い壇の上に建ち、たいてい前には誰もいない。

御祭神は大山祇神、保食神、国常立尊。嚴島神社は、大元神社と長浜神社がちょうど向かい合って御本社の両翼を成すこと、旧暦6月17日の管絃祭には両社とも沖合の御座船上で祭事が行われ管絃が奏されることを記している。

例祭日は1月20日。百手祭と呼ばれ、鬼射神事を中心とする。神饌には餝飯という熟饌が供えられる。生の供物ではなく調理された供物である。この社の前に人が集まる数少ない機会でもある。

厳島神社摂社大元神社本殿の見学

本殿は公園のなかの屋外にあり、時間を問わず拝観券なしで近づける。参道からの撮影に制限はない。内部は非公開で、玉殿は外からは見えない。

神社の出口から西へ、大願寺の前を通り、水族館へ折れる道を過ぎて海沿いに進み、公園への道に入る。ゆっくり歩いて15分ほど、ほぼ全区間が平坦である。厳島神社摂社大元神社本殿は有料区域の外にあるため、社殿の開門前や閉門後でも訪ねられる。

島へはJR宮島口駅または広電宮島口からフェリーで約10分。廿日市市の宮島訪問税が1人100円、乗船料と一緒に徴収される。1年分500円を選ぶこともできる。社殿にも上がるなら昇殿料は大人300円である。

Q&A

Q厳島神社摂社大元神社本殿の屋根は何が珍しいのですか。
A長い板を六枚重ねて三段に葺く長板葺です。広島県教育委員会は、この葺き方の建物は日本で唯一であり、ほかには中世の絵巻物に見られるだけだとしています。
Q厳島神社摂社大元神社本殿へはどう行きますか。
A神社の出口から西へ、大願寺の前を通って海沿いに大元公園へ入ります。平坦な道を15分ほど、宮島桟橋からは25分ほどです。
Q厳島神社摂社大元神社本殿の拝観に料金はかかりますか。
Aかかりません。有料区域の外の公園内にあり、時間を問わず近づけます。内部は非公開です。
Q厳島神社摂社大元神社本殿の御祭神はどなたですか。
A嚴島神社は大山祇神、保食神、国常立尊を挙げています。古くから地主の神、あるいは本社の旧址とも伝わる社です。
Q厳島神社摂社大元神社本殿の例祭はいつですか。
A1月20日の百手祭で、鬼射神事を中心とし、餝飯という熟饌が供えられます。旧暦6月の管絃祭でも、社前の沖合で祭事が行われます。

基本情報

名称厳島神社摂社大元神社本殿(いつくしまじんじゃせっしゃおおもとじんじゃほんでん)
所在地広島県廿日市市宮島町
指定区分重要文化財/世界遺産「厳島神社」の区域内
指定年1949年(昭和24年)2月18日
員数1棟/附 宮殿3基、銘札2枚
寸法三間社流造、板葺(六枚重ね三段葺)、1523年。宮殿は各一間社流見世棚造、柿葺
所有者厳島神社
公開状況大元公園内で外観を常時無料見学可。内部は非公開。宮島訪問税100円

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース「厳島神社摂社大元神社本殿」
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/102/3182
文化遺産オンライン「厳島神社摂社大元神社本殿」
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/202109
広島県教育委員会「国・県指定等文化財一覧」(PDF)
https://www.pref.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/640309.pdf
嚴島神社「境外摂末社」
https://www.itsukushimajinja.jp/jp/setumatusya.html
嚴島神社「アクセス」
https://www.itsukushimajinja.jp/jp/access.html
廿日市市「宮島訪問税の概要」
https://www.city.hatsukaichi.hiroshima.jp/soshiki/110/59551.html

最終更新日: 2026.09.08