明治8年再建、自らの重さで立つ鳥居

厳島神社大鳥居は、広島県廿日市市宮島町の厳島神社社殿前面の海中に立つ木造両部鳥居で、明治8年(1875年)の再建、明治32年(1899年)4月5日に重要文化財に指定された。

何代目にあたるかは、近年になって数え直された。厳島神社は長く、平清盛の援助で建てられた鳥居を初代として現在のものを8代目としてきたが、鎌倉期に社殿が焼失した後に建てられた鳥居を文献の見直しによって加え、9代目とする見解を令和5年(2023年)の修理報告で示している。

形式を分解して見ると理解が早い。東西に楠の自然木の主柱を置き、その前後に杉の袖柱を2本ずつ、計4本配する。主柱と袖柱は上下2段の袖貫でつながれ、主柱の上部は大貫が貫いて左右を結ぶ。その上に島木と笠木が載る。厳島神社大鳥居は規模が大きいため、島木と笠木は無垢材ではなく箱状に組まれており、内部には4トン近い砂利が納められている。

広島県教育委員会は高さを16.8メートルとし、本社から108メートル離れた海中に立つこと、木造の鳥居としては高さ・大きさとも日本一であることを記している。現在の両部の形式になったのは、天文16年(1547年)に大内義隆らが中心となって行った再建のときと言われる。

海底に柱を埋め込んではいない。柱の下には松の丸太杭を密に打ち込んだ基礎があり、厳島神社はこれを千本杭と呼ぶ。鳥居はその上に自らの重さだけで載っている。

材の出どころは遠い。東の主柱は日向国児湯郡岡富村、現在の宮崎県で切り出された。西の主柱は讃岐国丸亀の木で、宮島産の楠を中間で継ぎ足し、鉄帯金物で上下2箇所を固定している。袖柱4本と袖貫、島木、笠木は島内の材である。

境内の指定建造物で唯一の近代

文化庁の国指定文化財等データベースは、厳島神社大鳥居の種別を「近代/宗教」、時代を明治、年代を明治8年(1875年)としている。厳島神社の指定建造物のなかで、これだけが近代の建築である。仁治2年(1241年)の造替に遡る社殿群と同じ台帳に、1870年代に建て替えられた鳥居が並ぶ。材は新しくても形式が古いからこそ、その位置を占めている。

明治32年(1899年)4月5日の指定は1基。棟札2枚が後に附として追加指定されている。平成8年(1996年)に世界遺産「厳島神社」として登録された区域にも含まれる。

重要文化財として守られているのは、部材の集合というより工法そのものである。地中に固定せず、屋根に重しを抱え、数百年かけて柱ごとに更新されていく前提の構築物は、建物とは別種のものだ。9度の再建を通して同じ工法が受け継がれてきたことに、この指定の意味がある。

令和の修理が開けてみせたもの

令和元年(2019年)6月から令和4年(2022年)12月まで、厳島神社大鳥居は足場に覆われ、工事のために仮設桟橋まで架けられた。厳島神社が公表した報告は、かなり踏み込んだ内容になっている。

檜皮葺の大屋根は前回の葺替から25年が過ぎ、表面の摩耗が著しかった。塗装は15年、扁額の修理からは11年。ここまでは想定の範囲である。

想定外だったのは柱の内側だった。白蟻が根元から空洞の楠を伝って上へ進み、明治42年(1909年)の修理で腐朽部に詰め込まれたコンクリートも進行を止められていなかった。虫はその上を通り過ぎ、箱状の島木の内部にまで達していた。水際では2種の海虫がはるかに長い時間をかけて材を食っている。一方は径5ミリから8ミリの穴を、他方は約1ミリの小孔を開ける。厳島神社は後者の影響が出始めた時期を江戸時代後半と見ている。

木を切る前に、レジストグラフ調査、簡易X線調査、レーダー探査、内視鏡調査と構造診断が行われた。腐朽部は空洞の形に合わせて刻んだ楠のブロックで埋め、鼓状の千切りで緊結している。大貫が主柱を貫く箇所は断面が細くなって強度が落ちるため、炭素繊維を巻いたうえに朱色に着色した樹脂を塗り、乾く前に櫛を引いて木目に見えるよう仕上げた。主柱には錆びにくいスーパーステンレスの横バンドを3箇所巻いて締め、島木の内部には鋼材の枠を組んで柱頭の4箇所に羽子板ボルトで留め、元の砂利を元の位置に戻している。

旧塗装の鉛丹は海に飛散しないようブラスト工法で掻き落とし、その後に朱塗を3回以上重ねた。屋根の箱の中に入る出入口は3箇所から4箇所に増やされた。次の点検が楽になる。事業は文化庁、広島県、廿日市市の補助と指導を受けて行われている。

厳島神社大鳥居の見学

鳥居は屋外にあり、見るだけなら料金はかからない。御笠浜や西松原の護岸はいつでも歩けるし、撮影の制限もない。社殿に上がる場合は別で、昇殿料は大人300円、高校生200円、小中学生100円。開門は午前6時30分、閉門は時期により午後5時から午後6時30分までのあいだで変わる。

潮位によって、見えるものがまるく入れ替わる。干潮なら砂浜が現れて根元まで歩いて行ける。鉄帯金物や楠の継ぎ目まで目の前で確かめられる距離だ。満潮なら海面に浮いて見える。どちらが良いという話ではなく、別の物体が二つあると考えたほうがいい。潮時は毎日およそ50分ずつずれるので、渡る時間を決める前に確認しておきたい。

行き方は船になる。JR宮島口駅または広電宮島口からフェリーで約10分、宮島桟橋から神社入口までは徒歩約10分。令和5年(2023年)10月1日から廿日市市の宮島訪問税がかかり、1回100円が乗船料に上乗せされる。何度も訪れるなら1年分500円を選ぶこともできる。神社に駐車場はない。

Q&A

Q厳島神社大鳥居はまだ工事中ですか。足場は取れていますか。
A令和元年(2019年)6月に始まった修理は令和4年(2022年)12月に竣工し、足場も防護ネットも撤去されています。境内では別の工事が続いているので、訪問前に厳島神社の工事状況のページを見ておくと確実です。
Q厳島神社大鳥居の根元まで歩いて行けますか。
A干潮で砂浜が現れていれば歩いて行けます。足元は濡れて凹凸があり、潮は着実に戻ってくるので、洗える靴で行き、潮時を気にかけてください。
Q厳島神社大鳥居を見るのに拝観料は必要ですか。
A不要です。海岸から無料で見られます。大人300円の昇殿料がかかるのは、社殿と廻廊に入る場合だけです。
Q厳島神社大鳥居はなぜ倒れないのですか。
A自らの重さで押さえつけています。柱は埋まっておらず、密に打ち込んだ松杭の上に載っているだけです。箱状の島木と笠木には4トン近い砂利が重しとして入っており、4本の袖柱が2本の主柱を風と波から支えます。
Q厳島神社大鳥居の撮影に向く時間帯はいつですか。
A社殿側から見て夕方は逆光になり、輪郭を写すのに向きます。東側からの朝の光なら、朱の色と櫛引で木目をつけた樹脂の補修跡まで見えます。日没後は午後11時ごろまでライトアップされます。
広島県教育委員会「国・県指定等文化財一覧」(PDF)
https://www.pref.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/640309.pdf

基本情報

名称厳島神社大鳥居(いつくしまじんじゃおおとりい)
所在地広島県廿日市市宮島町
指定区分重要文化財/世界遺産「厳島神社」の区域内
指定年1899年(明治32年)4月5日
員数1基/附 棟札2枚
寸法木造両部鳥居、檜皮葺、丹塗、高さ16.8メートル、1875年。楠の主柱2本と杉の袖柱4本、箱状の島木・笠木の内部に4トン近い砂利
所有者厳島神社
公開状況屋外にあり常時無料で見学可。社殿は午前6時30分開門、昇殿料は大人300円、高校生200円、小中学生100円。宮島訪問税が100円

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース「厳島神社大鳥居」
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/102/3175
文化遺産オンライン「厳島神社大鳥居」
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/176412
嚴島神社「重要文化財嚴島神社大鳥居の修理について」(PDF)
https://www.itsukushimajinja.jp/jp/images/040_page/construction/pamphlet_hp.pdf
嚴島神社「大鳥居の破損・修理状況」(PDF)
https://www.itsukushimajinja.jp/jp/images/040_page/construction/kouji_230214.pdf
嚴島神社「拝観時間・拝観施設及び料金」
https://www.itsukushimajinja.jp/jp/admission.html
廿日市市「宮島訪問税の概要」
https://www.city.hatsukaichi.hiroshima.jp/soshiki/110/59551.html
広島県教育委員会「国・県指定等文化財一覧」(PDF)
https://www.pref.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/640309.pdf

最終更新日: 2026.09.08