応永14年、塔の岡に建てられた塔

厳島神社五重塔は、広島県廿日市市宮島町の塔の岡に建つ三間五重塔婆で、応永14年(1407年)7月の建立、明治33年(1900年)4月7日に重要文化財に指定された。

嚴島神社は総高を29メートル余、平面を方4.6メートルとし、手法を「唐様を主として和様を加えたもの」と説明している。大陸から入った組物や虹梁の意匠が、比例や屋根の流れは日本のままの軸部に載る、という意味である。文化庁の国指定文化財等データベースは種別を「近世以前/寺院」としている。神社の境内に建つ仏塔であり、明治初年の神仏分離まではごく普通の取り合わせだった。

高さについては資料が分かれる。広島県教育委員会は27メートルとし、嚴島神社は総高29メートル余とする。どちらも公表された数値であり、開きはおそらく何を測るかの違いに由来する。片方を選ぶより、対にして引いておくほうがよい。

年代は推定ではない。相輪の露盤下を覆う鋳物の鉄板に「天文二年三月十七日 大願寺 道本」の銘があり、天文2年(1533年)を指す。広島県教育委員会はこれをその年の改修の証と読み、相輪の九輪を鋳造したのが廿日市の鋳物師・山田壱岐守であることも記している。修理のたびに金具へ記録が残されてきた建物である。

位置は社殿からひと登りしたところ、千畳閣の隣になる。朱塗の姿はフェリーからも海岸からも檜皮葺の廻廊越しにも見える。宮島を写した写真のなかに、撮った本人が気づかないまま厳島神社五重塔が写り込んでいることは少なくない。

初層の彩色と、その下から出てきた落書

この建物が輪郭以上の意味を持つのは初層の内部である。柱は朱漆塗で上部を金襴巻とし、県の記録によれば、それぞれの彩色を寄附した者の名が柱に記されている。中央の壇の背後に来迎柱と来迎壁が立ち、蓮池が描かれる。頭貫の上の琵琶板には楽器を奏でる天女。西面は腰壁の下に蓮と池、上壁に真言八祖、その背景には瀟湘八景が広がる。中国の山水画題であり、16世紀初頭の日本の絵師が禅林を通して知り得たものだ。四天柱の内側では、頭貫を鳳凰が走る。県の解説はさらに、内陣の天井が雲竜、来迎壁は表に蓮池、裏に白衣観音を描くと述べている。

小壁の一部は顔料の剥落が著しい。その剥落が、かえって情報をもたらした。西の小壁には永正5年(1508年)の落書が以前から知られていたが、今回の修理にともなう赤外線カメラの調査で、塗装の下からさらに古い年号が確認された。享禄2年(1529年)にあたる記載を含む。建物がまだ百年ほどの頃に壁へ字を書いた者がおり、その上から絵を描き直した者がいる。

厳島神社五重塔の内部は公開されていない。定期的に開かれたこともない。内部に残るものが修理記録と調査写真を通してしか知られないのは、そのためである。指定の意味もそこにある。彩色は観客ではなく制度によって守られている。

令和9年まで続く修理

現在、塔は足場に覆われている。嚴島神社は令和7年(2025年)に保存修理へ着手し、工事は令和9年(2027年)まで続く見込みで、仮設足場は令和8年(2026年)12月に解体する予定としている。それまでに訪れる人は、露出した姿ではなく覆いのかかった姿を見ることになる。

きっかけは天候だった。令和2年(2020年)9月、台風10号の吹き返しで檜皮葺が破損し、応急措置として鉄板で覆われた。今回の工事は屋根葺替修理(檜皮屋根)、塗装修理(外部塗装の上塗直しと内部彩色のクリーニング)、木部破損修理と金具取替の部分修理を内容とする。

難しいのはクリーニングである。初層の顔料は場所によって剥落しており、先に触れた赤外線調査が行われたのも、表面をそのまま洗えないからだ。厳島神社五重塔でこの規模の工事が行われるのは百年に二度あるかどうかで、公開されている調査写真には、訪問者が実際に目にできる範囲を超えた内部が写っている。訪ねる前に一度見ておく価値がある。

厳島神社五重塔の見学

塔は塔の岡の屋外に建ち、近づくのに料金はいらない。神社の出口から石段を上がると千畳閣と共有する平場に出る。数分の登りだが、段は場所によって不揃いである。外からの撮影に制限はない。内部は非公開なので、券売も行列もない。

平場そのものが良い視点になる。基壇から離れて立つと五つの屋根が空を背に分かれて見え、下の石段からでは下層しか目に入らない。隣の千畳閣に100円で入れば、床の高さはおおよそ塔の二重目の屋根あたりになる。上部の構造に最も近づける場所である。開館は午前8時30分から午後4時30分まで。

宮島へはJR宮島口駅または広電宮島口からフェリーで約10分、下船して徒歩約10分。廿日市市の宮島訪問税が1人100円、乗船料に上乗せされる。工事の日程は動くことがあるので、足場の有無が気になるなら出発前に嚴島神社の工事状況のページを確かめてほしい。

Q&A

Q厳島神社五重塔の中に入ることはできますか。
Aできません。嚴島神社は「中には入れません」と明記しています。初層の壁画は修理にともなう調査を通して知られているもので、公開されてはいません。
Q厳島神社五重塔は今、足場で覆われていますか。
A覆われています。令和7年(2025年)に始まった修理は令和9年(2027年)まで続き、仮設足場は令和8年(2026年)12月に解体予定です。進捗は嚴島神社の工事状況のページで公表されています。
Q厳島神社五重塔を見るのにいくらかかりますか。
A無料です。公共の石段から上がれる屋外の平場に建っています。隣の千畳閣は大人100円、下の社殿は大人300円ですが、塔を見るだけならどちらも必要ありません。
Qなぜ厳島神社の境内に仏塔である五重塔があるのですか。
A日本では長く神社と寺院が同じ境内を共有していました。文化庁は現在も厳島神社五重塔の種別を寺院建築としており、相輪の銘には神社の西隣にある大願寺の名が見えます。
Q厳島神社五重塔の高さはどのくらいですか。
A嚴島神社は総高29メートル余、平面は方4.6メートルとしています。文化庁は形式を三間五重塔婆、屋根を檜皮葺と記録しています。
広島県教育委員会「国・県指定等文化財一覧」(PDF)
https://www.pref.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/640309.pdf

基本情報

名称厳島神社五重塔(いつくしまじんじゃごじゅうのとう)
所在地広島県廿日市市宮島町
指定区分重要文化財/世界遺産「厳島神社」の区域内
指定年1900年(明治33年)4月7日
員数1基/附指定なし
寸法三間五重塔婆、檜皮葺、1407年。高さは広島県が27メートル、嚴島神社は総高29メートル余で平面は方4.6メートルとする
所有者厳島神社
公開状況塔の岡で外観を無料見学可。内部は非公開。2025年から2027年まで修理中、仮設足場は2026年内に解体予定。宮島訪問税100円

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース「厳島神社五重塔」
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/102/3178
文化遺産オンライン「厳島神社五重塔」
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/157715
嚴島神社「文化財・建造物」
https://www.itsukushimajinja.jp/jp/culture.html
嚴島神社「厳島神社五重塔の修理」(PDF)
https://www.itsukushimajinja.jp/jp/images/040_page/construction/kouji_25032501.pdf
嚴島神社「工事状況及び計画」
https://www.itsukushimajinja.jp/jp/construction.html
廿日市市「宮島訪問税の概要」
https://www.city.hatsukaichi.hiroshima.jp/soshiki/110/59551.html
広島県教育委員会「国・県指定等文化財一覧」(PDF)
https://www.pref.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/640309.pdf

最終更新日: 2026.09.08