山の沼のほとりに立つ丸太の小屋

札幌の南西にそびえる空沼岳、その万計沼のほとりに小さな丸太の建物が立つ。北海道大学が所有する空沼小屋で、昭和3年(1928年)に建てられた。秩父宮雍仁親王の発意により実現し、1920年代に札幌で暮らし道内各地に建築を残したスイス人建築家マックス・ヒンデルが設計した。

小屋は二階建、丸太組構法による木造で、規模は小さいが最大30名が泊まれるよう計画されている。空沼登山口から徒歩およそ2時間を要するため、道端ではなく山に属する建物であり、傍らの沼が静かに記憶に残る舞台をつくっている。

登録の理由

マックス・ヒンデル(1887〜1963)はチューリッヒに生まれ、1924年に来日した。まず札幌で活動し、のち横浜へ移った。北海道では住宅、ミッションスクール、教会、山小屋などを設計し、この地の近代建築の先駆者として記憶されている。空沼小屋はその現存作品の一つである。

この建物は令和4年(2022年)6月29日に登録有形文化財として登録された。札幌中心部のキャンパス建築群よりずっと新しい登録である。小規模ながら機能的に造られ、金具の意匠、太い木柄、ストーブ廻りに設けられた吹抜など、スイスの良質な山小屋を思わせる点が評価された。平成28年(2016年)に改修が行われている。

見どころ

内部の性格は木そのものから生まれている。丸太の部材は太く、金具は素っ気なく済まさず意匠を凝らし、ストーブの周囲では空間が小さな吹抜へと立ち上がって、人の集まる場所に暖かさと明かりが集まる。これらの細部こそが、北海道の山小屋をアルプスの山小屋へと結びつける。稼働中の小屋が文化財として評価された理由でもある。

山深くに立ち、現に使われているため、市街の建物のように気軽に立ち寄れる場所ではない。万計沼や空沼岳をめざす登山者が登山道の途上で通り過ぎ、登山の拠点として機能している。利用や立ち入りを予定する場合は、事前に大学へ現在の取り扱いを確認し、今も生きた山岳施設として接してほしい。

Q&A

Q誰が、なぜ設計したのですか。
A秩父宮雍仁親王の発意で、1920年代に札幌に暮らしたスイス人建築家マックス・ヒンデルが設計し、昭和3年(1928年)に建てられました。
Qどうやって行きますか。
A空沼岳の万計沼畔にあり、空沼登山口から徒歩約2時間です。道端の施設ではなく山岳施設です。
Q何名泊まれますか。
A小規模ですが、最大30名ほどが泊まれるよう計画されています。
Qどこがスイス風なのですか。
A太い木柄、意匠を凝らした金具、ストーブ廻りの吹抜が、良質なアルプスの山小屋を思わせます。

基本情報

名称北海道大学空沼小屋
所在地北海道札幌市南区常盤石狩森林管理署1157イ林小班(空沼岳・万計沼畔)
指定区分登録有形文化財(登録 令和4年6月29日)
建築年昭和3年(1928年)/平成28年(2016年)改修
構造木造2階建、鉄板葺、丸太組構法、建築面積56㎡、1棟
設計マックス・ヒンデル
所有者国立大学法人北海道大学
公開徒歩でのみ至る山小屋。利用・立ち入りは事前に大学へ確認

References

国指定文化財等データベース(文化庁)— 北海道大学空沼小屋
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00014219
文化遺産オンライン — 北海道大学空沼小屋
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/599619
北海道大学 — 山小屋(学生生活)
https://www.hokudai.ac.jp/gakusei/campus-life/college/hut/

最終更新日: 2026.07.02