鶴林寺とは ― 「播磨の法隆寺」と呼ばれる刀田山の寺

鶴林寺は、兵庫県加古川市加古川町北在家にある天台宗の寺院で、天永3年(1112年)の建立とされる太子堂をはじめ、国宝2棟と重要文化財4棟の建造物が境内に建つ。山号は刀田山(とたさん)で、読みは「かくりんじ」。地元では「刀田の太子さん」と呼ばれ、寺自身も「播磨の法隆寺」という呼び名を紹介している。

寺の公式サイトによると、所在地は加古川町北在家424番地で、加古川の市街地のなか、尾上街道と鶴林新道に囲まれた一角を占める。JR加古川駅から歩いても15分ほどの距離で、住宅街の中に平安時代と室町時代の建物がまとまって残っている。

鶴林寺の由緒 ― 聖徳太子の伝承と天台の寺

鶴林寺の始まりについて、寺の解説は江戸時代のものとされる『鶴林寺縁起』に拠っている。それによれば、物部氏の迫害を逃れて播磨に身を隠した高麗出身の僧・恵便(えべん)のもとへ聖徳太子が教えを受けに訪れ、のちに秦川勝に命じて三間四面の精舎を建てさせた。これが「刀田山四天王寺聖霊院」で、崇峻天皇2年(589年)のこととされる。養老2年(718年)には身人部春則(むとべはるのり)が七堂伽藍を整えたと伝わる。

ただし寺の歴史ページは、創建の経緯には分からない部分が多いとも書いている。手がかりになる古い瓦や礎石は見つかっておらず、播磨の寺社を記した『峰相記』にも記録がないという。伝承と確かめられる事実を分けて読みたい。

平安時代には、慈覚大師円仁が唐へ渡る途中に立ち寄って諸堂を修理したと伝わり、これを機に天台宗の寺になったとされる。天永3年(1112年)に鳥羽天皇から「鶴林寺」の勅額を受け、寺号を改めた。「鶴林」は、釈迦が入滅したとき沙羅双樹が鶴の羽のように白く枯れたという故事にちなむ。寺の年表は、鎌倉・室町時代に太子信仰の高まりとともに全盛を迎え、30余りの坊を数えたと記す。戦国時代以降は寺領が大きく減ったが、建物は兵火を免れた。現在は宝生院・浄心院・真光院の3つの塔頭が残る。

鶴林寺の国宝・重要文化財の建造物

鶴林寺の境内には、国の指定を受けた建造物が6棟ある。年代と指定日は文化庁の国指定文化財等データベースに拠る。

  • 鶴林寺本堂:応永4年(1397年)。明治34年(1901年)に重要文化財に指定され、昭和27年(1952年)に国宝となった。和様に禅宗様と大仏様の細部を合わせた折衷様の代表例とされる。
  • 鶴林寺太子堂:天永3年(1112年)。本堂と同じく明治34年(1901年)に指定、昭和27年(1952年)に国宝。檜皮葺の宝形造で、境内でもっとも古い建物である。
  • 鶴林寺常行堂:平安時代後期。明治40年(1907年)に重要文化財に指定された。
  • 鶴林寺行者堂:応永13年(1406年)。昭和5年(1930年)に重要文化財に指定された。
  • 鶴林寺鐘楼:応永14年(1407年)。明治40年(1907年)に重要文化財に指定された。
  • 鶴林寺護摩堂:永禄6年(1563年)。明治40年(1907年)に重要文化財に指定された。

並べてみると、応永4年(1397年)の本堂から応永14年(1407年)の鐘楼まで、10年ほどの間に3棟が相次いで建てられている。境内には兵庫県指定文化財の仁王門と三重塔もあり、宝物館には仏像や絵画などの美術工芸品が収められている。美術工芸品はこのページの対象から外している。

鶴林寺の境内の歩き方

参道から仁王門をくぐると、正面に本堂が建つ。本堂の前庭には菩提樹と沙羅の木が植えられており、寺の名の由来と結びつく木として案内されている。本堂の東に太子堂、西に常行堂があり、平安時代の2棟が室町時代の本堂を左右からはさむ形になる。

本堂の東側には鐘楼と護摩堂が続き、行者堂は境内の南西寄りに建つ。歩く順序は、仁王門から本堂、太子堂と鐘楼を見て護摩堂へ回り、引き返して常行堂、行者堂へ向かうと、同じ道を何度も通らずに済む。宝物館を見るなら、最後に回すと境内で見た建物と寺の歴史を結びつけやすい。

境内は砂利敷きで、寺は幅広のゴムタイヤの車いすを1台用意している。仁王門と宝物館にはスロープがあり、障がい者用のトイレもある。各建物の前でどこに注目すればよいか、堂内が公開されているかどうかは、それぞれの建物のページで扱っている。

鶴林寺の拝観時間・拝観料と行き方

鶴林寺の公式サイトによると、拝観時間は午前9時から午後4時30分までで、午後5時に閉門する。入山料は中学生以上500円で、小学生以下は無料、中学生は生徒手帳などの提示で100円になる。宝物館の拝観料は希望者のみ別に500円が必要で、入山料とのセット券は800円である。30名以上の団体は1割引き、障がい者手帳の提示で本人と付き添い1名は無料になる。

電車の場合は、JR加古川駅から市内を走る「かこバス」で約8分、徒歩なら約15分である。寺の案内では「鶴林寺」のバス停から門前まで徒歩1分ほど。山陽電鉄の尾上の松駅からも歩いて約15分で着く。車の場合は加古川バイパスの加古川ランプから約10分、山陽自動車道の三木小野インターチェンジから約30分である。仁王門へ続く参道の入口に乗用車約30台を止められる鶴林寺公園駐車場があり、大型バスも入れる。なお、隣の鶴林寺公園は加古川市が管理する公園で、寺とは運営が別だと寺は注意を呼びかけている。

境内の案内を頼みたい場合は、ボランティアガイドを電話で予約できる。寺は1週間ほど前の申し込みを勧めている。毎年1月8日には修正会が営まれ、赤鬼と青鬼が参詣者の間を暴れ回ったのち改心して厄を払う「鬼追い」が行われる。

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース「鶴林寺本堂」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/2366
文化庁 国指定文化財等データベース「鶴林寺太子堂」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/2367
文化庁 国指定文化財等データベース「鶴林寺鐘楼」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/2368
文化庁 国指定文化財等データベース「鶴林寺護摩堂」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/2369
文化庁 国指定文化財等データベース「鶴林寺常行堂」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/2370
文化庁 国指定文化財等データベース「鶴林寺行者堂」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/2371
文化遺産オンライン「鶴林寺本堂」
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/190203
文化遺産オンライン「鶴林寺太子堂」
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/123174
刀田山鶴林寺「鶴林寺の歴史」
https://www.kakurinji.or.jp/history/
刀田山鶴林寺「鶴林寺の指定文化財一覧」
https://www.kakurinji.or.jp/cultural-property/kokuhoichiran/
刀田山鶴林寺「アクセス」
https://www.kakurinji.or.jp/access/
刀田山鶴林寺「鶴林寺拝観料」
https://www.kakurinji.or.jp/admission-fee/
刀田山鶴林寺「修正会(鬼追い)」
https://www.kakurinji.or.jp/event/shuseikai/
刀田山鶴林寺「【注意】『鶴林寺公園』は『鶴林寺』ではありません」
https://www.kakurinji.or.jp/post-1892/
刀田山鶴林寺 トップページ(ボランティアガイドの案内)
https://www.kakurinji.or.jp/

最終更新日: 2026.10.07

基本情報

名称鶴林寺
所在地兵庫県加古川市加古川町北在家424
所有者鶴林寺
指定国宝 2件・重要文化財 4件
座標34.75213, 134.83264