新かめや本館:城崎温泉に息づく数寄屋建築の名匠の技

城崎温泉の中心部、柳並木が美しい大谿川のほとりに佇む新かめや本館は、近代数寄屋建築の巨匠・平田雅哉が設計し、1959年(昭和34年)に完成した木造三階建の旅館です。平田雅哉が城崎温泉で最初に手がけた建築として知られ、2015年に国の登録有形文化財に登録されました。端正な意匠と温もりある空間が調和するこの旅館は、1,300年以上の歴史を誇る城崎温泉の風情を今に伝える貴重な文化遺産であるとともに、実際に宿泊してその魅力を体感できる「泊まれる文化財」でもあります。

歴史的背景

城崎温泉は1,300年を超える長い歴史を有する温泉地です。舒明天皇の時代(629年頃)に傷を負ったコウノトリがこの地で傷を癒していたことから温泉が発見されたという伝説があり、その後、養老元年(717年)に道智上人がこの地を訪れ、千日間の祈願の末に温泉が湧出したと伝えられています。

城崎温泉の歴史において最も大きな転機となったのが、大正14年(1925年)に発生した北但大震災です。マグニチュード6を超えるこの地震と、それに伴う火災によって温泉街は壊滅的な被害を受けました。しかし町民たちの不屈の精神により、まず外湯の復旧から始まる復興が驚くべき速さで進められ、昭和10年(1935年)頃には現在の城崎温泉の骨格がほぼ完成しました。

新かめや本館が建てられたのは、この復興を経てさらに発展を遂げた昭和中期のことです。設計を手がけた平田雅哉(1900〜1980年)は大阪府堺市に生まれ、生涯を数寄屋建築の設計施工に捧げた名匠です。朝香宮茶席や大徳寺如意庵をはじめとする数多くの茶室、吉兆・招福楼などの名料亭、大観荘やつるやなどの旅館を手がけ、「近代数寄屋の巨匠」と称されました。新かめや本館は、平田が城崎温泉で最初に手がけた建築であり、その後に設計した西村屋本館平田館とともに、城崎の景観を彩る重要な建築遺産となっています。

文化財登録の理由と価値

新かめや本館は2015年(平成27年)11月17日に国の登録有形文化財(建造物)に登録されました。登録にあたっては、平田雅哉の作風を示す建築として以下の特徴が評価されています。

本建物は木造三階建、瓦葺で、建築面積は約206平方メートルです。河畔に建つ外観は、各階の境目に庇を廻らし、一階東寄りの玄関と二階西寄りに千鳥破風を配することで、均整のとれた端正な表情を生み出しています。玄関廻りには細格子の横長窓を配し、繊細さと秩序感を演出。内部の座敷飾りは直線的で端正な意匠を基調としながら、朱塗の棚で趣を添えるなど、伝統的な和の美意識と洗練された近代感覚を融合させた平田の作風の一端をよく示しています。

建築の見どころと魅力

新かめや本館の魅力は、城崎温泉の自然景観と建築美の見事な調和にあります。大谿川に面して建つ木造三階建の佇まいは、柳並木と石造りの太鼓橋が連なる城崎の象徴的な景観と一体となり、温泉街の風情を格段に引き立てています。

平田雅哉の設計思想は「モダン数寄屋」とも評されるもので、過度な装飾に頼ることなく、素材の選択、比率の正確さ、光と空間の巧みな操作によって美しさを実現しています。正面の千鳥破風は単なる装飾ではなく、三階建ての建物のボリュームを視覚的に分節し、城崎の伝統的な町並みとの調和を生み出す重要な要素となっています。

館内には、柱や天井の造作、座敷飾りの細部など、職人の技が随所に見られます。また、昭和のレトロな雰囲気が色濃く残る館内は、多くの宿泊客から「懐かしい実家に帰ってきたような安らぎ」と評されています。

客室は全10室の和室で、大小2つの貸切家族風呂を備えています。食事は地元の旬の食材を活かした会席料理で、冬季には日本海の松葉ガニを堪能できるプランも人気です。

周辺情報・城崎温泉の楽しみ方

新かめや本館は城崎温泉のメインストリートの中心に位置しており、城崎名物の外湯めぐりを楽しむのに最適な立地です。城崎温泉には「さとの湯」「地蔵湯」「柳湯」「一の湯」「御所の湯」「まんだら湯」「鴻の湯」の7つの外湯があり、それぞれ異なる趣の建築とご利益を持っています。宿泊客には無料の外湯めぐりパス「ゆめぱ」が提供され、滞在中は何度でも入浴を楽しむことができます。

城崎温泉では「駅は玄関、道は廊下、旅館は客室、外湯は大浴場」というまち全体を一つの大きな旅館と捉える考え方が根づいており、浴衣に着替えて下駄の音を響かせながら温泉街を散策するのが伝統的な過ごし方です。城崎温泉の街並みはミシュラン・グリーンガイド・ジャポンで二つ星を獲得しています。

周辺の見どころとしては、城崎温泉ロープウェイで登る大師山の山頂からの絶景、温泉寺、伝統工芸の麦わら細工体験ができる城崎麦わら細工伝承館などがあります。また、車で約15分の玄武洞は火山性の柱状節理が見事な天然記念物です。山陰海岸ユネスコ世界ジオパークの壮大な海岸線も日帰り圏内です。

Q&A

Q新かめや本館はなぜ文化財に登録されたのですか?
A新かめや本館は、近代数寄屋建築の巨匠・平田雅哉が城崎温泉で最初に設計した木造三階建の旅館です。千鳥破風を配した端正な外観、細格子の横長窓、朱塗の棚を用いた座敷飾りなど、平田の作風を示す特徴が評価され、2015年に国の登録有形文化財(建造物)に登録されました。
Q外湯めぐりは新かめやから便利ですか?
Aはい。新かめや本館は城崎温泉の中心部に位置しており、7つの外湯すべてに徒歩でアクセスできます。宿泊客には無料の外湯めぐりパス「ゆめぱ」が提供され、滞在中は何度でも各外湯をお楽しみいただけます。
Qアクセス方法を教えてください。
AJR城崎温泉駅から徒歩約7分です。お車の場合は、中国自動車道吉川ICから舞鶴自動車道・北近畿豊岡自動車道を経由し、和田山ICから約70分です。有料駐車場をご利用いただけます(15:00〜10:00、1,000円)。
Q館内にお風呂はありますか?
Aはい。大小2つの貸切家族風呂がございます。空いていればいつでもご利用いただけますので、ご家族やカップルでゆっくりとお過ごしいただけます。
Q平田雅哉とはどのような建築家ですか?
A平田雅哉(1900〜1980年)は大阪府堺市に生まれ、生涯を数寄屋建築に捧げた近代数寄屋の巨匠です。朝香宮茶席、大徳寺如意庵などの茶室、吉兆・招福楼などの料亭、大観荘やつるやなどの旅館、また多くの住宅を設計しました。著書に『数奇屋建築』『数奇屋造り』『大工一代』があります。

基本情報

名称 新かめや本館(しんかめやほんかん)
文化財登録 国登録有形文化財(建造物) — 2015年(平成27年)11月17日登録
設計 平田雅哉(ひらた まさや)
竣工 1959年(昭和34年)
構造 木造3階建、瓦葺、建築面積約206㎡
所在地 〒669-6101 兵庫県豊岡市城崎町湯島字愛宕279
アクセス JR城崎温泉駅より徒歩約7分
チェックイン/チェックアウト チェックイン 15:00〜18:00 / チェックアウト 10:00
客室 和室10室
電話 0796-32-2421

参考文献

新かめや本館 — 文化遺産オンライン
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/291699
国指定文化財等データベース — 新かめや本館
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00011994
新かめや — 城崎温泉旅館予約
https://resv.kinosaki-spa.gr.jp/sinkameya/
平田館について — 城崎温泉 旅館 西村屋本館
https://www.nishimuraya.ne.jp/honkan/hiratakan/
外湯巡り発祥の地!温泉天国★城崎温泉 — 豊岡市観光公式サイト
https://toyooka-tourism.com/recommend/onsen/kinosaki_sotoyu/

最終更新日: 2026.03.30