小林屋旅館:城崎温泉の中心に佇む登録有形文化財の宿
兵庫県豊岡市・城崎温泉の柳並木が美しい大谿川(おおたにがわ)沿いに建つ小林屋旅館は、創業350年以上の歴史を誇る老舗旅館です。木造三階建ての本館は、2015年11月に国の登録有形文化財に指定されました。2023年には約100年ぶりとなる大規模改修を経て、歴史的な建築の趣を守りながら現代的な快適さを兼ね備えた「日本の美と出会う宿」として生まれ変わりました。
歴史的背景
小林屋の創業は江戸時代初期にさかのぼり、城崎温泉でもっとも長い歴史を持つ旅館のひとつです。現在の建物は、1925年(大正14年)の北但大震災で城崎の町が壊滅的な被害を受けた後、昭和初期に再建されたものです。その後、1946年から1965年にかけて改修が行われました。
江戸時代初期には瀬戸物商も兼業しており、器やうつわに対する深い審美眼は現在の宿のおもてなしにも受け継がれています。
文化財指定の理由
小林屋旅館は2015年11月17日、国の登録有形文化財(建造物)として登録されました。木造2階一部3階建、瓦葺で、建築面積は472平方メートルです。
川沿いの通りに面して建つ本館は、正面二階に客室、三階に広間を配し、開口を広く取り、庇(ひさし)を廻らせた外観が特徴です。奥行きの長い平面構成で、最奥部の二階建にも客室を設け、中間部には採光用の中庭と小さめの内湯のみを置く間取りとなっています。この構成は、外湯(共同浴場)を中心とした城崎温泉ならではの伝統的な旅館形態をよく伝えるものとして高く評価されました。
2023年の大規模リニューアル
2021年から約2年半の歳月をかけて行われた大規模改修は、建築設計事務所SUPPOSE DESIGN OFFICE(谷尻誠・吉田愛)が設計を担当しました。建立当時からの手すりや型ガラス、錠前といった意匠を活かしながら、空気を汚さないヒーティングシステムや木製建具のペアガラスなど、現代の居住性を確保する設備を導入しています。
館内は「侘び・寂び・幽玄」をテーマに再生され、和紙に包まれたベッドルーム、土壁で仕上げたロビー空間、地方の窯元からセレクトされた茶器が客室に用意されるなど、随所に日本の伝統工芸の美が息づいています。また、ブックディレクター・幅允孝氏が選書した55冊の本が並ぶライブラリーも新設されました。
魅力と見どころ
小林屋は全12室の客室を擁し、ワンフロアを貸し切るペントハウススイートも用意されています。「侘び」「寂び」「幽玄」と名付けられた3つの貸切風呂は予約不要で、空いていれば自由に利用できます。泉質は城崎の外湯と同じ源泉です。
新設されたレストラン「CYAN(詩庵)」では、山陰の旬の食材を活かした創作会席料理を提供しています。かつて瀬戸物商を営んでいた宿ならではのこだわりで、料理を盛る器も逸品揃いです。
宿泊者には城崎温泉の外湯を自由に巡れる「湯めぐりパスポート」が付き、チェックイン日の14時からチェックアウト日の15時30分まで利用可能です。オリジナル浴衣と色浴衣のセットが用意され、下駄を履いて温泉街を散策する城崎ならではの体験が楽しめます。
周辺情報
城崎温泉は1,300年以上の歴史を持つ関西有数の温泉地です。「町全体がひとつの旅館」という独自の哲学のもと、7つ(現在は6つ)の外湯を中心に温泉街全体が賑わいを見せています。小林屋は人気の外湯「一の湯」まで徒歩約1分という絶好の立地です。
周辺には城崎ロープウェイで登る大師山からの絶景スポット、伝統的な城崎麦わら細工を体験できる麦わら細工伝承館、柱状節理の奇岩で知られる天然記念物・玄武洞などの見どころがあります。冬季(11月〜3月)には但馬の名物である松葉がに料理が楽しめ、全国から美食家が集まります。
Q&A
- 小林屋旅館が登録有形文化財に指定された理由は何ですか?
- 川沿いに建つ木造三階建の旅館建築として、正面に広い開口部と庇を持ち、奥行きの長い平面に中庭と小さな内湯のみを配する間取りが、城崎温泉の伝統的な旅館形態をよく伝えている点が評価され、2015年11月17日に登録されました。
- アクセス方法を教えてください。
- JR城崎温泉駅から徒歩約7分です。京都・大阪・三宮・姫路からはJR特急列車が便利です。車の場合は北近畿豊岡自動車道・但馬空港ICから約20分。駐車場あり(1泊1,000円)。
- 外湯めぐりはできますか?
- はい。宿泊者には「湯めぐりパスポート」が付き、チェックイン日の14時からチェックアウト日の15時30分まで城崎の外湯を自由に巡ることができます。館内にも3つの無料貸切風呂があります。
- 2023年のリニューアルではどのような変化がありましたか?
- SUPPOSE DESIGN OFFICE(谷尻誠・吉田愛)の設計により、昭和初期の建築意匠を活かしながら現代的な快適性を導入。和紙に包まれた客室や土壁のロビー、窯元の茶器など、日本の伝統工芸を随所に取り入れた空間に生まれ変わりました。
- 食事はどのようなものですか?
- 館内レストラン「CYAN(詩庵)」にて、山陰の旬の食材を活かした創作会席コースを提供しています。冬季は松葉がに料理が名物で、選りすぐりの器とともに楽しめます。
基本情報
| 名称 | 小林屋旅館(こばやしやりょかん) |
|---|---|
| 文化財指定 | 登録有形文化財(建造物)、2015年(平成27年)11月17日登録 |
| 建築年代 | 昭和前期(1926〜1945年)、1946〜1965年改修 |
| 構造 | 木造2階一部3階建、瓦葺、建築面積472㎡ |
| 所在地 | 兵庫県豊岡市城崎町湯島字愛宕369 |
| アクセス | JR城崎温泉駅より徒歩約7分 |
| 客室数 | 12室 |
| 改修設計 | SUPPOSE DESIGN OFFICE(谷尻誠・吉田愛)、2023年完了 |
| 公式サイト | https://kobayashiya.co.jp/ |
参考文献
- 小林屋旅館 - 文化遺産オンライン
- https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/247305
- 国指定文化財等データベース
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00010850
- 小林屋 公式サイト
- https://kobayashiya.co.jp/
- 城崎温泉観光協会 - 小林屋
- https://resv.kinosaki-spa.gr.jp/kobayashiya/
最終更新日: 2026.04.09