笠間市立歴史民俗資料館(旧宍戸町役場庁舎)― 昭和初期の洋風庁舎が語る地域の記憶

茨城県笠間市の宍戸小学校前にたたずむ笠間市立歴史民俗資料館は、1937年(昭和12年)に宍戸町役場庁舎として建てられた洋風木造建築です。クリーム色の下見板張りの外壁と寄棟造の屋根が落ち着いた風格を見せるこの建物は、宍戸町から友部町へ、そして笠間市へと続く地域行政の変遷を見守ってきました。2004年(平成16年)2月17日に国の登録有形文化財に登録され、建築遺構としての価値と、地域の歴史を伝える資料館としての役割を兼ね備えた、笠間の隠れた文化スポットです。

宍戸の歴史と町役場庁舎のあゆみ

宍戸の地名は、鎌倉時代初期にこの地を治めた宍戸氏に由来します。常陸守護職・八田知家の四男家政がこの地を領し宍戸氏を称したことから、この一帯は「宍戸荘」と呼ばれるようになりました。以後15代約380年にわたる宍戸氏の統治が続き、この地域の歴史的基盤が形づくられました。

江戸時代に入ると、慶長7年(1602年)に秋田実季が宍戸5万石の藩主として入城。その後、天和2年(1682年)には水戸藩主・徳川頼房の七男で徳川光圀の弟にあたる松平頼雄が宍戸1万石を与えられ、以降幕末まで水戸藩の支藩として松平氏が治めました。

現在の建物は昭和12年(1937年)に宍戸町役場庁舎として建設されました。戦中・戦後の激動の時代を経て、昭和30年(1955年)に宍戸町が周辺町村と合併して友部町が誕生した後も、昭和33年(1958年)まで友部町役場庁舎として使用されました。その後、歴史民俗資料館として生まれ変わり、建物自体と地域の貴重な資料の双方を今日に伝えています。

登録有形文化財としての価値

この建物が国の登録有形文化財に登録されたのは、昭和初期の地方行政建築の典型的かつ良好な保存状態を示す点が高く評価されたためです。

建物はL字型平面の寄棟造で、下見板張りの木造2階建(一部平屋建)。瓦葺と鉄板葺を組み合わせた屋根を持ち、建築面積は約250平方メートルです。東面には車寄(ポーチ)が設けられ、その間口が広くとられている点に特色があります。北面には大谷石造の平屋建文書庫が張り出し、西方奥には物置が配されています。

内部は、1階が窓口および事務室、2階が議事堂(議場)という、当時の町村役場として標準的な構成をとっています。この機能的な配置と、保存状態の良い外観、特徴ある車寄の意匠が一体となって、戦前日本の地方自治がどのような空間で営まれていたかを今に伝える貴重な建築遺構となっています。

見どころ・魅力

洋風木造庁舎の外観

クリーム色の下見板張りの外壁に整然と並ぶ窓、堂々とした車寄のある玄関。大谷石で造られた文書庫の質感が、木造主体部と美しいコントラストを成しています。宍戸小学校に隣接する立地も含め、昭和初期の町並みの雰囲気を今に伝える貴重な景観です。

考古資料の展示

1階には、旧友部地区の遺跡から出土した考古資料が展示されています。古墳時代の埴輪をはじめ、石器や土器など、この地域の先史時代から古代にかけての人々の暮らしを物語る貴重な資料を間近に見ることができます。

民俗資料と生活の変遷

農具や生活用具などの民俗資料が分野別に展示され、地域の産業・交通・教育・生活の移り変わりがわかりやすく紹介されています。水を汲み上げるための「踏み車」など、かつての農村生活を体感できる展示物も見どころの一つです。2階のかつての議事堂空間も展示室として活用されており、地方自治が行われた歴史的空間を体験できます。

宍戸城の歴史展示

宍戸城に関する歴史コーナーも設けられています。鎌倉時代に築かれたとされる宍戸城は、江戸初期に破却された後、天明期に陣屋として再建されました。資料館のすぐ近くには宍戸城址の土塁が残り、その上に末廣稲荷神社が鎮座しています。資料館と合わせて散策することで、この地の重層的な歴史を肌で感じることができます。

周辺情報

笠間市立歴史民俗資料館を訪れた際には、笠間市内の豊富な観光スポットもぜひ併せてお楽しみください。

  • 宍戸城址土塁・末廣稲荷神社:資料館から徒歩数分。宍戸城の名残である土塁と、その上に祀られた稲荷神社を散策できます。笠間市指定文化財です。
  • 笠間稲荷神社:日本三大稲荷の一つに数えられ、1350年以上の歴史を誇ります。御本殿は国の重要文化財に指定され、樹齢400年の藤の花は5月上旬が見頃です。
  • 笠間焼の里:笠間工芸の丘や茨城県陶芸美術館では、笠間焼の歴史を学べるほか、ろくろや手びねりなどの陶芸体験も楽しめます。
  • 筑波海軍航空隊記念館:太平洋戦争時の海軍航空隊基地の遺構が当時のまま残され、映画『永遠の0』のロケ地としても知られています。
  • 笠間日動美術館:日動画廊のコレクションを中心に、国内外の絵画を展示する美術館です。

Q&A

Q入館料はかかりますか?
A入館料は無料です。どなたでもお気軽にご見学いただけます。
Q開館日と開館時間を教えてください。
A開館日は火曜・木曜・土曜・日曜です。火曜・木曜は午後1時~午後4時、土曜・日曜は午前9時~午後4時の開館です。月曜・水曜・金曜、祝日、年末年始(12月28日~1月4日)は休館となります。
Q東京からのアクセス方法は?
A東京方面からは、JR常磐線の特急「ときわ」で友部駅まで行き、JR水戸線に乗り換えて宍戸駅で下車、徒歩約10分です。お車の場合は、北関東自動車道・友部ICから約2分です。
Q駐車場はありますか?
A資料館前に4台分の駐車スペースがあります。台数に限りがありますので、混雑時は近隣の駐車場もご利用ください。
Q見学にどれくらいの時間がかかりますか?
A館内の見学は30分~1時間程度が目安です。近くの宍戸城址土塁の散策も含めると、1時間半ほどゆったりとお楽しみいただけます。さらに笠間稲荷神社や笠間焼の里なども合わせると、充実した一日旅行になります。

基本情報

名称 笠間市立歴史民俗資料館(旧宍戸町役場庁舎)
文化財指定 国登録有形文化財(建造物)/2004年(平成16年)2月17日登録
建築年 1937年(昭和12年)
構造 木造2階一部平屋建、瓦葺一部鉄板葺、建築面積約250㎡
所在地 〒309-1722 茨城県笠間市平町29
所有者 笠間市
開館日 火曜・木曜・土曜・日曜
開館時間 火曜・木曜:午後1時~午後4時/土曜・日曜:午前9時~午後4時
休館日 月曜・水曜・金曜、祝日、年末年始(12月28日~1月4日)
入館料 無料
駐車場 4台
アクセス JR水戸線 宍戸駅より徒歩約10分/北関東自動車道 友部ICより約2分
電話番号 0296-77-8925

参考文献

笠間市立歴史民俗資料館(旧宍戸町役場庁舎) ― 文化遺産オンライン
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/139548
笠間市立歴史民俗資料館(旧宍戸町役場庁舎) ― 茨城県教育委員会
https://kyoiku.pref.ibaraki.jp/bunkazai/bunkazai-registered-6255/
歴史民俗資料館 ― 笠間市公式ホームページ
https://www.city.kasama.lg.jp/page/page000249.html
笠間の歴史 ― 笠間市公式ホームページ
https://www.city.kasama.lg.jp/page/page000169.html
宍戸城址土塁 ― 笠間市公式ホームページ
https://www.city.kasama.lg.jp/page/page000662.html
観光スポット 歴史民俗資料館 ― 笠間観光協会公式ホームページ
https://www.kasama-kankou.jp/section.php?code=512

最終更新日: 2026.03.22