小里川発電所余水路とは
小里川発電所余水路は、茨城県常陸太田市徳田町にある大正14年(1925年)築造の排水路で、平成16年(2004年)11月8日に登録有形文化財に登録された。山腹の上部水槽にあふれた水を、発電所を経ずに里川へ直接落とすための施設である。所有は東京発電株式会社。大正15年(1926年)2月の運転開始とともに使われはじめた。
総延長は281メートル。上端の3.6メートルが暗渠で、そこから下は277メートルの開渠が続く。側壁は法勾配3分の谷積とし、放水口の近くにはスパン約1.5メートルの小さな鉄筋コンクリート造橋が架かる。
この水路の特徴は、山の斜面をほぼ鉛直方向に一直線に下ることである。等高線に沿って迂回する導水路とは逆に、小里川発電所余水路は最短距離で水を谷底へ捨てる。用途が違えば線形も変わるという、土木構造物の理屈がそのまま形になっている。
登録有形文化財としての価値
登録の基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。水力発電の施設のうち、余水路は電気を生まない部分にあたる。それでも本館・取水所・放水路と同じ日に登録されたのは、発電所を一連の系として評価しているからである。
余水路がなければ、水槽から溢れた水は行き場を失い、山腹を勝手に流れ下って斜面を崩す。小里川発電所余水路は、その事故を起こさないために築かれた安全装置であり、大正期の水力発電がどこまで細かく設計されていたかを示している。
平成29年(2017年)には、里川沿いの発電施設が「里川水系水力発電所群」として土木学会の選奨土木遺産に認定された。小里川発電所余水路もその構成要素のひとつである。
見どころ
小里川発電所余水路の見どころは、斜面を見上げたときの一直線である。杉林のなかを水圧鉄管が下り、その近くを余水路が並んで落ちる。太い鉄管と細い石積の溝が、同じ斜面をほぼ平行に走る。片方は水の位置エネルギーを使い切るための管、もう片方は余った水を捨てるための溝で、目的が正反対のものが隣り合っている。
277メートルの開渠部分は、側壁を谷積で固めている。斜面に沿って延々と続く石積の列は、上から下まで勾配が変わらない。急な傾斜のなかで水路の断面をそろえるには相応の手間がかかったはずで、その均質さが見どころになる。
下端の放水口近くに架かる橋は、スパンが約1.5メートルしかない。人ひとりが渡るための小さな構造物だが、鉄筋コンクリートできちんとつくられている。この規模の橋にまで同じ材料と工法が及んでいることが、当時の工事の徹底ぶりを物語る部分といえる。
小里川発電所余水路の見学とアクセス
小里川発電所余水路は現役の設備であり、水路に沿って登ることはできない。斜面は東京発電株式会社の管理区域で、立ち入りは認められていない。下端の放水口付近と、斜面を貫く水路の線は、発電所本館の周辺の道路から見上げる形で確認できる。撮影も、その道路上からであれば問題ない。
位置は常陸太田市徳田町。国道349号から里美地区に入り、川沿いの道を進む。常陸太田駅からは自動車でおよそ1時間かかる。標識は出ていないので、本館を目印にして周辺から斜面を探すとよい。
斜面には落ち葉が厚く積もり、雨のあとは滑りやすい。水路の縁に沿って歩こうとせず、道路から見上げるだけにとどめたい。(見学に関する情報は2026年9月時点)
Q&A
- 小里川発電所余水路は何のための施設ですか?
- 山腹の上部水槽からあふれた水を、発電所を通さずに里川へ直接落とすための水路です。斜面を崩さずに余った水を処理する安全装置にあたります。
- 小里川発電所余水路の長さはどのくらいですか?
- 総延長281メートルです。上端の3.6メートルが暗渠、その下に277メートルの開渠が続きます。
- 小里川発電所余水路は見学できますか?
- 現役の設備で、斜面は管理区域のため立ち入れません。発電所本館の周辺の道路から、斜面を下る水路の線を見上げることができます。
- 小里川発電所余水路はいつつくられましたか?
- 大正14年(1925年)の築造で、平成16年(2004年)11月8日に登録有形文化財となりました。
- 小里川発電所余水路へのアクセスは?
- 常陸太田市徳田町にあります。JR水郡線の常陸太田駅から国道349号経由で自動車でおよそ1時間です。
基本データ
| 名称 | 小里川発電所余水路 |
|---|---|
| 所在地 | 茨城県常陸太田市徳田町 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) |
| 指定年 | 平成16年(2004年)登録 |
| 員数 | 1所 |
| 寸法 | コンクリート造、延長281メートル、鉄筋コンクリート造橋付 |
| 所有者 | 東京発電株式会社 |
| 公開状況 | 外観のみ。内部は非公開 |
参考文献
- 国指定文化財等データベース 小里川発電所余水路(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00004315
- 国指定文化財等データベース 小里川発電所本館(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00004313
- 有形文化財(東京発電株式会社)
- https://tokyohatsuden.co.jp/csr/cultural_property/
- 土木学会関東支部 選奨土木遺産 里川水系水力発電所群
- https://www.jsce.or.jp/branch/kanto/04_isan/h29/h29_4.html
最終更新日: 2026.09.05