里川の最上流で動き続ける木造の発電所建屋

徳田発電所本館は、茨城県常陸太田市徳田町にある大正15年(1926年)建設の水力発電所の建屋で、平成16年(2004年)11月8日に登録有形文化財となった。木造平屋建、建築面積81平方メートル。桁行7、梁間3間半という寸法は、山あいの農家住宅とさほど変わらない。

建設したのは東部電力株式会社である。里川の水を電力に変える事業は明治41年(1908年)の中里発電所に始まり、大正期を通じて上流へ延びていった。徳田発電所はその流れの最後にあたり、里川水系に並ぶ5つの発電所のうちもっとも上流に位置する。

屋根は切妻造で、瓦棒を通した鉄板葺。外壁は下見板張とする。軒まわりに飾りはなく、正面に大きな窓を並べるでもない。ところが小屋裏をのぞくと、木造のキングポストトラスが架かっている。和小屋ではなく洋小屋を選んだのは、室内に柱を立てずに水車と発電機を据えるためで、外観の素っ気なさと構法の新しさが同じ建物に同居している。

内部には横軸フランシス水車と発電機が据えられている。認可出力は650キロワット、有効落差は106.15メートル、使用水量は毎秒0.78立方メートル。運転は無人で行われている(土木学会関東支部の資料による)。

登録の理由と、徳田発電所本館が持つ価値

徳田発電所本館は、放水路・余水路・取水所の3件とともに平成16年(2004年)11月8日に登録され、同月29日に告示された。登録番号は第08-0147号。登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」で、制度としては登録有形文化財にあたる。

里川水系では現在も5つの発電所が稼働している。建屋の構造を並べると、里川発電所と小里川発電所は鉄筋コンクリート造、中里・賀美・徳田の3つが木造である。大正末に建てられた小里川発電所が鉄筋コンクリート造を選んだのに対し、同じ年に完成した徳田発電所が木造で建てられている点は、規模と立地に応じて工法を選び分けていたことを示している。

比較の対象になるのは大正8年(1919年)竣工の賀美発電所本館である。こちらは建築面積189.3平方メートルで、屋根に越屋根を載せ、壁面に広い開口部を取って換気に配慮する。徳田発電所本館は81平方メートルと小さく、越屋根を持たない。外壁を下見板張とする点は共通するが、7年の隔たりのなかで規模も小屋組も同じではなくなっている。

里川水系の発電施設は、平成29年度(2017年)に「里川水系水力発電所群」として土木学会選奨土木遺産に選ばれている。文化財としての登録と土木遺産としての評価が重なっている点でも、徳田発電所本館は近代茨城の電源開発を伝える建物として扱われている。

徳田発電所本館の見どころ

まず目に入るのは、屋根の低さである。切妻の稜線は水平に長く伸び、下見板の横筋がそれに重なる。工場建築というより、大きめの倉庫に近い外観をしている。

建屋の背後に視線を移すと、斜面を下ってくる水圧鉄管が見える。106.15メートルの落差はこの管で受け止められ、建屋の中の水車に届く。鉄管そのものは登録の対象ではないが、建屋と鉄管と川の位置関係を一度に見渡せる場所は多くない。

建屋の下方、南西側からは放水路が始まり、使い終えた水が里川へ戻っていく。上方の斜面には余水路が直線で走り、約2キロメートル上流には取水所がある。徳田発電所本館は、この一続きの装置のちょうど中央に置かれた部屋のようなものだと考えると、建物の小ささの理由も見えてくる。

竣工から100年近くたつが、施設は現在もほぼ当時の姿で運転を続けている。大正期の木造建築が、機械を収める器として使われ続けている例はそれほど多くない。

徳田発電所本館の見学方法とアクセス

徳田発電所本館は東京発電株式会社が所有する現役の発電施設であり、内部は公開されていない。所有者の案内でも一般向けの見学会は告知されていない(2026年9月時点)。敷地内は立入禁止のため、見学は公道からの外観に限られる。撮影も公道上からであれば差し支えないが、門扉の内側やフェンスを越えての撮影は避けたい。

公共交通で向かう場合は、JR水郡線の常陸太田駅から茨城交通の路線バス「小中・里川線」を利用する。「徳田発電所」というバス停が発電所のそばにあり、常陸太田駅からの所要はおよそ80分。ただしこのバス停に停車する便は平日でも1日3本程度で、土日祝は運行がない。時刻は常陸太田市が公開している「里美地区公共交通マップ」で確認してから出かけたい。

車の場合は、常陸太田市街から国道349号を北上し、里川沿いの県道に入る。市街地からおよそ1時間の道のりになる。周辺に見学者向けの駐車場はないため、路上駐車をせず、通行の妨げにならない場所を選ぶ必要がある。冬季は路面が凍結することがある。

Q&A

Q徳田発電所本館は見学できますか。内部は公開されていますか。
A内部は公開されていません。現役の水力発電施設で、敷地内は立入禁止です。見学は公道から外観を眺める形になります(2026年9月時点)。
Q徳田発電所本館へのアクセスは。最寄り駅とバスを教えてください。
A最寄り駅はJR水郡線の常陸太田駅です。茨城交通の「小中・里川線」に「徳田発電所」バス停があり、所要約80分。停車する便は平日1日3本程度で、土日祝は運行がありません。車では常陸太田市街から国道349号経由で約1時間です。
Q徳田発電所本館はいつ、誰が建てたのですか。
A大正15年(1926年)の建設で、東部電力株式会社が建てました。同社は明治期に設立された茨城電気が茨城電力を経て改称した会社で、里川水系の電源開発を進めていました。現在の所有者は東京発電株式会社です。
Q徳田発電所本館は今も発電しているのですか。
A稼働しています。認可出力650キロワット、有効落差106.15メートル、使用水量は毎秒0.78立方メートルで、横軸フランシス水車と発電機を備え、無人で運転されています。
Q徳田発電所本館の写真撮影はできますか。
A公道上からの撮影であれば問題ありません。敷地内への立入りやフェンスを越えての撮影はできません。道幅の狭い場所が続くため、通行の妨げにならないよう注意してください。

基本情報

名称徳田発電所本館
所在地茨城県常陸太田市徳田町
指定区分登録有形文化財(建造物) 登録番号 第08-0147号
指定年平成16年(2004年)11月8日登録
員数1棟
寸法建築面積81平方メートル、木造平屋建、鉄板葺
所有者東京発電株式会社
公開状況非公開(現役の発電施設。敷地内は立入不可、外観は公道から見学可)

参考文献

国指定文化財等データベース 徳田発電所本館(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00004317
いばらきの文化財 徳田発電所本館(茨城県教育委員会)
https://kyoiku.pref.ibaraki.jp/bunkazai/bunkazai-registered-6349/
指定・登録文化財一覧(常陸太田市)
https://www.city.hitachiota.ibaraki.jp/kyoiku-bunka-sports/kyoiku-iinkai/bunka-geijutsu/bunkazai/page003374.html
有形文化財(東京発電株式会社)
https://tokyohatsuden.co.jp/csr/cultural_property/
選奨土木遺産 里川水系水力発電所群(土木学会関東支部)
https://www.jsce.or.jp/branch/kanto/04_isan/h29/h29_4.html
里美地区公共交通マップ(常陸太田市)
https://www.city.hitachiota.ibaraki.jp/data/doc/1784094668_doc_40_0.pdf

最終更新日: 2026.09.07