製糸業を営んだ家の店舗兼住居

大森家住宅主屋は、茨城県桜川市真壁町桜井にある大正初期の店舗兼住居で、2004年に国の登録有形文化財に登録された建物である。文化庁の国指定文化財等データベースは、製糸業を営む家の店舗兼住居と記し、建築年代を1912年から1925年の間としている。

建物は前後2つの部分がつながった形をとる。表通りに面して建つのが寄棟造平入の2階建で、その奥に同じく寄棟造の平屋が住居部分として接続する。全体で建築面積は111平方メートル、木造・瓦葺である。

1階は南北で性格が分かれる。南半は前面の下屋とあわせて広い土間とし、北半には座敷を並べる。2階は田の字型で、中央で間仕切りが交差し4室が取られる。町家の2階らしい、四つ割りの均質な間取りである。

真壁は中世の城下に始まり、近世には木綿を東北方面へ送る在郷町として栄えた。桜川市の解説によれば、明治に入ると製糸業が興隆し、大正期に筑波鉄道が開通して真壁駅が開業すると、出し桁の目立つ2階建の町家が町に広がっていく。大森家住宅主屋は、ちょうどその転換点に建てられている。

登録有形文化財に登録された理由

大森家住宅主屋の登録番号は08-0120で、登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。この基準を建物に当てて読むと、まず屋根の高さに行き着く。表側は2階建だが階高を低く抑えてあり、棟が低い位置に収まって、軒が通りに近い高さで流れる。同じ敷地にもっと背の高い建物が建てば、桜井の通りに続く屋根の連なりはそこで切れてしまう。

もう一つは平面である。通りに店舗を出し、その奥へ住居を延ばす断面は町家の基本形だが、ここでは働く部分がそのまま残っている。荷と人が行き来する深い土間、静かな北側にまとめた座敷、物置ではなく居室として使われた2階。この年代の建物は茨城県内に少なくないが、通りから奥まで一続きに読める例はそう多くない。

登録と指定は、文化財保護法の中で別の制度である。この建物は登録有形文化財であり、所有者は日常の使い方を自分で決められ、大きく改変するときに国へ届け出る。住み続けている家に向く仕組みで、真壁の多くの建物がこの制度に入ったのもそのためだ。桜川市が登録制度の活用を本格的に始めたのは1999年で、数年のうちに100棟を超える建物が登録されている。

通りから見るべきところ

大森家住宅主屋を見るときは、まず道の向こう側まで下がってほしい。目に入るのは2つの屋根である。どちらも寄棟造なので、真壁の中心部に並ぶ蔵のような鋭い妻面は現れず、四方に緩い勾配が下りる。奥の屋根は表の屋根より一段低い。斜めから見ると、その段差が店舗と住居の継ぎ目にあたることが分かる。

次に高さを見る。この時期の在郷町の町家は、2階を高く持ち上げ、軒下に太い出桁を張り出して構えを誇ることが多い。この家はそれをしない。2階の窓は軒のすぐ下に収まり、壁面は静かである。

表構えは主屋だけで終わらない。南に接して大森家住宅長屋門が建ち、さらにその南に大森家住宅石蔵が続く。いずれも同じ日に、それぞれ独立した登録を受けている。北から南へ、住居・門・蔵と読んでいくと、通りに沿った一つの壁面になる。主屋だけを見て帰るのは、三分の一だけを見ることになる。

大森家住宅主屋の見学とアクセス

大森家住宅主屋は現に人が住む個人の住宅であり、内部は公開されていない。桜川市が配布する真壁の登録文化財マップは、ゆっくり歩きながら外観を楽しむこと、敷地や建物への立ち入りは遠慮することを求めている。拝観料も受付もないのは、入る場所がないからである。ここまで書いてきたことは、すべて公道から見て取れる。

撮影も同じ線引きになる。公道から外観を撮るのは差し支えないが、そのために敷地へ入ることはできない。人が暮らしている家であることを忘れずにいたい。

公共交通で行くなら、JR水戸線の岩瀬駅から桜川市バス「ヤマザクラGO」の真壁・筑波山口方面に乗る。所要はおよそ20分で、桜井にバス停がある。真壁の旧市街、御陣屋のあたりからは北へ1キロほど、徒歩15分ほどの距離である。桜川市の散策マップは、この一帯を中心部の周回に20分を足す「桜井コース」として案内している。車の場合は真壁中心部の駐車場に置いて歩くのがよい。大森家住宅主屋の前の道は狭く、駐車できる場所はない。

訪ねる前に一つ知っておきたいことがある。この家が建つ桜井は、真壁の町なかを覆う17.6ヘクタールの重要伝統的建造物群保存地区の外側にあたる。案内表示の整った中心部のコースからは外れており、訪れる人はぐっと少ない。平日の午前なら、通りに人影がないことも珍しくない。

Q&A

Q大森家住宅主屋の内部は見学できますか。
Aできません。個人の住宅として使われており、内部は非公開です。桜川市は公道から外観を見学し、敷地や建物には立ち入らないよう求めています。入る場所がないため、拝観料や公開時間の設定もありません。
Q大森家住宅主屋へは公共交通でどう行きますか。
AJR水戸線の岩瀬駅から桜川市バス「ヤマザクラGO」の真壁方面に乗り、およそ20分の桜井バス停で降ります。真壁の中心部からは北へ1キロほど、徒歩15分ほどで着きます。
Q大森家住宅主屋はいつ建てられ、いつ登録されましたか。
A文化庁のデータベースは年代を大正初期、1912年から1925年の間としています。登録有形文化財への登録は2004年(平成16年)で、登録番号は08-0120です。
Q大森家住宅主屋は真壁の伝統的建造物群保存地区の中にありますか。
A外側です。17.6ヘクタールの保存地区は真壁町真壁を範囲としており、この建物はその北側の桜井にあります。桜川市の散策マップでも、中心部とは別の「桜井コース」として案内されています。
Q大森家住宅主屋は真壁中心部の見世蔵とどこが違いますか。
A中心部の通りに並ぶのは、防火と見せることを兼ねた厚い塗屋造・土蔵造の見世蔵です。こちらは寄棟造の屋根に階高を抑えた木造の店舗兼住居で、製糸業を営む家が住み、商うために建てた建物です。

基本情報

名称大森家住宅主屋(おおもりけじゅうたくしゅおく)
所在地茨城県桜川市真壁町桜井字東169-1
指定区分登録有形文化財(建造物) 登録番号08-0120
指定年2004.3.2登録(平成16年)
員数1棟
寸法建築面積111平方メートル、木造2階建、瓦葺
所有者個人所有。所有者名は国のデータベースに公表されていない
公開状況公道からの外観見学のみ。内部非公開、敷地への立ち入り不可

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース 大森家住宅主屋
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00003947
桜川市 桜川市真壁伝統的建造物群保存地区
https://www.city.sakuragawa.lg.jp/education/bunkazai/city_bunkazai/kuni_bunkazai/page003423.html
桜川市 真壁を歩こう(登録文化財マップ)
https://www.city.sakuragawa.lg.jp/data/doc/1487569963_doc_23_1.pdf
茨城県教育委員会 桜川市真壁伝統的建造物群保存地区
https://kyoiku.pref.ibaraki.jp/bunkazai/bunkazai-8557/
桜川市 桜川市バス「ヤマザクラGO」の運行について
https://www.city.sakuragawa.lg.jp/kurashi/koutsu/page005762.html

最終更新日: 2026.09.05