下は石、上は漆喰
大森家住宅石蔵は、茨城県桜川市真壁町桜井にある1917年の蔵で、2004年に国の登録有形文化財に登録された。文化庁の国指定文化財等データベースは年代を大正6年と特定しており、すぐ北に並ぶ主屋・長屋門より数年遅れて建てられたことが分かる。
2階建で、構造は上下で異なる。1階は石造、2階は木造で、外まわりは土蔵造の厚い塗り壁に仕上げる。この上下の違いを、外観では隠さずそのまま見せている。下半には花崗岩の石壁が現れ、その上の2階は柱も梁も出さない漆喰の大壁となる。軒のすぐ下には、壁を一周する太い漆喰の帯が回る。鉢巻と呼ぶ。
屋根は切妻造の桟瓦葺で、建物は妻入、平側ではなく妻側から入る。規模は桁行4間・梁間3間、建築面積は76平方メートルと記録されている。
この蔵が登録された理由
大森家住宅石蔵の登録番号は08-0122、登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。文化庁の解説は、特徴ある構造と外観をもつ上質な蔵であり、屋敷の表構えに欠かせない建物だと評価している。
この評価の両側を支えているのが石である。真壁は花崗岩の産地にあたる。国の伝統的工芸品である真壁石燈籠について、東京都産業労働局は、真壁地方では質の良い花崗岩が採れ、室町時代の末から石を加工してきたと記している。この壁の石材がどの丁場から出たものかは、登録の記録に書かれていない。分かるのは、多くの蔵がなお土と漆喰だけで建てられていた時期に、この家が1階に石を選んだということである。
石蔵はやがて、この町を代表する建物の型になっていく。1990年代、真壁の町並みを守ろうとする住民の活動が始まったとき、その一つとして石蔵でギターコンサートが開かれた。建物そのものを使って、建物を残す理由を示したことになる。桜川市が登録制度の活用を本格化させたのは1999年で、大森家住宅石蔵が登録有形文化財となったのは、その流れの中でのことだった。
妻面の読み方
大森家住宅石蔵は妻入なので、道から向き合うのは、長方形の上に三角形が載った形になる。この面を、順を追って見ていきたい。
まず下から。花崗岩は角を落とした石を段に積んでおり、目地は道の向こう側からでも追える太さがある。石ごとの違いも見てほしい。同じ速さで風化する面は一つもないので、壁は単色ではなく灰色の濃淡が入り混じった面になる。写真には写りにくく、立ち止まって見る値打ちがある。
次に上へ。石から漆喰への切り替わりは床の高さで起き、その境に蛇腹も持ち出しもない。石が終わり、白が始まる。その上では鉢巻の帯が瓦のすぐ下に細い影を落とし、妻面は入口の真上で頂点を結ぶ。
最後に振り返って、道を北へ見る。石蔵は、登録された3棟の並びの南端を押さえている。次が長屋門、その先が主屋である。3棟のうちで最も重く見えるのがこの蔵で、住むためでも通り抜けるためでもなく、物を納めるために建てられた唯一の建物でもある。
どこから見るか、どう行くか
大森家住宅石蔵は表通りに沿って建ち、その道から見る建物である。公開はされていない。個人の所有で内部は非公開、桜川市も真壁の登録文化財については、通りから外観を見ること、敷地に立ち入らないことを求めている。料金も受付も、確認すべき公開時間もない。公道からの撮影に問題はないが、そのために中へ入ることはできない。
見る位置にはこつがある。道の反対側に渡り、少し北へ寄ると、妻面と側面が同じ画面に入る。正面から真っ直ぐに見ると建物は壁のように平たくなり、石積みの段の奥行きが消えてしまう。
公共交通ではJR水戸線の岩瀬駅まで行き、桜川市バス「ヤマザクラGO」の真壁・筑波山口方面に乗り換える。桜井までおよそ20分。真壁の旧市街から歩く場合は、北へ1キロを15分ほど見ておく。市の散策マップは、この区間を中心部の周回に20分ほどを足す「桜井コース」として組み込んでいる。車なら真壁中心部に置いていきたい。この道は狭く、停める余地がない。
桜井は、真壁の中心部を覆う17.6ヘクタールの重要伝統的建造物群保存地区の外側にある。蔵の前に解説板はなく、道で人に会うことも多くない。
Q&A
- 大森家住宅石蔵は何でできているのですか。
- 1階は角を落とした花崗岩を積んだ石造、2階は木造で、外側を土蔵造の厚い塗り壁に仕上げています。屋根は切妻造の桟瓦葺で、平側ではなく妻側から入る妻入の建物です。
- 大森家住宅石蔵の中に入ることはできますか。
- できません。個人の所有で内部は公開されていません。桜川市は真壁の登録文化財について、通りから外観を見学し、敷地には立ち入らないよう求めています。外観の見学は無料で、時間の制限もありません。
- 大森家住宅石蔵はいつ建てられましたか。
- 文化庁のデータベースによれば大正6年、1917年です。年代を大正初期とされる隣の主屋や長屋門より、やや遅れて建てられたことになります。登録有形文化財への登録は2004年(平成16年)、番号は08-0122です。
- 大森家住宅石蔵の規模はどのくらいですか。
- 登録の記録では桁行4間・梁間3間、2階建で、建築面積は76平方メートルです。登録された大森家の3棟のなかでは、主屋に次ぐ大きさにあたります。
- 大森家住宅石蔵へはどう行けばよいですか。
- JR水戸線の岩瀬駅から桜川市バス「ヤマザクラGO」の真壁方面に乗り、およそ20分の桜井で降ります。真壁の中心部から北へ歩く場合は、1キロを15分ほどで進みます。
基本情報
| 名称 | 大森家住宅石蔵(おおもりけじゅうたくいしぐら) |
|---|---|
| 所在地 | 茨城県桜川市真壁町桜井字東169-1 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) 登録番号08-0122 |
| 指定年 | 2004.3.2登録(平成16年) |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 建築面積76平方メートル、石造一部土蔵造2階建、瓦葺、桁行4間・梁間3間 |
| 所有者 | 個人所有。所有者名は国のデータベースに公表されていない |
| 公開状況 | 公道からの外観見学のみ。内部非公開、敷地への立ち入り不可 |
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース 大森家住宅石蔵
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00003949
- 桜川市 桜川市真壁伝統的建造物群保存地区
- https://www.city.sakuragawa.lg.jp/education/bunkazai/city_bunkazai/kuni_bunkazai/page003423.html
- 桜川市 真壁を歩こう(登録文化財マップ)
- https://www.city.sakuragawa.lg.jp/data/doc/1487569963_doc_23_1.pdf
- 東京都産業労働局 東京の伝統工芸品 真壁石燈籠
- https://www.dento-tokyo.metro.tokyo.lg.jp/items/56.html
- 桜川市 桜川市バス「ヤマザクラGO」の運行について
- https://www.city.sakuragawa.lg.jp/kurashi/koutsu/page005762.html
最終更新日: 2026.09.05