谷口義衛家住宅長屋門及び主屋とは
谷口義衛家住宅長屋門及び主屋は、茨城県桜川市真壁町桜井にある明治時代初期の長屋門と住居で、平成17年(2005年)7月12日に登録有形文化財となった。登録番号は08-0190。
姓の読みは「たにぐち」ではなく「やぐち」である。文化庁の国指定文化財等データベースはふりがなを「やぐちよしえけじゅうたくながやもんおよびしゅおく」と記す。数百メートル南に建つ別の谷口家の登録文化財も、同じ読みで登録されている。
長屋門は、門の左右に部屋を連ねて一体の構えとしたもので、名主層や武家が屋敷の表側に用いた形式である。ここで登録の対象になっているのは、その長屋門と、背後に増築された居住部を合わせた1棟。建築面積は190平方メートルとされる。
この門はもともとこの敷地に建っていたものではない。近隣の旧雨引村(現在の桜川市域)から解体して運ばれ、明治25年(1892年)頃に桜井へ移築されている。移築にあたっては大きく手が加えられた。門口の右手に下屋庇を差し掛けて店舗風の構えに改め、その背後に住まいの部分を増築したのである。文化庁の分類でこの建物が住宅ではなく産業(3次)に置かれているのは、この店舗としての性格を反映したものだろう。
長屋門部分は桁行10間5尺、約19.7メートル。梁行は2間半、約4.5メートルで、寄棟造・桟瓦葺の平屋建とする。正面に向かって左側の桁行2間半分は物置に充てられている。登録上の建築面積190平方メートルは長屋門だけの床面積の倍を超えるので、保護されている範囲のおよそ半分は背後の居住部ということになる。
登録有形文化財としての価値
谷口義衛家住宅長屋門及び主屋の登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。建物単体の造形の完成度ではなく、その建物が面する通りに対して果たしている役割を見る基準だ。
真壁で登録有形文化財制度の活用が本格化したのは平成11年(1999年)からで、そこから数年のうちに町内でおよそ100棟が登録された。谷口義衛家の2棟は平成17年(2005年)7月12日付、桜井の他の谷口家の建物と同じ日の登録である。
平成22年(2010年)には、真壁町真壁の約17.6ヘクタールが重要伝統的建造物群保存地区に選定された。桜井はその北側に隣接する区域で、選定範囲の外にある。修理や意匠の規制がかかる保存地区とは条件が違い、町の北の入口にあたるこの一帯の景観は、登録という枠組みだけで支えられている。
この建物の特異さは、性格の違う2つの建築類型がひとつの屋根の下で出会っているところにある。長屋門は屋敷構えの建築で、家の格を通りに向かって示すためのものだ。店舗は商いのための建築である。その両方を、しかも他村から運んできた中古の門を使って接合した。真壁が商業と製糸を軸に組み替わっていった時期の産物といえる。桜川市が発行する登録文化財マップは、この谷口義衛家住宅を「明治中期の珍しい住宅建築」と紹介している。
道路から見るべきところ
まず門口の軒を見上げてほしい。3段の出桁造である。出桁は、桁を一段ずつ外へ送り出して軒を持ち出す手法で、壁の面より前へ屋根を伸ばすために使う。このあたりでは2段が普通だ。3段にしていることを、文化庁の解説文は谷口義衛家住宅長屋門及び主屋の特徴として明記している。
次に、少し後ろへ下がって長さを測る目で眺めたい。平屋の建物で20メートル近い棟が一続きになるのは、かなりの間口である。屋根が寄棟なので妻壁で切れることがなく、桟瓦の葺き足がそのまま端まで走っていく。
正面は意図的に不均等につくられている。門口は中央ではない。その右側では下屋の屋根が一段低く前へ出ていて、店の帳場が通りを向いていた位置がわかる。左側の壁は閉じたままで、その奥が物置である。外へ開く必要がなかったからだ。
背面側の取り合いも見ておきたい。長屋門と明治25年(1892年)頃の増築部が接するところで屋根の勾配が変わる。道路から斜めに見ると確認できて、この建物が二段構えの履歴を持つことの、いちばんわかりやすい証拠になっている。
谷口義衛家住宅長屋門及び主屋の見学方法とアクセス
個人の住宅である。内部の見学はできず、公開時間も拝観料も設定されていない。桜川市は登録文化財について、外からの観覧をお願いし、建物や敷地への立ち入りは遠慮してほしいと呼びかけている。公道からの撮影に支障はないが、住人や駐車中の車が写り込まないよう画角を選ぶ程度の配慮はしたい。
鉄道ならJR水戸線の岩瀬駅が最寄りで、タクシーで約20分。つくば駅からはつくば市バスで筑波山口まで約50分、そこで桜川市バスに乗り換えてさらに約20分かかる。車では北関東自動車道の桜川筑西インターチェンジから約20分、土浦北インターチェンジからは国道125号と県道41号を経由して約50分である。
駐車場は真壁高上町駐車場(桜川市真壁町真壁279-1)で、普通車65台分。この駐車場は保存地区の中心にあるため、谷口義衛家住宅長屋門及び主屋へ行くには旧市街を北へ抜けて歩くことになる。桜川市の登録文化財マップでは、桜井は御陣屋前を1周する本コース(休み休み歩いておよそ70分)に約20分を足す寄り道として扱われている。
季節でいえば冬がよい。道沿いの木が葉を落とし、日が低く回るので、3段の出桁が落とす影がはっきり出る。真夏の正午にはこの影がまったく消えてしまう。
Q&A
- 谷口義衛家住宅長屋門及び主屋の内部は見学できますか。拝観料はかかりますか。
- 内部の見学はできません。現在も個人の住宅として使われており、公開されていないためです。入る場所がないので拝観料もありません。桜川市は、登録文化財は道路から外観をご覧いただき、敷地には立ち入らないようお願いしています。
- 谷口義衛家住宅長屋門及び主屋へは岩瀬駅からどう行けばよいですか。
- 岩瀬駅はJR水戸線の駅で、そこからタクシーで真壁まで約20分です。所在地は桜川市真壁町桜井1で、旧市街の北側にあたります。車の場合は真壁高上町駐車場に停め、北へ歩くとたどり着けます。
- 谷口義衛家住宅長屋門及び主屋の「谷口」はなぜ「やぐち」と読むのですか。
- その家がそう名乗っているからで、文化庁の国指定文化財等データベースもふりがなを「やぐち」と記載しています。谷口は全国的には「たにぐち」が多い姓ですが、真壁のこの地区で登録されている谷口家の建物は、いずれも同じ読みです。
- 谷口義衛家住宅長屋門及び主屋は、ほかの長屋門と何が違うのですか。
- ふたつあります。ひとつは、この場所で新築されたのではなく、旧雨引村から明治25年(1892年)頃に移築されたものであること。もうひとつは、移築の際に門口の右側を下屋庇付きの店舗風に改造していることです。門口の軒を3段の出桁造とする点は、文化庁の解説文が特徴として挙げています。
- 谷口義衛家住宅長屋門及び主屋は真壁の重要伝統的建造物群保存地区の中にありますか。
- 保存地区の外です。平成22年(2010年)に選定された地区は真壁町真壁の約17.6ヘクタールで、桜井はその北の縁より先にあります。この建物は保存地区の一部としてではなく、登録文化財として保護されています。
基本データ
| 名称 | 谷口義衛家住宅長屋門及び主屋 |
|---|---|
| 所在地 | 茨城県桜川市真壁町桜井1 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) |
| 指定年 | 平成17年(2005年)7月12日登録 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 建築面積190平方メートル。長屋門部分は桁行10間5尺(約19.7メートル)、梁行2間半(約4.5メートル) |
| 所有者 | 個人(文化庁の国指定文化財等データベースに所有者名の記載なし) |
| 公開状況 | 非公開。道路からの外観のみ見学可 |
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース 谷口義衛家住宅長屋門及び主屋
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00004705
- 文化遺産オンライン 谷口義衛家住宅長屋門及び主屋
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/151315
- 桜川市 桜川市真壁伝統的建造物群保存地区
- https://www.city.sakuragawa.lg.jp/education/bunkazai/city_bunkazai/kuni_bunkazai/page003423.html
- 桜川市 真壁の町並み
- https://www.city.sakuragawa.lg.jp/tourism_guide/learn/page000455.html
- 桜川市 真壁を歩こう(登録文化財マップ)
- https://www.city.sakuragawa.lg.jp/data/doc/1487569963_doc_23_1.pdf
最終更新日: 2026.09.09