海沿いの砂地に残る江戸後期の民家

照沼家住宅主屋は、茨城県那珂郡東海村大字照沼字寺沼にある江戸後期の茅葺民家で、平成19年(2007年)7月31日に登録有形文化財(建造物)となった。文化庁の国指定文化財等データベースは建設年代を江戸後期とし、西暦では1751年から1829年の間としている。

照沼は東海村の東寄り、太平洋の砂丘の内側に広がる平坦な土地である。建物は敷地の隅ではなく中央に建つ。それだけで、この家が持っていた地所の広さが伝わってくる。登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」で、解説文は照沼家住宅主屋を「当地の豪農住宅の特徴をよく留める」とまとめている。

木造平屋建、茅葺、建築面積は250平方メートル。平面は曲り屋の形式をとり、主屋から直角に棟が折れて張り出す。

この家の主役は土間である

古い民家の紹介は、たいてい座敷から始まる。この建物については、解説文が土間から書き起こしている。そしてその判断は正しい。

土間は桁行7、梁間4間半。茨城の農家としては破格の広さである。これだけの面積を無造作に架けることはできない。梁組を支えるのは太い棟持柱で、床から棟までまっすぐ立ち上がり、隠されることなく見えている。柱の間に立つと、この建物がどう組み上げられているかがそのまま読み取れる。磨き上げられた座敷の天井が覆い隠そうとするのは、まさにこの部分である。

床上部は7室からなる。東端には数寄屋造風の造作でまとめた書院があり、隣り合う骨太の架構とは対照的に、軽く、抑えた表情をしている。座敷構も備える。一つの屋根の下で、納屋のような作業空間と茶の湯の影響を受けた客間が隣り合う。照沼家住宅主屋の見どころは、この落差にある。

茅葺の屋根は、保存されて動かないものではない。東海村は令和5年度(2023年度)に、照沼家住宅主屋の茅葺屋根の葺替に対して1,971,000円の保護管理費補助を支出している。この種の建物を建てつづけさせているのは、こうした周期的な出費である。

個人の住宅であること

照沼家住宅主屋は個人の所有で、いまも住まいとして使われている。一般公開はされておらず、開館時間も拝観の受付も見学者用の駐車場もない。内部を見る手立ては用意されていない。東海村の一覧も、所有者を「個人」とだけ記す。

これは迂回すべき障害ではなく、そのまま守るべき条件である。敷地は誰かの家であり、登録によって所有者に公開の義務が生じるわけでもない。敷地に立ち入らない、塀越しに撮らない、呼び鈴を押さない。登録は招待状ではない。

代わりになる場所はあり、しかもよくできている。村松768番地38の東海村歴史と未来の交流館では、常設展示のうち村人の暮らしを扱う章に、照沼家住宅主屋の模型が置かれている。入館料は無料。開館時間は火曜日から金曜日が午前9時から午後7時まで、土曜日・日曜日・祝日は午前9時から午後5時まで。休館日は月曜日、祝日の翌平日、および12月29日から1月3日まで。展示解説はスマートフォンの無料アプリで日本語と英語に対応し、館内では無料Wi-Fiが使える。

同館は照沼家に伝わった江戸時代の古文書の整理も進めている。まとまった分量が残っており、令和5年度には春季企画展の題材にもなった。建物と対をなす紙の記録で、記録を作り、それを保管しつづけられるだけの地位が地域のなかにあったことを示している。

照沼はJR常磐線の東海駅から南東へおよそ6キロメートル、車で15分ほどの位置にある。村内のバスは本数が少ない。なお、令和5年5月時点の村の一覧では、東海村で国の登録有形文化財となっている建造物はこの1棟だけである。

Q&A

Q照沼家住宅主屋は見学できますか。
Aできません。現在も住まいとして使われている個人所有の建物で、開館時間も拝観の受付も見学者用の駐車場もありません。敷地に立ち入ったり塀越しに撮影したりしないでください。建物の模型は東海村歴史と未来の交流館で見ることができ、入館は無料です。
Q照沼家住宅主屋はどのような建物ですか。
A木造平屋建、茅葺、建築面積250平方メートルの民家で、平面は曲り屋の形式です。土間は桁行7間、梁間4間半と広く、床上部は7室からなります。
Q照沼家住宅主屋はいつ建てられたのですか。
A文化庁は江戸後期とし、西暦では1751年から1829年の範囲を示しています。
Q照沼家住宅主屋はなぜ登録有形文化財になったのですか。
A2007年に「国土の歴史的景観に寄与しているもの」という登録基準で登録されました。並外れて広い土間、梁組を支える太い棟持柱、東側の数寄屋風の書院などが評価されています。
Q照沼家住宅主屋はどこにありますか。最寄り駅からどのくらいですか。
A茨城県那珂郡東海村の照沼地区にあり、JR常磐線の東海駅から南東へおよそ6キロメートル、車で15分ほどです。ただし建物自体は見学できません。

基本情報

名称照沼家住宅主屋(てるぬまけじゅうたくおもや)
所在地茨城県那珂郡東海村大字照沼字寺沼23
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年平成19年(2007年)7月31日登録
員数1棟
寸法木造平屋建、茅葺、建築面積250平方メートル
所有者個人
公開状況非公開。模型を東海村歴史と未来の交流館で公開

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース「照沼家住宅主屋」
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00006300
文化遺産オンライン「照沼家住宅主屋」
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/186203
茨城県教育委員会 いばらきの文化財「照沼家住宅主屋」
https://kyoiku.pref.ibaraki.jp/bunkazai/bunkazai-registered-6074/
東海村歴史と未来の交流館 年報 令和5年度
https://www.vill.tokai.ibaraki.jp/material/files/group/24/R5nendonenpou.pdf
東海村「東海村歴史と未来の交流館 施設案内」
https://www.vill.tokai.ibaraki.jp/tokaivillagemuseum/annai/10245.html

最終更新日: 2026.09.09