名を持つ茶室が集う一棟

聖興寺の東側、客殿と中庭を挟んだ位置に、茶事のためだけに設けられた瓦葺の建物が建つ。単一の茶室ではなく、それぞれ名を持つ複数の室をひとつの入母屋造桟瓦葺の屋根の下に集めた、小さな複合体である。

室は寥々庵・翠光軒・暢音堂と称し、茶室から広めの座敷まで性格を異にする。これらを水屋や土縁が取り巻き、東北隅には待合や雪隠を付す。茶の集いに要る設えがひと通り整えられている。

造形の規範としての価値

この建物は平成23年(2011)、「造形の規範となっているもの」の基準で国の登録有形文化財となった。この基準は質の高い作例に適用されるもので、ここでは指物の丁寧さと材の選びを指している。

寥々庵は二畳台目、茶で好まれる小間の形式である。トコ柱には磨丸太を立て、框には竹を用いるなど、小さな判断のひとつひとつが茶室全体の美意識を担う。総体として、大正期の練れた近代和風建築の一例といえる。

地方寺院に息づく茶の文化

地方の寺院がこれほどの茶の複合を専用に構えていること自体が注目に値し、抑制と季節を尊んだ俳人ゆかりの聖興寺によく似合う。茶室は追善の庭ではなく、日常の営みの側に位置する。

そのため内部は通常公開されない。茶に惹かれた人は、西側の追善区域にある草風庵を見るとよい。千代尼の俳号を冠した茅葺の草庵風茶室で、ここの磨かれた室に対する素朴な対をなす。

Q&A

Qこれは一室の茶室ですか、複数ですか。
A寥々庵・翠光軒・暢音堂などの名を持つ複数の室からなる小さな複合体で、水屋や待合も備えます。
Qいつ建てられ、いつ登録されましたか。
A大正7年(1918)に建てられ、平成23年(2011)に国の登録有形文化財となりました。
Q寥々庵の見どころは何ですか。
A二畳台目の小間で、トコ柱に磨丸太、框に竹を用いるなど、洗練された茶室の意匠を示します。
Q内部を見学できますか。
A茶室は寺の日常の区域にあり通常は公開されません。追善区域の草風庵を代わりに見学できます。
Qなぜ寺に茶室があるのですか。
A聖興寺は抑制と季節を尊んだ俳人・千代尼ゆかりの寺で、茶の文化がその伝統に自然に寄り添っています。

基本情報

名称聖興寺茶室
所在地石川県白山市西新町24-1他
指定区分登録有形文化財(建造物)
登録年月日平成23年(2011)1月26日
登録番号17-0212
登録基準造形の規範となっているもの
時代・年代大正7年(1918)
構造及び形式等木造平屋建、瓦葺、建築面積127平方メートル
員数1棟
所有者宗教法人聖興寺
公開状況現役の寺院で内部は通常非公開。千代尼堂・草風庵・遺芳館(拝観料200円)は見学可。

参考文献

Agency for Cultural Affairs National Cultural Properties Database
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00008441
加賀の千代女|白山市公式ホームページ
https://www.city.hakusan.lg.jp/bunka/bunkashinko/1002773/1002775/index.html
聖興寺|うらら白山人(白山市観光サイト)
https://www.urara-hakusanbito.com/spot/detail_1100.html
聖興寺 公式サイト
https://shokoji.jp/

最終更新日: 2026.07.11