屋敷でいちばん小さな門

山田家主屋の西南、客間の近くに、間口半間ほど、およそ一メートルの門が建つ。庭門である。その役目は静かだ。南庭と西側の庭とを仕切る。長屋門の長さや煉瓦煙突の高さを見たあとでは、つい通り過ぎてしまう。立ち止まる者にこそ、この門は応える。

造りは簡素な腕木門で、柱から突き出た腕木が屋根を受ける。左右には低い石積みの塀を従える。この門を並のものから引き上げているのは、その屋根だ。見付幅三十一センチほどの、弓形の大型瓦で葺いている。これほど小さな構築物には思い切った瓦の選択である。

屋敷の多くと異なり、庭門は比較的あとの追加で、昭和初期の建立とされる。酒造建物や古い門よりのちの時代、屋敷が姿を整えてから庭に加えられた、ひとつの仕上げである。

足を止めたい細部

庭門の面白さは、寸法をめぐる教えにある。大きな建物なら、規格外の大型瓦も目に留まらない。間口一メートルの門では、それが決定的な特徴となり、慎ましい門口に思いがけない視覚の重みを与える。作り手は瓦をほとんど署名のように使い、機能的な庭の仕切りを、考え抜かれた意匠の一片へと変えている。

その位置も意味をもつ。庭門は、主屋・長屋門・酒蔵に囲われた庭の西方に立ち、その縁取られた空間のなかの点景として読める。近くの客間からは、これも整えられた眺めの一部であり、庭の西端で視線が落ち着く一点となっている。

登録群のなかの位置

庭門は平成十三年(二〇〇一)十月十二日、主屋や屋敷内の他の建造物とともに、歴史的景観に寄与するものとして登録された。群のなかで最も繊細な一員であり、その登録は、庭を仕上げる小さな所作にいたるまで、屋敷を一体として評価していることを思い起こさせる。

訪れるなら、大きな建物を見たあとで、屋敷の西南に庭門を探したい。弓形の瓦と低い石塀に目を留め、これほど小さな構築物が周囲の建築のなかでいかに存在感を保っているかを確かめたい。

Q&A

Q庭門とは何ですか。
A庭に設けた門です。この門は南庭と西側の庭とを仕切り、主屋の客間近くに建っています。
Qどこが特徴ですか。
A見付幅三十一センチほどの弓形の大型瓦で葺かれている点です。間口一メートルほどの門に、際立った存在感を与えています。
Q腕木門とは何ですか。
A柱から突き出した腕木で屋根を支える門です。組物を用いない、簡素で経済的な門の形式です。
Q他の建物と同じくらい古いのですか。
Aいいえ。庭門はあとの追加で、昭和初期の建立とされ、酒造建物や古い長屋門より新しい建物です。
Qどこを探せばよいですか。
A主屋の西南、周囲の建物に囲まれた庭の西端にあります。

基本情報

名称山田家(旧清酒源氏正宗醸造元)庭門
所在地香川県高松市牟礼町牟礼3186
指定区分登録有形文化財(建造物)
登録年月日2001年(平成13)10月12日/登録番号 37-0081
時代昭和初期
構造木造、瓦葺、間口1.1m、石造塀付、1棟
所在主屋西南、庭園の西方

References

文化庁 国指定文化財等データベース — 山田家(旧清酒源氏正宗醸造元)庭門
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00002465
文化遺産オンライン — 山田家(旧清酒源氏正宗醸造元)庭門
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/149075
うどん本陣 山田家 — 公式サイト
https://www.yamada-ya.com/
うどん県旅ネット(香川県観光協会)— うどん本陣 山田家
https://www.my-kagawa.jp/udon/521/

最終更新日: 2026.07.05