疫神を鎮める紫野の社
今宮神社は、京都市北区紫野の船岡山の北にある神社で、長保3年(1001年)の創祀と伝わり、境内と御旅所の建造物32件が平成30年(2018年)3月27日に国の登録有形文化財に登録された。本社には大己貴命・事代主命・奇稲田姫命の三柱を祀り、境内北端の疫社(疫神社)には素盞嗚尊を祀る。
神社の説明では、この地には平安京ができる前から疫神を祀る社があったという。正暦5年(994年)6月、都に広がった疫病を鎮めるため、疫神を2基の神輿に移して船岡山に安置し、御霊会を営んだ。これが紫野御霊会で、今宮祭の起源とされる。長保3年、ふたたび紫野で御霊会が修され、新たに設けた3棟の神殿とともに「今宮社」と名付けられた。神社はこの年を創祀としている。
中世には祭礼も社殿も衰えたが、江戸時代に入って、西陣の生まれで徳川5代将軍綱吉の生母となった桂昌院が社の再興に力を注いだ。元禄6年(1693年)から翌7年(1694年)にかけて大規模な造営が行われ、今日の社殿配置はおおむねこのとき整った。明治29年(1896年)に本社殿を焼失し、明治35年(1902年)に再建されている。
境内の配置と歩く順序
境内は南北に長い。南正面の中ほどに大正15年(1926年)の楼門が建ち、その左右に東西の廻廊が少し間をあけて並ぶ。楼門をくぐると正面に舞殿形式の拝殿があり、その奥に幣殿・拝所が続いて、境内北端に本殿と疫神社本殿が東西に並ぶ。本殿域の北と東西は築地塀で囲まれている。
東側にはもう一つの入口がある。東参道に向いて構える東門は明治14年(1881年)の薬医門で、南北に築地塀を従える。東門の北には大正期の大きな神輿庫が、境内の北東隅には祭器庫が建つ。手水舎は楼門の北東で北を向き、東門から入る参拝者の動線に合わせて置かれている。
境内の西半分は摂社・末社の区画である。中ほどの西寄りに若宮社が東を向いて建ち、門と透塀が本殿を囲む。その北側には日吉社・大将軍社・八幡社・八社の小社が南から北へ並び、若宮社の裏の小高い場所に地主社、さらに西の石段の上に月読社がある。南西の隅には大きな絵馬舎、南東の隅には宗像社が建つ。
初めて訪れるなら、楼門から入って拝殿・本殿・疫神社の順に北へ進み、西へ回って若宮社と小社の列を見てから、地主社・月読社へ上がり、南へ下って絵馬舎、最後に東門と神輿庫を見て出るとよい。境内はそれほど広くなく、ひととおり歩いても30分ほどで回れる。
登録有形文化財32件
平成30年(2018年)3月27日、今宮神社の境内の建造物28件と御旅所の建造物4件、あわせて32件が国の登録有形文化財に登録された。登録番号は26-530から26-561まで連続する。境内の28件には社殿・門・廻廊のほか、築地塀・透塀や手水舎も含まれる。
年代の幅はおよそ250年に及ぶ。もっとも古いのは桂昌院による元禄造営期の建物群で、拝殿・若宮社本殿・同拝殿・同門及び透塀・手水舎が元禄7年(1694年)、八社と宗像社が同じ頃、大将軍社が元禄8年(1695年)頃とされる。江戸後期には絵馬舎(寛政12年、1800年)、神楽殿(天保10年、1839年)、地主社(天保13年、1842年)が加わった。
明治以降の再建・新築も質が高い。文化庁の答申資料によれば、明治35年(1902年)の本殿と幣殿・拝所・廻廊は伊藤平左衛門の設計施工、明治41年(1908年)頃の疫神社本殿と渡廊・門・廻廊は亀岡末吉の設計である。大正15年(1926年)には楼門と東西の廻廊が建ち、このとき旧神輿庫が境内北東隅へ移されて祭器庫に転用された。
登録基準は、本殿・幣殿・疫神社・楼門まわりの計7件が「造形の規範となっているもの」、それ以外が「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。個々の建物の構造や見どころは、それぞれのページで扱う。
今宮御旅所
今宮神社御旅所は、境内から南東へ約1キロ、上京区の大宮通沿いにある。今宮祭の神幸祭で神輿に乗って出た神々は、還幸祭までのおよそ10日間をここで過ごす。京都市の資料によれば、御旅所は元禄年間に祭礼が再興された際、近世の洛中の最北端にあたる西陣のこの地へ移された。
敷地には権殿社・神輿奉安殿・能舞台・鏡の間の4棟が並び、いずれも登録有形文化財である。権殿社と能舞台は天明8年(1788年)の大火で焼けたあと寛政7年(1795年)に再建され、神輿奉安殿は昭和20年(1945年)の建物である。能舞台では昭和40年代まで今宮御旅能が奉納されていた。
祭礼
4月第2日曜日のやすらい祭は、花傘と赤毛・黒毛の鬼が町を練り歩き、春に飛び散る疫神を花傘に誘って疫社へ送り込む祭で、京の三奇祭の一つに数えられる。境内では鬼たちが輪になってやすらい踊りを奉納する。
今宮祭は5月5日の神幸祭に始まり、5月第2または第3日曜日の還幸祭で神々が本社へ戻る。神幸祭では神輿が西陣一帯を巡り、御旅所に入る。秋は10月9日が例祭である。祭礼の日は境内も周辺も混み合うので、建物をゆっくり見たいなら平日の午前がよい。
参拝時間とアクセス
今宮神社の境内は自由に参拝でき、拝観料はかからない。社務所の受付は午前9時から午後5時までである(2026年10月確認)。社殿の内部は公開されておらず、建物はいずれも外から見学する。境内での建物の撮影を禁じる案内は見当たらないが、祭典や祈祷の最中は参拝者の妨げにならないよう配慮したい。
市バス46系統で「今宮神社前」下車すぐ。北大路駅(地下鉄烏丸線)方面から1・12・204・205・206系統などで「船岡山」へ行く場合は、下車後北へ徒歩約7分である。北大路駅から歩くと西へ約20分かかる。神社の東側に有料駐車場(44台)があるが、境内への車の乗り入れはできず、祭礼の時期は周辺が混雑する。
御旅所へは市バス「堀川鞍馬口」から徒歩約4分。所在地は今宮神社が京都市北区紫野今宮町21、御旅所が京都市上京区大宮通今宮御旅所前西入若宮横町136で、問い合わせ先はどちらも今宮神社(075-491-0082)である。
参考文献
- 国指定文化財等データベース(文化庁)— 今宮神社本殿
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00012182
- 国指定文化財等データベース(文化庁)— 今宮神社疫神社本殿
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00012184
- 国指定文化財等データベース(文化庁)— 今宮神社楼門
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00012205
- 国指定文化財等データベース(文化庁)— 今宮神社御旅所権殿社
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00012210
- 文化庁 — 平成29年11月17日 登録有形文化財(建造物)の登録について(答申資料)
- https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/yukei_kenzobutsu/pdf/r1392281_21.pdf
- 京都市 — 今宮神社御旅所(歴史的風致の紹介)
- https://www.city.kyoto.lg.jp/tokei/cmsfiles/contents/0000305/305675/a24otabisho.pdf
- 京都十六社朱印めぐり — 今宮神社
- https://kyoto-16sha.jp/imamiyajinja/
- 京都観光Navi(京都市公式)— 今宮神社
- https://ja.kyoto.travel/tourism/single01.php?category_id=7&tourism_id=496
最終更新日: 2026.10.01
基本情報
| 名称 | 今宮神社 |
|---|---|
| 所在地 | 京都府京都市北区紫野今宮町21 |
| 所有者 | 宗教法人 今宮神社 |
| 指定 | 登録有形文化財 32件 |
| 座標 | 35.04560, 135.74200 |