仁和寺黒書院とは ― 宸殿の西に並ぶ奥向きの書院

仁和寺黒書院(にんなじくろしょいん)は、京都市右京区御室大内の仁和寺御殿で宸殿の西側に南を向いて建つ明治43年(1910年)の書院建築で、平成23年(2011年)10月28日に登録有形文化財に登録された。

仁和寺の御殿は明治20年(1887年)の火災で主な建物を失い、明治から大正にかけて順に建て直された。仁和寺黒書院はその過程で、寺の案内によれば旧安井門跡(蓮華光院)の寝殿を移して改造した建物である。寺は設計者を安田時秀と伝えている。

竣工の年は資料の間で1年ずれる。文化庁のデータベースは明治43年(1910年)とし、寺の多言語解説も移築を1910年とする一方、寺の公式サイトの境内案内は明治42年(1909年)竣工と記す。本稿は文化庁の記載に従った。

登録の理由 ― 方丈型の六間取と舞良戸の外まわり

登録基準は「造形の規範となっているもの」。規模は桁行15.5メートル、梁間11.7メートル、建築面積181平方メートルで、入母屋造桟瓦葺とする。宸殿と白書院の両方とは、檜皮葺の屋根をかけた渡廊下で結ばれている。

平面は禅宗寺院の方丈に見られる六間取で、前後二列に三室ずつを並べる。奥の西の部屋に床の間などの座敷飾を備え、ここが最も格の高い部屋になる。寺の多言語解説は、この北西隅の部屋に特別な組天井があることにも触れている。

外まわりには舞良戸を建て込む。細い桟を横に密に渡した板戸で、閉めると壁のように面がそろう。文化庁の解説は、これが内向きの書院らしい落ち着いた外観をつくっていると評している。広縁を吹き放しにした白書院と見比べると、同じ御殿の中で表と奥の性格が建具で描き分けられていることが分かる。

寺の解説はまた、他の建物から持ち込んだ要素を組み合わせたため六室の造りが少しずつ異なるものの、全体としては宸殿や白書院と同じ様式にまとまり、渡廊下の連続が儀式の空間としての一体性を示していると説明している。

仁和寺黒書院の見どころ ― 堂本印象の襖絵と部屋の名

室内の襖絵は、昭和12年(1937年)に日本画家の堂本印象が描いた。竹の間、秋草の間など、印象が付けた画題がそのまま部屋の名前として使われている。部屋の名を確かめてから襖を見ると、絵が空間の性格を決めていることが実感できる。

同じ昭和12年(1937年)には、白書院にも福永晴帆の松の襖絵が入った。順路で二つの書院を続けて歩くと、同じ年に描かれた二人の画家の筆致の違いを比べられる。

渡廊下にも目を向けたい。仁和寺黒書院と宸殿、白書院を結ぶ廊下は檜皮葺の屋根をもち、瓦葺の書院本体とは素材が違う。廊下から黒書院を振り返ると、舞良戸の水平な線が並ぶ静かな外観がよく分かる。

仁和寺黒書院を見学するには

仁和寺黒書院は仁和寺御所庭園の拝観順路に含まれ、宸殿から霊明殿を回ったあと、順路の終わり近くで入る。渡廊下から外観を振り返れるのも、この順路の上である。

撮影について寺は、境内での個人的な撮影は認めているが、御堂の内部での撮影は断っている。襖絵を撮ってよいかは現地の掲示で確かめたい。

拝観の時間と料金、境内への行き方は仁和寺のページにまとめてある。

Q&A

Q仁和寺黒書院はいつ建てられ、いつ登録有形文化財になりましたか。
A文化庁のデータベースは明治43年(1910年)の建築としています。寺の公式サイトは明治42年(1909年)竣工と記しており、資料の間で1年の差があります。登録有形文化財への登録は平成23年(2011年)10月28日です。
Q仁和寺黒書院はもともとどこにあった建物ですか。
A寺の案内によれば、旧安井門跡(蓮華光院)の寝殿を移し、改造した建物です。寺は設計者を安田時秀と伝えています。
Q仁和寺黒書院の襖絵は誰が描きましたか。
A日本画家の堂本印象が昭和12年(1937年)に描きました。竹の間、秋草の間など、印象の付けた画題がそのまま部屋の名前になっています。
Q仁和寺黒書院の間取りはどうなっていますか。
A方丈に見られる六間取で、前後二列に三室ずつを並べています。奥の西の部屋に床の間などの座敷飾を備え、外まわりには舞良戸を建て込んでいます。
Q仁和寺黒書院は見学できますか。
A仁和寺御所庭園の拝観順路に含まれ、宸殿と霊明殿のあとに入ります。御堂の内部での撮影は断られているので、襖絵の撮影は現地の掲示に従ってください。

基本情報

名称仁和寺黒書院(にんなじくろしょいん)
所在地京都府京都市右京区御室大内33-1
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年2011年10月28日登録
員数1棟
寸法桁行15.5メートル、梁間11.7メートル、建築面積181平方メートル(木造平屋建、入母屋造桟瓦葺、渡り廊下付)
所有者宗教法人仁和寺
公開状況仁和寺御所庭園の拝観区域内にあり、拝観時に見学できる(有料)

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース「仁和寺黒書院」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00009041
観光庁 地域観光資源の多言語解説文データベース「黒書院」
https://www.mlit.go.jp/tagengo-db/R1-00369.html
仁和寺「境内のご案内」
https://ninnaji.jp/precincts/
仁和寺「仁和寺について」
https://ninnaji.jp/about_outline/
仁和寺「よくあるご質問」
https://ninnaji.jp/question/

最終更新日: 2026.09.19