方丈とは
方丈は、寺院で住持が居住し、来客を迎える建物である。名は一丈四方の広さに由来するとされるが、実際の方丈はこれよりはるかに大きい。
境内では中心的な位置を占める。徳島県の箸蔵寺中門は明治前期の建築で、「方丈前に東西棟で建つ。切妻造桟瓦葺の一間薬医門で、両脇に袖塀を付ける」と解説されている。方丈の前に門を構えるという配置が、その格式を示している。
平面は六間取が定型になる。前列三室、後列三室を並べ、中央後方に仏間を置く構成である。京都府の仁和寺黒書院は明治43年の建築で、「平面は方丈型六間取で、西奥室に座敷飾を備える。周囲に舞良戸を建て、内向きの書院造らしく落着いた外観になる」と解説されている。
丈室という語も用いられる。新潟県の慈光寺庫裏は宝暦9年の建築で、「上手の本堂側に丈室や書院、下手に韋駄天内陣や土間、典座寮などを配し、正面側を土縁とする」と解説されている。
方丈型六間取の広がり
この平面型は仏堂にも用いられる。愛知県の徳授寺本堂は明治29年の建築で、「内部は方丈型六間取形式で正面に広縁を配し、内陣は来迎壁を設けて須弥壇をおき、小組格天井を張る」と解説されている。同じ愛知県の祥雲寺本堂も「内部は方丈型六間取形式」と記される。
本堂でありながら方丈型と呼ばれるのは、平面の構成が方丈に由来するためである。住持の居住空間として成立した型が、本尊を祀る堂にも転用されている。
住宅にも及ぶ。仁和寺黒書院は寺院の書院でありながら方丈型六間取をとる。記録が平面型を明示するのは、建物の用途と平面が必ずしも一致しないためである。
記事に書くときは、方丈という建物と、方丈型という平面型を区別したい。方丈型六間取と書かれていれば、その建物が方丈であるとは限らない。
参考文献
- 文化庁 文化財の紹介 国宝・重要文化財(建造物)
- https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/yukei_kenzobutsu/kokuho_bunkazai.html
- 国指定文化財等データベース(文化庁)箸蔵寺中門/妻虹梁大瓶束、全面に格天井を張る
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00009068
- 国指定文化財等データベース(文化庁)仁和寺黒書院/周囲に舞良戸を建て、内向きの書院らしく落着いた外観になる
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00009041
- 国指定文化財等データベース(文化庁)慈光寺庫裏/上手の本堂側に丈室や書院、下手に韋駄天内陣や土間、典座寮などを配す
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00009140
- 国指定文化財等データベース(文化庁)徳授寺本堂/内陣は来迎壁を設けて須弥壇をおき、小組格天井を張る
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00009292
最終更新: 2026.09.11