街道に面した商家、赤木家住宅

赤木家住宅は、宮崎県児湯郡都農町の旧豊後街道沿いにある江戸末期の商家で、天保15年(1844年)に完成した主屋と蔵・納屋の3棟が宅地とともに平成16年(2004年)に重要文化財に指定された。

国の指定名称は「赤木家住宅(宮崎県児湯郡都農町)」で、主屋・蔵・納屋の3棟と宅地が指定の範囲になる。万延2年(1861年)に描かれた家相図1枚も附(つけたり)として指定を受けている。

都農は、高鍋の城下と高鍋藩の港であった美々津のほぼ中間にあたり、近世には高鍋藩のもとで在郷町として栄えた。赤木家は18世紀後期には街道の西側、いまの場所に住んでいた商家で、屋号を「万屋(よろずや)」といい、山林業などで財を築いた。

屋敷は街道に東面し、東西に細長い。主屋は前庭を挟んで街道から少し引いて建ち、蔵と納屋は敷地の奥にある。敷地のほぼ中央に井戸、北西の隅には屋敷神の祠がまつられている。町の説明によれば、宅地の面積は1,790.42平方メートル(542坪)である。

本陣を兼ねた民家として評価された赤木家住宅

赤木家は天保8年(1837年)に高鍋藩から本陣の許可を得た。それまで都農で大名や幕府役人の宿所とされていたのは、街道を挟んで東側にあった藩の御仮屋である。許可を受けた赤木家は中門や練塀を整え、翌年から本陣を勤めた。

天保15年(1844年)6月、屋敷は火災の類焼にあう。同じ年の10月に再建が始まり、年内には焼ける前と同じ形式で主屋が建ち上がった。いま見る赤木家住宅の主屋がこれである。本陣の役目は再建後も続き、文久3年(1863年)と元治元年(1864年)には薩摩の島津久光が泊まっている。そのときの板札も残る。

赤木家住宅は平成16年(2004年)12月10日に重要文化財に指定された。文化庁は指定基準のうち「流派的又は地方的特色において顕著なもの」を挙げ、本格的な座敷飾をそなえた接客空間があること、普請の質が全体に高いこと、豊後街道筋に残る本陣の機能を兼ねた民家建築であることを評価している。蔵・納屋と敷地外周の重厚な石垣が、地方における江戸末期の屋敷構えをよく伝えている点も指定理由に含まれる。

都農町はもう一つの点を強調する。許可を受けた町人の本陣は、同じ敷地に別棟を建てて本陣用とするのが通例だった。ところが赤木家住宅では、大名クラスの武士が使う本陣部分と家族の住まいが一つの棟に収まっている。町はこれを全国的にも珍しいとし、高鍋藩主秋月家と赤木家との信頼関係の深さを示すものと説明している。

赤木家住宅の見どころ

主屋

主屋は桁行13.5メートル、梁間14.2メートル。南北棟の切妻造、平入で、四面に庇を付け、屋根は桟瓦葺とする。西面の南端には寄棟造の角屋が張り出し、北面には桁行7.4メートル、梁間5.9メートルの切妻造の突出部が付いて、その先に浴室と便所がある。南の妻壁は簓子下見板張である。

内部は南端が土間、北側が床上部になる。床上部の正面には北からオクザシキ、ヒカエノマ、オミセが並び、奥にナンドとナカノマ、背面にザシキとオクノマを置く。もっとも格の高いオクザシキは北側に床・棚・付書院を構え、前庭側と中庭側の両方に縁を廻す。客専用の浴室と便所も中庭側に付く。オクザシキとヒカエノマの境を見上げると、波に鶴を彫った板欄間がはめ込まれている。

接客の空間と日常の空間は厳しく分けられていた。ヒカエノマとオミセの境には幅2尺の棚と通路をとり、ヒカエノマとナンドの境はもともと土壁だった。後世の改造は間仕切りの追加と玄関まわりの部材の取替が主で、平面構成から軸部、和小屋の小屋組に至るまで当初の形式がよく残る。軸部には面取りした角柱を立て、背面の2室を除いて内法長押を廻す。北面突出部の東側の軒は出桁造である。

蔵と納屋

蔵は桁行13.1メートル、梁間7.9メートルの2階建で、東西棟の切妻造。真壁造の外壁を横板で覆い、小屋組は登梁式、屋根下地には竹の簀の子を用いる。内部は桁行方向に3室に分かれ、東の室に什器、中央の室に穀物、西の室に材木を納めていた。なお屋根の葺材について、文化庁の詳細解説と町の説明は本瓦葺(南面の庇のみ桟瓦葺)とするが、同じデータベースの構造欄は桟瓦葺と記している。

納屋は桁行7.6メートル、梁間4.4メートルの平屋建、切妻造、桟瓦葺で、内部は土間の1室である。赤木家住宅の納屋でいちばん目を引くのは、横板張の外壁の下を高い石積みにした腰まわりだろう。敷地の北辺と西辺にも重厚な石垣が築かれている。

万延2年(1861年)の家相図は、家相師の本多一馬が描いたものである。現状と見比べると、明治以降に一部の建物が撤去され外構も変わったが、屋敷の規模、主屋の位置と大きさ、井戸や祠の位置は動いていない。

赤木家住宅の見学方法

都農町が進めてきた主屋ほか2棟の保存修理は、令和6年(2024年)6月に完了した。2026年9月の時点で、町の公表している情報の中に赤木家住宅の定期的な公開日は見当たらない。内部に入れるのは町が設ける公開の機会に限られ、令和6年(2024年)12月の町議会では、今後の公開時には近くの空き地を駐車場に使う予定と答弁されている。出かける前に都農町の社会教育課へ問い合わせておきたい。

公開日以外は、通りから外観を眺めることになる。赤木家住宅が面しているのは、豊後街道の道筋を引き継ぐ旧国道10号で、町の中心部を南北に通る。個人が所有する建物なので、公開日以外は敷地に立ち入らず、静かに見学したい。内部公開の際の撮影の可否は、その都度町の案内に従う。

最寄り駅はJR日豊本線の都農駅。赤木家住宅は駅から西北西へ直線で約1.2キロ、歩いて20分ほどである。都農町役場はそのすぐ南にある。

Q&A

Q赤木家住宅の内部は見学できますか?
A常時の公開はありません。2026年9月の時点で定期公開日は公表されておらず、内部に入れるのは都農町が設ける公開の機会に限られます。日程は都農町の社会教育課に確認してください。
Q都農駅から赤木家住宅まではどう行けばよいですか?
AJR日豊本線の都農駅から西北西へ進み、旧国道10号に出ます。駅からの直線距離は約1.2キロで、徒歩20分ほどです。
Q赤木家住宅はなぜ本陣と呼ばれるのですか?
A天保8年(1837年)に高鍋藩から本陣の許可を受け、大名や幕府役人の宿所を勤めたためです。天保15年(1844年)の再建後も本陣の役目は続きました。
Q赤木家住宅で重要文化財に指定されているのはどの建物ですか?
A主屋・蔵・納屋の3棟と宅地です。万延2年(1861年)の家相図1枚も附として指定されています。
Q島津久光は赤木家住宅に泊まったのですか?
A文化庁の解説によれば、文久3年(1863年)と元治元年(1864年)に宿泊しており、その際の板札が残っています。

基本情報

名称赤木家住宅(宮崎県児湯郡都農町)
所在地宮崎県児湯郡都農町大字川北4942番地
指定区分重要文化財(建造物)
指定年平成16年(2004年)
員数3棟(主屋・蔵・納屋)、宅地(附 家相図1枚)
寸法主屋 桁行13.5m・梁間14.2m/蔵 桁行13.1m・梁間7.9m/納屋 桁行7.6m・梁間4.4m
所有者個人(管理団体:都農町)
公開状況定期公開なし(内部は都農町が設ける公開の機会に限る)

参考文献

国指定文化財等データベース「赤木家住宅(宮崎県児湯郡都農町) 主屋」(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/00003901
国指定文化財等データベース「赤木家住宅(宮崎県児湯郡都農町) 蔵」(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/00003902
国指定文化財等データベース「赤木家住宅(宮崎県児湯郡都農町) 納屋」(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/00003903
文化遺産オンライン「赤木家住宅(宮崎県児湯郡都農町) 主屋」
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/147598
文化遺産オンライン「赤木家住宅(宮崎県児湯郡都農町) 蔵」
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/202829
都農町「国指定重要文化財『赤木家住宅』」
https://www.town.tsuno.lg.jp/article?articleId=6144137ea1f7525980389c8e
宮崎県「みやざきの文化財情報」赤木家住宅
https://www.miyazaki-archive.jp/d-museum/mch/details/view/1860
都農町議会「令和6年第4回定例会 会議録」(PDF)
https://prdurbanostnoapp1.blob.core.windows.net/common-article/61a84c6d87decd0dbb681baa/%EF%BC%88%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B8%E7%94%A8%EF%BC%89%E4%BB%A4%E5%92%8C%EF%BC%96%E5%B9%B4%E7%AC%AC4%E5%9B%9E%E5%AE%9A%E4%BE%8B%E4%BC%9A%E4%BC%9A%E8%AD%B0%E9%8C%B2.pdf
国立国会図書館サーチ「重要文化財赤木家住宅主屋ほか二棟保存修理工事報告書」(都農町、2025年)
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I034550317

最終更新日: 2026.09.28

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