庇とは

庇は、建物の外壁や出入口、窓の上に張り出した小さな屋根である。「廂」とも書く。雨が壁や建具に当たるのを防ぎ、日差しを和らげる。出入口の上の庇、窓の上の庇、蔵の壁の途中に付ける水切りの庇など、位置と形はさまざまである。

社寺建築では、庇はもう一つの意味をもつ。建物の中心となる身舎(もや)のまわりに一段低い屋根をかけて付け足した部分と、その下の空間を庇と呼ぶ。古代以来の建物の平面は、身舎と庇の組み合わせで説明される。

近い語との違いに注意したい。下屋は主屋の壁に差し掛けて部屋や土間を覆う片流れの屋根の部分で、庇より奥行が大きく、下に空間をもつ。裳階は仏堂や塔の本体の周囲を取り巻く差し掛けである。向拝は社寺の正面に張り出した参拝のための屋根で、柱で支える。記録では「下屋庇」のように二つの語を重ねて書く例もある。

記録と実物で見分ける手がかり

記録では「庇付」「庇を付ける」のように書かれる。東京都青梅市の河鹿園山魚楼は、北面に庇付の吹放ちの玄関を備える数寄屋座敷である。京都市東山区の伊藤喜商店無量子庵の茶室は、切妻屋根を組み合わせた屋根の、茶室の部分に庇が付く。大阪府枚方市の奥野家住宅米蔵は、正面の出入口の庇を軒裏まで塗り込め、妻面には水切り庇を付ける。土蔵の庇は、火に備えて漆喰で塗り込めることが多い。

社寺の例では、京都の八坂神社本殿(国宝)が、構造欄に「正面向拝三間、両側面及び背面庇付」と記され、身舎のまわりに向拝と庇が付く構成を示している。記事では、出入口の上の小さな屋根の意味か、身舎のまわりの空間の意味かを、文脈から区別して書きたい。

参考文献

河鹿園山魚楼|国指定文化財等データベース(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00013363
伊藤喜商店無量子庵茶室及び待合|国指定文化財等データベース(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00007228
奥野家住宅米蔵|国指定文化財等データベース(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00011538
八坂神社本殿|文化遺産オンライン
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/194450

最終更新: 2026.09.27