6件でいちばん古く、いちばん小さい土蔵

石川酒造文庫蔵は、東京都福生市熊川の石川酒造の敷地に建つ文久3年(1863年)の土蔵造2階建の蔵で、平成16年(2004年)2月17日に国の登録有形文化財に登録された。読みは「いしかわしゅぞうぶんこぐら」。

石川酒造文庫蔵は長屋門の東に建つ。建築面積は58平方メートルで、石川酒造の登録6件のなかで最も小さく、年代も最も古い。文久3年は石川家が酒造りを始めた年にあたるが、その酒造りは多摩川対岸の借り蔵で行われており、熊川に酒蔵が建つのは明治13年(1880年)である。この蔵は酒蔵としてではなく、屋敷の蔵として建てられた。

階段の墨書が明かす年代と元の用途

石川酒造文庫蔵の年代を示すのは、内部の階段に残る墨書である。文化庁の解説によれば、この墨書から建築年とともに、もとは宝蔵であったことがわかる。本蔵・新蔵・向蔵の年代は屋根裏の棟札で知られるが、文庫蔵は階段という日常に使う部材に書き付けがあった。

名称は「文庫蔵」で、蔵元も文庫を収納する土蔵と紹介している。一方で文化庁は元の用途を宝蔵としており、家の什器や貴重品を納める蔵として建ち、のちに文書類を納めるようになったとも読める。用途の移り変わりを確かめる資料は見つけられなかった。

柱を密に立てた上質なつくり、造形の規範として登録

棟を東西に通した切妻造、桟瓦葺の2階建で、西面の扉口に庇を架ける。桁行は6.3メートルしかない。

文化庁が評価したのは規模ではなく仕事の質である。柱を密に立てて骨組みを固め、壁には丁寧な漆喰仕上げを施している。小さな蔵に手間を惜しまないつくりが認められ、石川酒造の6件のうち石川酒造文庫蔵だけが、登録基準「造形の規範となっているもの」で登録された。ほかの5件はいずれも「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。登録番号は13-0170。

石川酒造文庫蔵の見学

蔵元の見学案内は、石川酒造文庫蔵について「正面は一般公開していません」と明記している。内部も公開されていない。予約不要の敷地散策で長屋門のあたりまで来たら、東隣に建つ小ぶりな土蔵の姿を、公開されている範囲から眺めたい。

扉口と庇は西面、つまり長屋門の側にあるが、この正面側が非公開の範囲にかかるため、近づいて見られるとは限らない。どこから見えるかは現地の案内に従ってほしい。

Q&A

Q石川酒造文庫蔵はいつ建てられましたか?
A内部の階段に残る墨書から、文久3年(1863年)の建築とわかっています。石川酒造の登録6件のなかで最も古い建物です。
Q石川酒造文庫蔵はもともと何の蔵でしたか?
A文化庁は墨書から、もとは宝蔵だったとしています。蔵元は文庫を収納する土蔵と紹介しています。
Q石川酒造文庫蔵はなぜ登録有形文化財になったのですか?
A桁行6.3メートルの小さな蔵ながら、柱を密に立て漆喰を丁寧に仕上げた上質なつくりが評価され、「造形の規範となっているもの」として登録されました。
Q石川酒造文庫蔵は酒造りに使われた蔵ですか?
Aいいえ。建った文久3年当時、石川家の酒造りは多摩川対岸の借り蔵で行われており、この蔵は屋敷の蔵として建てられました。
Q石川酒造文庫蔵は見学できますか?
A正面と内部は一般公開されていません。敷地散策の際に、公開されている範囲から外観を眺めることになります。

基本情報

名称石川酒造文庫蔵(いしかわしゅぞうぶんこぐら)
所在地東京都福生市大字熊川字南1-1
指定区分登録有形文化財(建造物)、登録番号13-0170
指定年平成16年(2004年)2月17日登録
員数1棟
寸法土蔵造2階建、瓦葺、桁行6.3メートル、建築面積58平方メートル
所有者石川酒造株式会社
公開状況正面・内部は非公開、外観は公開範囲から見学可

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁):石川酒造文庫蔵
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00003851
文化遺産オンライン:石川酒造文庫蔵
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/141121
福生市郷土資料室:石川酒造文庫蔵
https://www.museum.fussa.tokyo.jp/archives/fc_cultural/534
石川酒造株式会社:酒蔵散歩・見学
https://www.tamajiman.co.jp/tour/
石川酒造株式会社:石川酒造について
https://www.tamajiman.co.jp/about/

最終更新日: 2026.09.29