醸しの始まる場所

三原屋の屋敷地南方、蔵と住居部が接する境界際に、東蔵と西蔵に挟まれて建つのが南蔵である。桁行5間、梁間2間半、東西棟、桟瓦葺、切妻造の、たちの低い2階建土蔵である。この蔵を特徴づけるのは、もとの用途にある。東半は麹室に充てられ、米や麦に麹菌をつけて発酵を起こす、温度を管理した部屋であった。

建築は明治10年(1877年)頃、登録番号は20-0125。記録が「たちの低い」と記すこの低い姿は、東側の部屋が均一で安定した温もりを必要としたことに適う。

蔵と住居をつなぐ蝶番

南蔵は接点に位置する。背後には住居部が、前には中庭と働く蔵の列がある。平側南面のほぼ中央に出入口を設け、中庭側へ開く。ここを通って物資が搬入・搬出され、屋敷内の日々の物の動きにも重要な役割を果たした。

働く世界と住まいのあいだ、その位置ゆえに麹室はここに置かれた。発酵は味噌や醤油を醸す家にとって静かで忍耐強い中心であり、三原屋ではこの慎ましい低屋根の蔵から始まった。

最も控えめで、最も欠かせない一棟

平成15年(2003年)に登録された三原屋の6棟のなかで、南蔵は見落とされやすい。隣より低く、両側を挟まれ、街路に見せる面をもたない。それでも麹づくりという本来の役割は、この蔵を事業全体の中心に置く。

登録は歴史的景観への寄与を理由に群を守るが、南蔵はその形と同じだけ機能によってその位置を得ている。商家のなかで最も目立たないものが、実は仕事の始まる場所でありうることを教えてくれる。

Q&A

Q南蔵の特別な点は何ですか。
A東半がもと麹室に充てられていた点です。米や麦に麹菌をつけ、味噌や醤油の発酵を起こす温度管理された部屋でした。
Qどこに建っていますか。
A屋敷地南方、住居部との境界際で、東蔵と西蔵に挟まれて建ちます。
Qなぜ背が低いのですか。
Aその用途に適うためです。麹室は安定した均一な温もりを必要とし、低く小ぶりな空間の方が熱を保ちやすいのです。
Qいつ建てられたのですか。
A明治10年(1877年)頃で、三原屋のほかの蔵と同じ時期の建築です。
Q中に入れますか。
A私有の現役の蔵ですので入れません。建物群は周囲の街路から眺めるのが最適です。

基本情報

名称三原屋商店南蔵
所在地長野県長野市大字長野字桜枝町879-1・字御殿1151-1
指定区分登録有形文化財(登録番号 20-0125)
登録年月日2003年3月18日(告示 2003年4月8日)
員数1棟
構造土蔵造2階建、桟瓦葺、建築面積約46平方メートル
年代明治10年(1877年)頃
用途もと麹室(東半)
所有者株式会社三原屋

参考文献

Agency for Cultural Affairs, National Cultural Properties Database — Miharaya Shoten South Storehouse
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00003238
Nagano City — List of Registered Tangible Cultural Properties
https://www.city.nagano.nagano.jp/n151100/contents/p002914.html
Miharaya Co., Ltd. — official site
https://miharaya.co.jp/

最終更新日: 2026.07.05