石置屋根を残す明治の建物

中房温泉旧湯会所は、長野県安曇野市穂高有明の中房温泉にある明治時代の木造2階建の建物で、平成23年(2011年)7月25日に国の登録有形文化財に登録された。登録番号は20-0373で、本館菊の南西に建つ。

東西に棟を通した切妻造で、平面は桁行6.4メートル、梁間6.4メートルの正方形。建築面積は46平方メートルある。外壁は下見板張とし、南面に窓を開ける。1階は西半分を板敷の空間とし、東寄りを間仕切って部屋にしている。

建築年代は資料によって幅がある。文化庁のデータベースは明治前期、梅干野成央准教授(信州大学)の解説は明治中期とする。どちらにしても、中房温泉が明礬の湯小屋から登山客を迎える宿へ移り変わっていく時期の建物である。

「湯会所」という名と登録の理由

「湯会所」は、湯治場の運営や湯の管理にかかわった建物を思わせる名である。ただし、この建物が当初どのように使われたのかを詳しく記した公開資料は確認できなかった。1階の西半分を板敷の広い空間、東寄りを仕切られた部屋とする間取りからは、人が集まる場と詰める場を兼ねた使い方も想像できるが、推測の域を出ない。

登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」。文化庁は、木立を背にして石置屋根の特徴ある外観を保っている点を評価している。梅干野准教授も、石置き板葺の屋根によって歴史的な景観を保つ建物として、中房温泉旧湯会所を本館菊と並べて挙げている。

見どころ:南北で葺き分けた屋根

この建物でまず見るべきは屋根である。棟を境に、南側の斜面は板を並べて石で押さえた石置板葺、北側は鉄板葺と、葺き方が分かれている。南から見上げると、板の上に石が点々と載る山の小屋の屋根が現れる。

石置板葺は、釘に頼らず石の重みで板を押さえる葺き方で、かつては山間部の民家や小屋に広く見られた。傷んだ板は石をどけて差し替えられる。北側が鉄板になっている事情は登録資料に記されていないが、維持のしやすさから葺き替えられたものと考えられる。

背後の木立との取り合わせも、文化庁が挙げる見どころである。本館菊の南西の角から眺めると、鉄板葺の本館菊と石置屋根の旧湯会所が並び、明治の2棟の屋根の違いが一度に見比べられる。

見学の方法

中房温泉旧湯会所は営業中の温泉宿の敷地内にある。外観は、中房温泉に宿泊するか、登録文化財のある園地の見学を含む日帰りプランを利用すれば、敷地内から見ることができる。内部の公開は案内されていない。

石置の屋根は南側の斜面にしか無いため、見るなら南から。撮影の決まりは示されていないが、周囲は宿の利用者が行き交う場所なので配慮したい。営業期間や交通は中房温泉のページにまとめてある。

Q&A

Q中房温泉旧湯会所の屋根はどうなっていますか?
A棟を境に、南側が石置板葺、北側が鉄板葺と葺き分けられています。石置の屋根は南側から見られます。
Q中房温泉旧湯会所はいつ建てられましたか?
A文化庁のデータベースは明治前期、梅干野成央准教授の解説は明治中期としています。明治時代の建物である点は共通しています。
Q中房温泉旧湯会所は何に使われた建物ですか?
A名称は湯治場の運営にかかわる建物を思わせますが、当初の用途を詳しく記した公開資料は確認できませんでした。1階は西半分が板敷、東寄りが部屋に仕切られています。
Q中房温泉旧湯会所の大きさは?
A木造2階建で、桁行・梁間とも6.4メートル、建築面積46平方メートルです。
Q中房温泉旧湯会所の中に入れますか?
A内部の公開は案内されていません。外観は宿泊者と日帰りプランの利用者が敷地内から見学できます。

基本情報

名称中房温泉旧湯会所(なかぶさおんせんきゅうゆかいしょ)
所在地長野県安曇野市穂高有明7226他
指定区分登録有形文化財(建造物)、登録番号20-0373
指定年平成23年(2011年)7月25日登録
員数1棟
寸法木造2階建、切妻造、板葺一部鉄板葺、建築面積46平方メートル、桁行6.4メートル・梁間6.4メートル
所有者中房温泉株式会社
公開状況宿泊者と日帰りプラン利用者が敷地内から外観を見学可。内部の公開は案内なし

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁)― 中房温泉旧湯会所
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00008686
梅干野成央「中房温泉 近世・近代の山岳文化が織りなす場所」(中房温泉 公式サイト)
https://nakabusa.com/pdf/historyandnature_03.pdf
中房温泉 公式サイト ― 中房温泉の楽しみ方・歴史と自然・日帰りプラン
https://nakabusa.com/

最終更新日: 2026.09.25