大正12年に築かれた温泉のプール

中房温泉温泉大プールは、長野県安曇野市穂高有明の中房温泉にある大正12年(1923年)の石造の屋外プールで、平成23年(2011年)7月25日に国の登録有形文化財に登録された。登録番号は20-0376で、7件のなかで唯一、建物ではなく工作物として登録され、員数も「1所」と数える。

温泉地の南西にあり、水の代わりに温泉を張る。幅8.7メートル、長さ17メートル、深さ1.2メートル、面積は147平方メートルある。

大正期の中房温泉は、登山基地であると同時に、山の保養地としても育っていた。大正7年(1918年)には成城の澤柳政太郎がここで林間学校を開いている。梅干野成央准教授(信州大学)は、この温泉大プールを、自然環境を生かした保養地として中房温泉が成長していたことの証しに挙げる。文化庁も、近代的な温泉場の先駆けとなった施設と評価している。

有明花崗岩の石積み

壁は、周辺で採れる有明花崗岩を切り出した切石を4段に積み上げて造られている。北・西・東の三方には2段の階段が積まれ、水際へ降りられるようになっている。

材料を遠くから運ばず、足もとの岩で湯船を築いた点に、この施設の性格がある。中房の谷は花崗岩の地盤で、温泉そのものもこの岩の割れ目を通って湧き上がる。同じ岩で囲われた湯に浸かることになる。

登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」。登録された7件のうち大正期のものはこれだけで、湯治場から保養地へ広がった中房温泉の近代の姿を最もはっきり示している。

見どころと利用

中房温泉温泉大プールは今も使われている。中房温泉によれば、湯を張るのは毎年6月から10月中旬までの期間限定で、歩きながら湯に浸かる歩行浴ができる。水着の着用が求められている。

湯を張った季節には、灰白色の切石の壁と段が湯面の下へ続いていく。湯を抜いた季節には、4段の石積みと三方の階段が露わになり、築き方がかえってよく分かる。どちらの季節に訪れても、石積みの精度を確かめる機会になる。

見学の方法

中房温泉温泉大プールは営業中の温泉宿の敷地内にあり、利用と見学は宿泊者と、登録文化財のある園地の見学を含む日帰りプランの利用者に限られる。利用の条件は時期によって変わるため、予約時に確認したい。

入浴施設なので、撮影の際はほかの利用者が写り込まないよう十分に配慮すること。営業期間や交通は中房温泉のページにまとめてある。

Q&A

Q中房温泉温泉大プールはいつ造られましたか?
A文化庁のデータベースによれば大正12年(1923年)です。
Q中房温泉温泉大プールに入ることはできますか?
A毎年6月から10月中旬まで湯を張り、歩行浴ができます。水着の着用が必要で、利用できるのは宿泊者と日帰りプランの利用者です。
Q中房温泉温泉大プールの大きさは?
A幅8.7メートル、長さ17メートル、深さ1.2メートル、面積147平方メートルです。
Q中房温泉温泉大プールは何でできていますか?
A周辺で採れる有明花崗岩の切石を4段に積んで壁を造っています。北・西・東の三方には2段の階段があります。
Q中房温泉温泉大プールはなぜ登録有形文化財になったのですか?
A登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」です。文化庁は近代的な温泉場の先駆けとなった施設と評価しています。

基本情報

名称中房温泉温泉大プール(なかぶさおんせんおんせんだいぷーる)
所在地長野県安曇野市穂高有明7226他
指定区分登録有形文化財(建造物)、登録番号20-0376
指定年平成23年(2011年)7月25日登録
員数1所
寸法石造、面積147平方メートル、幅8.7メートル・長さ17メートル・深さ1.2メートル
所有者中房温泉株式会社
公開状況宿泊者と日帰りプラン利用者が利用・見学可(湯を張るのは夏から秋の期間限定)

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁)― 中房温泉温泉大プール
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00008689
文化遺産オンライン ― 中房温泉温泉大プール
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/233150
梅干野成央「中房温泉 近世・近代の山岳文化が織りなす場所」(中房温泉 公式サイト)
https://nakabusa.com/pdf/historyandnature_03.pdf
中房温泉 公式サイト ― 中房温泉の楽しみ方・歴史と自然・日帰りプラン
https://nakabusa.com/

最終更新日: 2026.09.25