本館菊の東に建つ江戸末期の倉

中房温泉板倉は、長野県安曇野市穂高有明の中房温泉にある江戸時代末期の木造平屋建の倉で、平成23年(2011年)7月25日に国の登録有形文化財に登録された。登録番号は20-0378で、中房温泉の7件のうち最後の番号にあたる。

本館菊の東隣に建ち、東西に棟を通した切妻造、屋根は鉄板葺。桁行6.1メートル、梁間4.6メートル、建築面積28平方メートルの小さな建物で、内部は東西の2室に分かれる。

梅干野成央准教授(信州大学)は、この板倉を土蔵とともに、近世の中房温泉の様子を示す遺構に数えている。明礬の採掘と湯小屋から始まった江戸時代の中房温泉で、道具や物資を納めた倉の一つと考えられるが、当初の用途を記した資料は登録記録に見当たらない。

組み方と登録の理由

構造は簡素で、そのぶん組み方がよく見える。切石の基礎の上に土台をまわし、角柱を4間×3間に立てて、柱の間に横板を上から落とし込んで板壁とする。上部は桁と梁を渡して母屋をかけ、垂木は一重で間隔をあけて並べる一軒疎垂木とする。

登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」。文化庁は、素朴な味わいをもつ建物と評している。飾りの部材はほとんど無く、柱と板と屋根だけで成り立つ倉である。

落とし込みの板壁は、柱の溝に沿って板を上から差し入れていくため、傷んだ板だけを抜いて入れ替えられる。山で手に入る材で建て、山で直し続けられる。中房温泉板倉は、そうした山の倉の典型的な作り方を見せている。

見どころ:板壁と基礎

近づいたら、まず壁の横板を見てほしい。柱と柱の間に板が段々に積み重なり、横方向の目地が壁一面に走る。板の幅や色合いが一枚ずつわずかに違って見えるのは、長い年月のあいだに差し替えが重ねられてきたためかもしれない。

足もとも見ておきたい。柱を地面に直接立てず、切石の基礎の上に土台を置いているのは、雪と湿気の多い山中で木部を地面から離すための工夫である。

すぐ東南には、同じ江戸末期の土蔵が建つ。こちらは板蔵の外壁に土を塗り上げたとみられる造りで、平屋の板倉と2階建の土蔵を見比べると、山の倉の二つの仕上げ方が分かる。

見学の方法

中房温泉板倉は営業中の温泉宿の敷地内にある。外観は、中房温泉に宿泊するか、登録文化財のある園地の見学を含む日帰りプランを利用すれば、敷地内から見ることができる。内部の公開は案内されていない。

撮影の決まりは示されていないが、周囲は宿の利用者が行き交う場所なので配慮したい。営業期間や交通は中房温泉のページにまとめてある。

Q&A

Q中房温泉板倉はいつ建てられましたか?
A文化庁のデータベースは江戸時代末期の建築としています。正確な建築年は示されていません。
Q中房温泉板倉はどのような造りですか?
A切石基礎の上に土台をまわし、角柱の間に横板を落とし込んだ板壁の倉です。切妻造・鉄板葺の平屋で、内部は東西2室に分かれます。
Q中房温泉板倉の大きさは?
A桁行6.1メートル、梁間4.6メートル、建築面積28平方メートルです。
Q中房温泉板倉は見学できますか?
A外観は宿泊者と日帰りプランの利用者が敷地内から見学できます。内部の公開は案内されていません。
Q中房温泉板倉と中房温泉土蔵はどう違いますか?
Aどちらも江戸末期の倉ですが、板倉は板壁のままの平屋、土蔵は板蔵の外壁に土を塗り上げたとみられる2階建です。2棟は本館菊の東側に並んでいます。

基本情報

名称中房温泉板倉(なかぶさおんせんいたくら)
所在地長野県安曇野市穂高有明7226他
指定区分登録有形文化財(建造物)、登録番号20-0378
指定年平成23年(2011年)7月25日登録
員数1棟
寸法木造平屋建、切妻造、鉄板葺、建築面積28平方メートル、桁行6.1メートル・梁間4.6メートル
所有者中房温泉株式会社
公開状況宿泊者と日帰りプラン利用者が敷地内から外観を見学可。内部の公開は案内なし

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁)― 中房温泉板倉
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00008691
文化遺産オンライン ― 中房温泉板倉
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/213732
梅干野成央「中房温泉 近世・近代の山岳文化が織りなす場所」(中房温泉 公式サイト)
https://nakabusa.com/pdf/historyandnature_03.pdf
中房温泉 公式サイト ― 中房温泉の楽しみ方・歴史と自然・日帰りプラン
https://nakabusa.com/

最終更新日: 2026.09.25