浜茶屋から新潟屈指の料亭へ

新潟市中央区西大畑町に建つ料亭・行形亭。その正面に立つ木造二階建が主屋である。建てられたのは江戸末期、西暦でいえば1830年から1867年の間とされ、行形亭に残る建物のなかで最も古い。

行形亭は、まだ海岸線がこの一帯の近くまで迫っていた時代の茶屋を前身とすると伝わる。海はいまでは内陸へ大きく退いた。創業は元禄年間(1688–1704年)とも言われ、以来およそ三百年、客をもてなし続けてきた。国内でも有数の長い歴史をもつ料亭である。

主屋は総二階建、鉄板葺の屋根を載せ、建築面積は約107平方メートル。一階の前面には、庇の下の空間を使ったL字型の土間が設けられている。配膳や人の出入りを、奥の座敷から切り離す働きをもつ空間である。

国の登録有形文化財として

平成12年(2000年)4月、文化庁は行形亭の10棟を登録有形文化財に登録した。主屋の登録番号は15-0056、告示は同年5月17日である。

登録は、重要文化財などの「指定」に比べて緩やかな保護の枠組みで、平成8年(1996年)に始まった。おおむね築五十年以上を経て、地域の景観を形づくる建物が対象となる。主屋は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」として登録された。行形亭の多くの棟に共通する基準である。

正面妻の意匠を読む

正面に立つと、妻側の構成に見どころがある。上部は梁と小壁を組み合わせ、下部には板壁と窓を納める。左右に張り出す二階庇の破風が、全体の輪郭を引き締めている。ありふれた木造の部材を、注意深く組み上げた顔立ちである。

松と鶴は行形亭全体の象徴で、庭では昭和50年頃までタンチョウヅルが飼われていた。二千坪を超す庭には黒松の古木がいまも立つ。行形亭は営業中の料亭であり、主屋の内部は食事の場として体験することになる。利用には予約が必要で、日曜・祝日は休業のことが多い。

Q&A

Q「行形亭」はどう読みますか。
A「いきなりや」と読みます。屋号で、「いきなりてい」と誤読されることもありますが、正しくは「いきなりや」です。
Q主屋の中に入れますか。
A営業中の料亭の一部のため、内部は食事の際に見ることになります。予約が必要で、多くは前日までの手配となり、日曜・祝日は休業のことが多いです。
Q建物はいつ頃のものですか。
A主屋は江戸末期、およそ1830年から1867年の建築です。料亭としての創業はさらに古く、元禄年間(1700年前後)と伝わります。
Q主屋は重要文化財ですか。
Aいいえ。登録有形文化財で、重要文化財の「指定」より緩やかな保護区分です。行形亭では10棟がこの登録を受けています。

基本情報

名称行形亭主屋(いきなりやしゅおく)
所在地新潟県新潟市中央区西大畑町573
指定区分登録有形文化財(2000年登録/登録番号 15-0056)
時代江戸末期(1830–1867年)
構造・形式木造二階建、鉄板葺、建築面積約107平方メートル
員数1棟
所有者株式会社行形亭
公開営業中の料亭。内部は食事の予約による。日曜・祝日は休業が多い

References

国指定文化財等データベース — 行形亭主屋
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00001584
行形亭 公式サイト
https://www.ikinariya.co.jp/
新潟観光コンベンション協会 — 行形亭
https://www.nvcb.or.jp/topics/ikinariya

最終更新日: 2026.07.09