和と洋が交わる客棟

敷地の南側に建つのが離れ座敷である。昭和3年(1928年)に建てられた木造二階建で、登録された一群のなかで最も大きな一棟にあたる。建築面積は約319平方メートルにおよぶ。

外観は和風を貫く。入母屋造り、桟瓦葺で、壁は簓子下見板張とし、敷地に共通する仕上げをまとう。ところが玄関に入ると語彙が変わる。多種の洋風照明器具が下がり、階段の手摺りは自然木を用いてかたちづくられる。舶来の流行と在来の手仕事が思いがけず同居する。

随所にあらわれる鶴

離れ座敷は、行形亭の象徴が最も自由に扱われた場所である。内部の随所、建具や装飾のなかに、鶴が意匠化されて繰り返し現れる。かつて庭で飼われていたタンチョウヅルにちなむ意匠で、その姿を探すことが、部屋を巡る楽しみの一部となる。

平成12年(2000年)の登録にあたり、離れ座敷は登録番号15-0061で登録された。その基準は多くの棟と異なる。通例の景観の基準ではなく、「再現することが容易でないもの」として認められた。建具や造作に込められた技量への評価である。

客として見る

離れ座敷は営業中の料亭の私的な客棟であるため、食事の客に開かれる。和洋折衷の玄関、自然木の手摺り、点在する鶴は、見学順路ではなく食事の合間に出会うものである。訪れるには予約を要する。

登録された行形亭10棟のうち、離れ座敷は昭和の趣味を最もよく示す一棟である。新潟の格式ある家が、洋風の灯りを和の広間に据え、その混淆を自然なものとして扱えた時代の作である。座敷へ進む前に、玄関で足をとめる価値がある。

Q&A

Q離れ座敷はどこが珍しいのですか。
A外観は完全に和風ですが、玄関には洋風の照明器具や自然木の階段手摺りが用いられています。この和洋の混在が昭和初期らしい特徴です。
Qなぜ他の建物と登録の理由が違うのですか。
A多くの棟は景観への寄与で登録されましたが、離れ座敷は「再現することが容易でないもの」として認められました。造作の技量を評価したものです。
Q鶴はどこにありますか。
A内部の建具や装飾の随所に、意匠化された鶴が現れます。鶴は行形亭の象徴で、かつて庭で飼われていた鶴にちなみます。
Q離れ座敷を訪れられますか。
A営業中の料亭の私的な客棟で、予約した食事の客に開かれます。一般の見学順路ではなく、日曜・祝日は休業が多いです。

基本情報

名称行形亭離れ座敷(いきなりやはなれざしき)
所在地新潟県新潟市中央区西大畑町573
指定区分登録有形文化財(2000年登録/登録番号 15-0061)
時代昭和3年(1928年)
構造・形式木造二階建、瓦葺、建築面積約319平方メートル
員数1棟
所有者株式会社行形亭
公開営業中の料亭の私的な客棟。食事の予約による

References

国指定文化財等データベース — 行形亭離れ座敷
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00001589
行形亭 公式サイト
https://www.ikinariya.co.jp/
新潟観光コンベンション協会 — 行形亭
https://www.nvcb.or.jp/topics/ikinariya

最終更新日: 2026.07.09