環翠楼臨泉閣とは
環翠楼臨泉閣は、新潟県阿賀野市村杉の村杉温泉にある旅館環翠楼の敷地中央に建つ、明治後期(1898〜1912年)の木造2階建の離れで、令和3年(2021年)2月26日に国の登録有形文化財に登録された。読みは「かんすいろうりんせんかく」。登録番号は15-548で、同じ日に環翠楼中広間も登録されている。
宿では長くこの棟を「明治の間」「安らぎの明治の間」と呼んできた。臨泉閣の名は、建物に残る掛軸に記された言葉に由来すると宿の若女将は書いている。宿の説明では「温泉を見下ろす高殿」という意味だという。令和5年(2023年)に改装され、いまは1棟をまるごと貸し切る客室になっている。
環翠楼臨泉閣が登録された理由
登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。文化庁の解説は、環翠楼臨泉閣を「近代和風の好例」と位置づけ、その理由を建物の配置と座敷の構えから説明している。
環翠楼臨泉閣は敷地の中央の高台にあり、石段を上って近づく。屋根は入母屋造の桟瓦葺、建築面積は71平方メートル。1階と2階はどちらも8畳の座敷2室からなり、建物の四方に縁を廻らす。床の構えは、床脇に地袋と天袋を設けた端正なもので、三方に建てたガラス戸から庭を見渡せる。高い位置に置いた小さな2階建に、ガラス戸で開いた座敷を重ねるという構成が、明治後期の和風建築が庭との関係をどう組み立てたかを伝えている。
宿の若女将が登録前の令和2年(2020年)に記したところでは、窓には昔ながらの歪みのある板ガラスが残り、濡縁は雨が自然に落ちるよう外側にわずかに傾けてあった。湯治宿の時代には、客が手伝いの者を連れてこの離れに長く滞在したと伝わり、中に台所があったほか、当時は珍しいオルガンも置かれていたという。
環翠楼臨泉閣の見どころ
環翠楼臨泉閣でまず確かめたいのは、高台という位置である。石段を上がると、建物は庭より一段高いところに立ち、四方の縁から庭を見下ろす格好になる。臨泉閣という名が示すとおり、眺めがこの棟の主題になっている。
座敷では床脇を見ておきたい。下に地袋、上に天袋という2段の戸棚を組んだ構えを、文化庁は「端正」と評している。そのうえで三方のガラス戸に目を移すと、壁を減らして庭へ開こうとした意図が分かる。
令和5年(2023年)の改装で、1階にはカウンターキッチンとリビング・ダイニング、浴室が、2階には寝室と和室が設けられた。宿によると浴室には湯口をあえて付けず、窓を開けると庭の滝の音が聞こえるようにしたという。宿はこの改装でグッドデザイン賞(2024年)を受けたと案内している。
環翠楼臨泉閣に泊まるには(見学の条件)
環翠楼臨泉閣は営業中の客室で、見学だけの受け入れは案内されていない。内部に入るには1棟貸切で宿泊する必要があり、利用人数は2名から6名である。宿の料金表では、平日に2名で泊まる場合、素泊まりで1人60,500円、2食付で1人72,600円から(税込、入湯税150円別)となっている(2026年10月5日確認)。食事は人数にかかわらず本館の個室でとる。
外観は庭から見上げることができるが、宿泊していない人が庭に入れるかについての案内はない。撮影の決まりも公式サイトに載っていないため、気になる点は宿に確かめたい。宿への行き方は環翠楼のページにまとめてある。
Q&A
- 環翠楼臨泉閣は見学できますか?
- 見学だけの受け入れは案内されていません。環翠楼臨泉閣は1棟貸切の客室なので、内部を見るには宿泊が必要です。利用は2名から6名で、予約は環翠楼の公式サイトか電話(0250-66-2131)で受け付けています。
- 環翠楼臨泉閣はいつ建てられたのですか?
- 文化庁のデータベースは明治後期(1898〜1912年)の建築としています。宿の案内には「築130年以上」とありますが、文化庁の年代と数年の開きがあり、正確な建築年は公開資料では確かめられません。
- 環翠楼臨泉閣はいつ登録有形文化財になりましたか?
- 令和3年(2021年)2月26日に国の登録有形文化財に登録されました。登録番号は15-548です。同じ日に環翠楼中広間も登録され、平成28年(2016年)登録の大正の間とあわせて環翠楼の登録建物は3棟になりました。
- 環翠楼臨泉閣という名前にはどんな意味がありますか?
- 宿は「温泉を見下ろす高殿」という意味だと説明しています。名は建物に残る掛軸の文字から取られました。宿では以前、この棟を「明治の間」と呼んでいました。
- 環翠楼臨泉閣のどこを見ればよいですか?
- 敷地中央の高台に石段で上がる配置、四方に廻らした縁、地袋と天袋を備えた床脇、庭に向けた三方のガラス戸の4点です。文化庁はこれらを挙げて、近代和風の好例としています。
基本情報
| 名称 | 環翠楼臨泉閣(かんすいろうりんせんかく) |
|---|---|
| 所在地 | 新潟県阿賀野市村杉字薬師平4520 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物)、登録番号15-548 |
| 指定年 | 令和3年(2021年)2月26日登録(第98回) |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 木造2階建、瓦葺、建築面積71平方メートル |
| 所有者 | 文化庁データベースに記載なし(旅館 環翠楼が客室として使用) |
| 公開状況 | 1棟貸切の宿泊客のみ利用可。見学だけの受け入れは案内なし |
参考文献
- 環翠楼臨泉閣(文化庁 国指定文化財等データベース)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00013704
- 環翠楼臨泉閣(文化遺産オンライン)
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/539748
- お部屋(村杉温泉 環翠楼 公式サイト)
- https://www.kansuirou.jp/guestroom/
- 料金のご案内(村杉温泉 環翠楼 公式サイト)
- https://www.kansuirou.jp/price/
- 次の国指定登録有形文化財?(村杉温泉 環翠楼 若女将ブログ)
- https://www.kansuirou.jp/blog/wakaokami/%E6%AC%A1%E3%81%AE%E5%9B%BD%E6%8C%87%E5%AE%9A%E7%99%BB%E9%8C%B2%E6%96%87%E5%8C%96%E8%B2%A1%EF%BC%9F/
最終更新日: 2026.10.05