四日市の門前町に建つ西の別院
本願寺四日市別院は、大分県宇佐市四日市にある浄土真宗本願寺派の別院で、安政6年(1859年)建立の本堂をはじめとする境内11棟が、平成28年(2016年)に国の登録有形文化財となった。
正式名称は浄土真宗本願寺派本願寺四日市別院。地元では西別院、あるいは西本願寺四日市別院と呼ばれる。細い道を挟んだ東隣には真宗大谷派の別院が建ち、そちらは東別院と呼ばれる。宗派を異にする二つの大伽藍が向かい合って甍を並べる町並みは、全国的にも例が少ない。
成り立ちは江戸時代中期の紛争にさかのぼる。宇佐市の説明によれば、いまの東別院の場所にあった東本願寺末の真勝寺で住職の進退をめぐる争いが起こり、住職が末寺11か寺と門信徒1300人を率いて本願寺派へ転じようとしたことから大騒動になった。1743年、江戸の寺社奉行大岡越前守忠相の裁きにより真勝寺は幕府に没収され、東本願寺へ下げ渡される。これに対し本願寺派は、川部にあった正名寺を四日市の現在地へ移して別院を興した。
移転から別院が整うまでの年次は、参照した公的資料の間で一致していない。確かなのは、両派が競って布教を進めた結果、細い道を挟んで東西の別院が並び建つ門前町がかたちづくられ、九州各地の寺院を統べる「九州御坊」と呼ばれるまでになったことである。参詣者は九州中から集まり、四日市の町はその往来で潤った。
境内をどう歩くか
本願寺四日市別院の境内は東を正面とする。参道の入口に建つ二之門をくぐり、四脚門の山門を抜けると、正面奥に東を向いた本堂が座る。東西の軸がまっすぐに通っているので、二之門の前に立てば三つの建物が一直線に重なって見える。
山門の内側では、境内正面の南端に鐘楼、北端に太鼓楼が向き合う。鐘と太鼓を左右に配して寺の正面景観をつくるのは真宗寺院の伽藍にみられる構えで、ここでは鐘楼が木造の袴腰付、太鼓楼が土蔵造と、材も仕上げも対照的に組まれている。山門のすぐ北、本堂に向かい合う位置には茶所が建つ。
本堂の南には六角平面の経蔵が東を向いて建ち、その前方、本堂正面の南側に総会所が北を向いて構える。本堂の北へ回ると対面所、その背面に渡廊下でつながる御成御殿、さらに北に接続して庫裏及び長御殿が続く。参詣の場である本堂と、門主や末寺が使う接客・居住の建物が南北にはっきり分かれている点は、境内を一周すると読み取れる。
建物どうしが近く、11棟が半径およそ100メートルの範囲に収まる。ゆっくり見ても30分ほどで回れる規模である。
まとまって残る11棟
本願寺四日市別院で登録有形文化財となっているのは次の11棟で、いずれも平成28年(2016年)2月25日付の登録である。建設年代は江戸時代中期から昭和前期までおよそ300年にわたる。
- 本堂(安政6年/1859年)
- 山門(江戸中期)
- 二之門(江戸末期)
- 鐘楼(江戸末期)
- 太鼓楼(弘化4年/1847年)
- 茶所(大正後期)
- 経蔵(明治18年/1885年)
- 総会所(大正4年頃/1915年頃)
- 対面所(明治前期)
- 御成御殿(昭和前期)
- 庫裏及び長御殿(大正期、昭和前期増築)
本堂だけが「造形の規範となっているもの」という基準で登録され、ほかの10棟は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」を基準とする。個々の建物の質だけでなく、真宗別院の伽藍がひとそろい残っている点が評価された登録である。
お取り越しの六日間
年間でもっとも大きな法要は、毎年12月11日から16日にかけて営まれる報恩講御引上会である。宗祖親鸞の忌日にちなむ法要で、四日市では東西の別院ともこれを「お取り越し」と呼ぶ。宇佐市によれば、この期間の境内には出店が並び、多くの参拝者が訪れる。
本願寺四日市別院の総会所は、この報恩講のときに使う建物として建てられた。ふだんは静かな境内が年に一度だけ人で埋まる六日間で、建物がなぜこの規模と配置で建てられたのかが実感しやすい時期でもある。
拝観とアクセス
本願寺四日市別院の境内は無料で開放されており、宇佐市の案内では午前9時から午後5時まで参拝できる。堂内の拝観や撮影の可否は法要の予定によって変わるため、内部を見たい場合や三脚を立てたい場合は、事前に別院へ確認してほしい。境内での参拝と外観の見学については、とくに手続きはいらない。
最寄り駅はJR日豊本線の柳ヶ浦駅で、駅からはタクシーでおよそ15分。車の場合は宇佐別府道路の四日市インターチェンジから約3分と近い。境内には駐車場があるが、大型バスで訪れる場合は東別院側および門前町の駐車場を使うよう宇佐市が案内している。トイレも門前町の公衆トイレを利用する。
四日市の門前町は道幅が狭く、東西の別院を見比べながら歩くなら車を置いてからのほうが動きやすい。拝観時間・料金・行事日程は2026年9月13日時点の情報で、変更されることがある。
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース 本願寺四日市別院本堂
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00011016
- 文化庁 国指定文化財等データベース 本願寺四日市別院山門
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00011025
- 宇佐市 東本願寺・西本願寺四日市別院
- https://www.city.usa.oita.jp/tourist/touristspot/touristspot2/touristspot3/10183.html
- 宇佐市 指定等文化財一覧
- https://www.city.usa.oita.jp/sougo/soshiki/18/shakaikyoiku/3/bunkazai/2149.html
- 大分県 国指定・選定等文化財一覧
- https://www.pref.oita.jp/kyoiku/tmp/bunka/post-101/1.pdf
最終更新日: 2026.09.13
基本情報
| 名称 | 本願寺四日市別院 |
|---|---|
| 所在地 | 大分県宇佐市四日市1410-1 |
| 所有者 | 宗教法人本願寺四日市別院 |
| 指定 | 登録有形文化財 11件 |
| 座標 | 33.53129, 131.32552 |