建築年がはっきりした最大の蔵
林原美術館西蔵は、岡山県岡山市北区丸の内の林原美術館の敷地北側に建つ明治14年(1881年)の土蔵で、令和5年(2023年)に国の登録有形文化財に登録された。北側の石垣に沿って並ぶ土蔵3棟のうち最も西の1棟で、木造2階建、瓦葺、建築面積は176平方メートルと3棟で最も大きい。
東蔵と中蔵の年代が「明治前期」という幅で示されているのに対し、林原美術館西蔵だけは明治14年と年まで特定されている。生坂藩池田家の屋敷、生坂向邸(いくさかむかいやしき)で建てられ、明治42年(1909年)頃に現在の場所へ移された。
移築のときに手を入れた内部
林原美術館西蔵の来歴で目を引くのは、移すときにただ組み直しただけではなかった点である。文化庁の国指定文化財等データベースの解説によれば、生坂向邸から移築する際に2階の床を下げ、屋根裏にあたる小屋裏に収納用の棚を増やした。
2階の床を下げれば、1階の天井高は低くなるかわりに、2階と小屋裏の容積が増える。棚を加えた小屋裏とあわせ、物を納める場所を上へ上へと広げた改造と読める。移築先で何をどれだけ納めるかを見込んで、蔵の中身の使い方を組み替えたことがうかがえる。
登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」。内部の改造は記録としての価値だが、登録の評価は、東蔵・中蔵と並んで武家の蔵の町並みをつくる外観に置かれている。
腰・角・帯に張った海鼠壁
林原美術館西蔵は土蔵造2階建で、屋根は切妻造の本瓦葺。外壁は白い漆喰で塗り、海鼠壁を三か所に使っている。腰から下、建物の角の出隅、そして2階の壁を一周する帯である。
隣の中蔵は角をL形の役物瓦と四半張の平瓦で納めているが、林原美術館西蔵は角まで海鼠壁で飾る。平瓦の継ぎ目に盛った漆喰の白い格子が、腰から角を回って立ち上がり、2階の帯へとつながるように見える。白と黒の模様が壁面の縁取りになる仕上げである。
林原美術館西蔵の建築面積176平方メートルは、東蔵のおよそ2倍にあたる。東から東蔵、中蔵、西蔵と進むにつれて蔵は大きくなり、西蔵が3棟の列の西の端に立つ。
林原美術館西蔵を見学するには
林原美術館西蔵の内部は、美術館の利用案内に公開の案内がない。展示は本館で行われるので、西蔵について見られるのは外観である。
文化庁の写真は南面を正面として撮られている。敷地の北西の端にあたるため、見る位置は来館時に受付で確かめたい。角の海鼠壁は、隣の中蔵の角と見比べると違いがよく分かる。
Q&A
- 林原美術館西蔵はいつ建てられましたか?
- 明治14年(1881年)の建築で、明治42年(1909年)頃に生坂向邸から現在地へ移築されました。
- 林原美術館西蔵は移築のときにどこが変わりましたか?
- 2階の床を下げ、小屋裏に収納用の棚を増やしたと文化庁の解説にあります。
- 林原美術館西蔵はなぜ登録有形文化財になったのですか?
- 「国土の歴史的景観に寄与しているもの」として令和5年(2023年)に登録されました。海鼠壁で飾った外観が武家の蔵の町並みをつくる点が評価されています。
- 林原美術館西蔵と中蔵の外観はどう違いますか?
- 西蔵は建物の角まで海鼠壁で飾ります。中蔵は角にL形の役物瓦と四半張の平瓦を使っています。
- 林原美術館西蔵の中は見学できますか?
- 内部公開の案内はありません。外観を見られる位置は、来館時に美術館の受付で確認してください。
基本情報
| 名称 | 林原美術館西蔵 |
|---|---|
| 所在地 | 岡山県岡山市北区丸の内2丁目7-115 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) |
| 指定年 | 令和5年(2023年)登録 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 木造2階建、瓦葺、建築面積176平方メートル |
| 所有者 | ナガセヴィータ株式会社 |
| 公開状況 | 外観のみ(内部公開の案内なし、見学位置は美術館に要確認) |
参考文献
- 国指定文化財等データベース(文化庁)林原美術館西蔵
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00014673
- 文化遺産オンライン 林原美術館西蔵
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/560835
- 岡山県 林原美術館本館、東蔵、中蔵、西蔵、長屋門(PDF)
- https://www.pref.okayama.jp/uploaded/attachment/350711.pdf
- 林原美術館 美術館概要
- https://www.hayashibara-museumofart.jp/data/about/
最終更新日: 2026.09.24