池田家の文書を守った小さな土蔵
林原美術館東蔵は、岡山県岡山市北区丸の内の林原美術館の敷地北側に建つ明治前期(1868〜1882年)の土蔵で、令和5年(2023年)に国の登録有形文化財に登録された。北側の石垣の縁に沿って並ぶ土蔵3棟のうち最も東の1棟で、木造2階建、瓦葺、建築面積は89平方メートルと3棟の中でいちばん小さい。
もとは生坂藩池田家の屋敷、生坂向邸(いくさかむかいやしき)にあった蔵で、明治末に現在の場所へ移された。文化庁の国指定文化財等データベースは年代を「明治前期/明治42年頃移築」としており、移築はおよそ明治42年(1909年)のことになる。
「旧池田家文庫」の蔵として
林原美術館東蔵の価値は、建物そのものよりも、中に何が納められていたかと強く結びついている。文化庁の解説は、東蔵を膨大な貴重資料を収めた「旧池田家文庫」の建物として貴重だと位置づけている。
池田家文庫とは、池田光政が寛永9年(1632年)に鳥取から岡山城へ移ってから、明治4年(1871年)の廃藩置県までのおよそ240年間の岡山藩の藩政資料と、池田侯爵家が伝えた書物をまとめた呼び名である。岡山県教育委員会の資料によれば、藩政資料68,083点、和書4,166部(22,117点)、漢籍653部(10,420冊)にのぼる。
同じ県の資料は、岡山大学に寄贈される昭和34年(1959年)まで、これらの資料が東蔵に収められていたと説明している。一方、岡山大学側の説明では、文庫の主要部分は戦後に地元の期成会が買い取って大学へ寄贈し、昭和34年には明治以降の家政に関する資料が林原一郎の厚意で加わったとされる。いずれにしても、藩の記録の大きな部分がこの小さな蔵で明治から戦後までを過ごしたことになる。
登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」で、中蔵・西蔵とともに武家の蔵が並ぶ町並みをつくっている点も評価に含まれている。
林原美術館東蔵の外壁
林原美術館東蔵は土蔵造の2階建で、屋根は切妻造の本瓦葺。外壁は白い漆喰で塗り、腰から下は平瓦を斜め45度に並べる四半張で仕上げている。
並びの中蔵と西蔵は、腰の下を海鼠壁とし、2階の壁にも海鼠壁の帯を回す。文化庁の解説は、中蔵と西蔵ではこの帯に触れているが、東蔵については腰の四半張だけを挙げている。3棟を東から見比べるときは、腰の瓦の並べ方と2階の壁の違いに注目すると、同じ屋敷から来た蔵にも仕上げの差があることが分かる。
文化庁のデータベースには、南面の外観のほかに東側の小屋組を写した写真も収められている。89平方メートルという規模は、3棟の中で中蔵の約6割、西蔵の約半分にあたる。
林原美術館東蔵を見学するには
林原美術館の展示はすべて本館の展示室で行われており、林原美術館東蔵の内部を公開するという案内は美術館の利用案内には見当たらない。見られるのは外観である。
東蔵は敷地の北の縁、石垣の上に建ち、正面は南を向く。美術館の敷地のどこから外観を見られるかは、来館時に受付で確かめておきたい。かつてここに納められていた池田家文庫は岡山大学附属図書館が所蔵しており、岡山市の岡山シティミュージアムで毎年開かれる池田家文庫絵図展で、その一部を見ることができる。
Q&A
- 林原美術館東蔵はいつの建物ですか?
- 明治前期(1868〜1882年)の土蔵で、明治42年(1909年)頃に生坂向邸から現在地へ移築されました。
- 林原美術館東蔵に池田家文庫が収められていたのは本当ですか?
- 文化庁の解説は東蔵を旧池田家文庫の建物としています。岡山県の資料は、岡山大学に寄贈される昭和34年(1959年)まで東蔵に収められていたと説明しています。
- 林原美術館東蔵はなぜ登録有形文化財になったのですか?
- 「国土の歴史的景観に寄与しているもの」として令和5年(2023年)に登録されました。池田家文庫を納めた蔵であることと、武家の蔵の町並みをつくる点が評価されています。
- 林原美術館東蔵とほかの2棟の蔵はどう違いますか?
- 東蔵は建築面積89平方メートルで最も小さく、腰の仕上げは平瓦の四半張です。中蔵と西蔵は腰に海鼠壁を張り、2階の壁にも海鼠壁の帯を回しています。
- 林原美術館東蔵の中に入ることはできますか?
- 内部を公開するという案内はありません。外観をどこから見られるかは、来館時に美術館の受付で確認してください。
基本情報
| 名称 | 林原美術館東蔵 |
|---|---|
| 所在地 | 岡山県岡山市北区丸の内2丁目7-115 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) |
| 指定年 | 令和5年(2023年)登録 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 木造2階建、瓦葺、建築面積89平方メートル |
| 所有者 | ナガセヴィータ株式会社 |
| 公開状況 | 外観のみ(内部公開の案内なし、見学位置は美術館に要確認) |
参考文献
- 国指定文化財等データベース(文化庁)林原美術館東蔵
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00014671
- 文化遺産オンライン 林原美術館東蔵
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/594133
- 岡山県 林原美術館本館、東蔵、中蔵、西蔵、長屋門(PDF)
- https://www.pref.okayama.jp/uploaded/attachment/350711.pdf
- 岡山大学・国文学研究資料館 共同プレスリリース「池田家文庫」の一部を高精細デジタル画像でオンライン公開(PDF)
- https://www.okayama-u.ac.jp/up_load_files/press_r4/press20221130-7-2.pdf
- 岡山市 企画展 池田家文庫絵図展「幕末維新期の池田家」
- https://www.city.okayama.jp/okayama-city-museum/0000074947.html
最終更新日: 2026.09.24