赤瓦の主屋と、その建て方
渡久山家住宅主屋は、沖縄県石垣市字大川にある大正14年(1925年)建築の木造平屋建ての住宅で、平成19年(2007年)10月2日に国の登録有形文化財に登録された。読みは「とくやまけじゅうたくしゅおく」。渡久山家住宅の敷地の中央に建ち、屋根は赤瓦の本瓦葺、建築面積は128平方メートルである。
石垣市の解説には、この家がどう建てられたかが残っている。建築主は郵便局に勤めており、建築材を少しずつ買い集めては「スーガン(潮乾)」をして蓄えたという。スーガンは、虫がつかないよう材木を一定の期間、浜の砂に埋めておくことを指す。
建てた日付と棟梁の名も分かる。棟木には「天官賜福 紫微鑾駕 大正十四年旧五月二十七日建築 棟梁宮良英良」と墨で書かれている。「天官賜福紫微鑾駕」は沖縄で古くから棟木に記してきたまじないの言葉で、家の災いを除き、福を招く願いが込められている。
登録の理由:伝統の間取りを開いた家
渡久山家住宅主屋の登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。大川の内陸部に赤瓦の屋根を見せる大正の住宅として、町並みの景色をつくっている点が評価された。
文化庁の解説は、この主屋を「伝統的な間取りでありながら開放的」とまとめている。一番座・二番座とそれぞれの裏座を田の字に並べる形は、八重山の住まいの定型にあたる。そのうえで渡久山家住宅主屋は、一番座と二番座の境の柱を省き、縁側の隅の壁も取り払っている。
なぜそうしたのかについて、石垣市の解説は、建築主の職業から集会や祝宴の機会があり、二つの座敷をひと続きに広く使う考えがあったのだろうと推測している。定型の平面を守りながら、使い方に合わせて柱と壁を抜いた点に、この主屋の個性がある。
見どころ:屋根の形と島の木
渡久山家住宅主屋の屋根は、南北に棟を通した寄棟造の屋根に、一段低い寄棟の屋根が直角に折れて取り付く形をしている。上から見ると、大小二つの屋根がかぎ形に組み合わさる構成である。間取りでは、左の奥に台所が接続している。
材料は島の木でそろえられている。石垣市の解説によると、柱はすべてイヌマキ、梁や桁などの軸組はフクギなど石垣島産の木材で組まれている。潮に浸して蓄えた材が、そのまま柱や梁になったことになる。
石垣市は縁側の壁を省いた位置を東南の隅としている。外から眺める機会があれば、屋根の大小の組み合わせと、軒下の縁側の隅がどう抜けているかに目を留めたい。
主屋の見学について
渡久山家住宅主屋は個人の住まいで、内部は公開されていない。敷地に入ることもできないため、見学は道路から外観を眺める形になる。
主屋は敷地の中央にあり、門口の石垣越しに赤瓦の屋根が見える。一番座・二番座の境や棟木の墨書は室内にあるため、外からは見られない。写真を撮る場合も、敷地の外から、住む人の暮らしが写り込まないよう配慮してほしい。
Q&A
- 渡久山家住宅主屋はいつ建てられ、いつ登録されましたか?
- 大正14年(1925年)の建築で、棟木の墨書には旧暦5月27日の日付がある。平成19年(2007年)10月2日に登録有形文化財に登録された。
- 渡久山家住宅主屋の棟木に書かれた「天官賜福紫微鑾駕」とは何ですか?
- 沖縄に古くから伝わる、棟木に書くまじないの言葉である。家の災いを除き、福を招くことを願って記される。
- 渡久山家住宅主屋の間取りにはどんな特徴がありますか?
- 一番座・二番座と各裏座を田の字に並べる伝統的な間取りだが、一番座と二番座の境の柱と、縁側の隅の壁を省いて開放的にしている。
- 渡久山家住宅主屋にはどんな木材が使われていますか?
- 石垣市の解説によると、柱はすべてイヌマキで、梁や桁などの軸組はフクギなど島産の木材である。材は潮乾(スーガン)をして蓄えられたという。
- 渡久山家住宅主屋の中を見学できますか?
- 個人の住まいのため内部は非公開で、敷地にも入れない。道路から門口の石垣越しに赤瓦の屋根を眺める形になる。
基本情報
| 名称 | 渡久山家住宅主屋(とくやまけじゅうたくしゅおく) |
|---|---|
| 所在地 | 沖縄県石垣市字大川340 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) |
| 指定年 | 平成19年(2007年)10月2日登録 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 木造平屋建、瓦葺、建築面積128平方メートル |
| 所有者 | 個人 |
| 公開状況 | 非公開(外観は道路からのみ) |
参考文献
- 渡久山家住宅主屋(文化庁 国指定文化財等データベース)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00006258
- 渡久山家住宅主屋(文化遺産オンライン)
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/171562
- 登録有形文化財 入嵩西家住宅・渡久山家住宅(石垣市 文化財解説PDF)
- https://www.city.ishigaki.okinawa.jp/material/files/group/41/P17_bunkazai.pdf
最終更新日: 2026.09.28