和館の上に洋室を載せた、船場商人の別荘の主屋

市川家住宅(旧亀岡家別荘)主屋は、大阪市住吉区帝塚山西にある大正後期(1919〜1926年)の別荘建築で、令和6年(2024年)8月15日に国の登録有形文化財に登録された。登録番号は27-0907で、同じ敷地の土蔵、表門及び塀、北中門及び待合、南中門とともに同日付で登録されている。

文化庁の解説によれば、大阪の船場で事業を営んだ実業家が建てた別荘の主屋である。

構造は木造2階建で、屋根は桟瓦葺を基本に一部を銅板で葺く。建築面積は207平方メートル、渡廊下が付く。平成元年(1989年)に改修を受けている。

登録の理由:和風の構えに洋館をひと部屋ぶん重ねた珍しい構成

市川家住宅(旧亀岡家別荘)主屋は、登録基準のうち「国土の歴史的景観に寄与しているもの」に当たるとして登録された。

全体は和風が基調で、南と西の庭に面した座敷は、床構えをはじめ用材と意匠に手をかけたつくりになっている。ところが2階の南西隅だけは、マントルピースを備えた洋室になっている。外観も白く塗った外壁に上げ下げ窓を並べ、ゆるいアーチ形の小壁で縁取ったベランダを南と西に張り出すため、和風の屋根並みのなかでこの一角だけが洋館の顔を見せる。

大正から昭和初期の住宅では、玄関脇に洋風の応接室を一室設ける例がよく見られる。大阪市の修景事業の解説は、市川家住宅のように下階を和館、上階を洋館とする構成は珍しく貴重だと評している。洋館部分の外壁は横羽目板張りで、ベランダは石張りの床に高欄を備える。室内も長方形の上げ下げ窓、壁紙張りの壁、漆喰塗りの天井といった当初の姿がよく残るという。

主屋は大阪市の都市景観資源にも選ばれており、地元の紹介では、和風住宅の2階にスペイン風の洋館が載る家として取り上げられている。

見どころ:2階南西隅の洋室とベランダ

市川家住宅の主屋でまず目を向けたいのは、2階南西隅の洋室まわりである。白い外壁、上げ下げ窓、アーチ形の小壁をもつベランダが組み合わさり、1階の座敷や瓦屋根とはっきり異なる表情をつくっている。

平成30年度(2018年度)には大阪市の修景補助を受けた修理が行われた。傷んでいた洋館部の外壁は既存に近い色で塗り直され、朽ちていた木製の手すりは元の意匠に合わせて作り直されている。いまベランダに見える手すりは、この修理で原形に戻されたものである。

1階の座敷は庭に向けて開く和の空間で、床構えの材や細部に施主の好みが表れているとされる。同じ屋根の下で、下の階は数寄を凝らした和室、上の階は暖炉のある洋室という対比が、この主屋のいちばんの特徴といってよい。

見学方法:個人の住まいで内部は非公開

市川家住宅(旧亀岡家別荘)主屋は現在も個人の住まいで、内部の公開は行われていない。拝観時間や拝観料の設定もなく、見学は敷地の外からに限られる。主屋は表門と塀の内側に建ち、洋室とベランダは南と西の庭に面しているため、道路から見通せる範囲は限られる。

撮影の可否について公表された決まりは見当たらない。周囲は閑静な住宅地なので、撮るとしても公道からの外観にとどめ、住まいの方や近隣への配慮を忘れないようにしたい。

洋館部分の外観は、大阪市の修景事例紹介のページで、ベランダの修理前後の写真とともに見ることができる。実物を見られない主屋の姿を知る手がかりになる。

Q&A

Q市川家住宅(旧亀岡家別荘)主屋はいつ建てられましたか。
A文化庁のデータベースでは大正後期(1919〜1926年)の建築とされ、平成元年(1989年)に改修されています。
Q市川家住宅(旧亀岡家別荘)主屋は見学できますか。
A個人の住まいのため内部は公開されていません。拝観時間や料金の設定もなく、見られるのは敷地の外から見える範囲に限られます。
Q市川家住宅の主屋はなぜ登録有形文化財になったのですか。
A「国土の歴史的景観に寄与しているもの」として登録されました。和風の住宅の2階南西隅にマントルピース付きの洋室とベランダを設けた構成が珍しく、座敷の用材や意匠も優れていることが評価されています。
Q市川家住宅の主屋は修理されていますか。
A平成元年(1989年)に改修され、平成30年度(2018年度)には大阪市の修景補助を受けて、洋館部分の外壁の塗り直しとベランダの手すりの復原が行われました。
Q市川家住宅(旧亀岡家別荘)主屋の洋室にはどんな特徴がありますか。
A2階南西隅の洋室にはマントルピースがあり、長方形の上げ下げ窓、壁紙張りの壁、漆喰塗りの天井が当初の姿をよく残しています。外には石張りの床と高欄をもつベランダが南と西に付きます。

基本情報

名称市川家住宅(旧亀岡家別荘)主屋
所在地大阪府大阪市住吉区帝塚山西4丁目84-1ほか
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年令和6年(2024年)8月15日登録
員数1棟
寸法木造2階建、瓦葺一部銅板葺、建築面積207平方メートル、渡廊下付
所有者個人(文化庁データベースに所有者名の記載なし)
公開状況非公開(個人の住まい。外観は敷地外から見える範囲のみ)

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁)「市川家住宅(旧亀岡家別荘)主屋」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00015036
文化遺産オンライン「市川家住宅(旧亀岡家別荘)主屋」
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/541204
大阪市都市整備局「修景事例紹介 帝塚山スタジオ(市川家住宅)」
https://www.city.osaka.lg.jp/toshiseibi/page/0000559109.html
大阪市「住吉区の都市景観資源(わがまちナイススポット)」
https://www.city.osaka.lg.jp/toshikeikaku/page/0000162573.html

最終更新日: 2026.09.24