道の突き当たりに立つ白壁の家財蔵

市川家住宅(旧亀岡家別荘)土蔵は、大阪市住吉区帝塚山西にある大正後期(1919〜1926年)の土蔵で、令和6年(2024年)8月15日に国の登録有形文化財に登録された。登録番号は27-0908である。

船場の実業家が構えた別荘(旧亀岡家別荘)の家財蔵として、主屋の西に建てられた。構造は土蔵造2階建、切妻造で屋根は本瓦葺、建築面積は55平方メートルある。昭和63年(1988年)に改修を受けている。

文化庁のデータベースは、時代の欄を「明治」としながら、年代の欄と西暦の欄では大正後期(1919〜1926年)としている。本記事は年代・西暦の欄に従った。

市川家住宅の土蔵は、西側の道路から一段下がった位置にあり、南に妻面、西に長い平側を見せる。前の道がこの蔵に突き当たって終わるため、通りの奥を白壁がふさぐ格好になる。

登録の理由:通りの景観の要になる蔵

市川家住宅(旧亀岡家別荘)土蔵は、「国土の歴史的景観に寄与しているもの」として登録された。文化庁の解説は、道路の突き当たりに建ち、景観の要となる土蔵だと述べている。

外壁は軒先まで漆喰で塗り込め、南面の窓には漆喰で塗り固めた鎧庇を付ける。東側には蔵前を設け、良材を用いた縁で主屋とつないでいる。戸口の扉は観音開きの鉄扉で、その上の楣には亀甲の家紋が付く。

大阪市の都市景観資源の紹介でも、この蔵は帝塚山の住宅開発の100年とともにある蔵として取り上げられ、手入れの行き届いた屋敷に立つ白壁の美しさが評価されている。屋敷町としての帝塚山の成り立ちを伝える存在として、景観上の価値は高いとされる。

見どころ:フラメンコスタジオとして生きる土蔵

市川家住宅の土蔵は、外観を保ったまま内部をフラメンコのスタジオに改修し、「帝塚山スタジオ」の本校として使われている。住吉区の取材記事によると、この家に嫁いだ市川惠子さんが蔵の中に板を敷いて踊ってみたところ手応えがよく、1988年にギャラリー兼スタジオのフリースペースとして開いたという。土蔵の改修年とされる昭和63年(1988年)と同じ年である。

同じ記事で市川さんは、蔵の中では足音に深みが出ると語っている。外から遮られた空間で音がよく響き、漆喰や真鍮、木の床といった素材が心地よいのだという。漆喰の壁には、訪れた内外のアーティストのサインが一面に書き込まれている。

外から見るなら、まず道の突き当たりに立って白壁全体を正面に収めたい。軒まで塗り込めた壁と南面の鎧庇、本瓦の切妻屋根がそろって見える。入口に付く鉄製の装飾格子の門扉は、現在のスタジオとしての用途を示すもので、大阪市の修景の解説は色の面でも蔵と違和感がないと評している。平成30年度(2018年度)の修景では、蔵の前面にある付属屋(登録対象外)の外壁が蔵に合わせて漆喰風に塗り替えられた。

見学方法:外観は道路から、内部はスタジオの催しで

市川家住宅(旧亀岡家別荘)土蔵は個人所有の建物で、文化財としての一般公開や拝観料の設定はない。外観は前面の道路から見ることができる。

内部はフラメンコ教室として使われているため、自由な見学はできない。帝塚山スタジオは体験レッスンを案内しており、蔵を会場にしたライブも開かれてきた。参加の条件や日程は変わるので、最新の情報はスタジオの案内で確かめてほしい。

撮影について公表された決まりは見当たらない。住宅地の中なので、撮るなら道路からの外観にとどめ、稽古中の音や出入りの妨げにならないよう気を配りたい。

Q&A

Q市川家住宅(旧亀岡家別荘)土蔵はいつの建物ですか。
A文化庁のデータベースは年代を大正後期(1919〜1926年)としています。時代の欄は「明治」と記されており、欄の間に食い違いがあります。昭和63年(1988年)に改修されています。
Q市川家住宅の土蔵の中に入ることはできますか。
A内部は帝塚山スタジオのフラメンコ教室として使われているため、自由な見学はできません。体験レッスンや蔵でのライブに参加すれば中に入る機会がありますが、条件はスタジオに確認してください。
Q市川家住宅(旧亀岡家別荘)土蔵はなぜ登録有形文化財になったのですか。
A道路の突き当たりに建ち、帝塚山の町並みの要になっていることから、「国土の歴史的景観に寄与しているもの」として登録されました。
Q市川家住宅の土蔵の見どころはどこですか。
A軒まで漆喰で塗り込めた外壁、南面の窓の鎧庇、本瓦葺の切妻屋根、観音開きの鉄扉と楣の亀甲の家紋です。外観は道の突き当たりから正面に見られます。
Q市川家住宅の土蔵はいつからフラメンコスタジオになっていますか。
A住吉区の取材記事によれば、1988年に土蔵の中のギャラリー兼スタジオとして開かれました。外観を保ったまま内部を改修しており、現在は帝塚山スタジオの本校です。

基本情報

名称市川家住宅(旧亀岡家別荘)土蔵
所在地大阪府大阪市住吉区帝塚山西4丁目84-1ほか
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年令和6年(2024年)8月15日登録
員数1棟
寸法土蔵造2階建、瓦葺、建築面積55平方メートル
所有者個人(文化庁データベースに所有者名の記載なし)
公開状況文化財としての一般公開なし(外観は道路から。内部はフラメンコスタジオとして使用)

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁)「市川家住宅(旧亀岡家別荘)土蔵」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00015037
大阪市住吉区「再発見!すみよし文化レポート その5 帝塚山スタジオ 市川恵子さん」
https://www.city.osaka.lg.jp/sumiyoshi/page/0000253591.html
大阪市都市整備局「修景事例紹介 帝塚山スタジオ(市川家住宅)」
https://www.city.osaka.lg.jp/toshiseibi/page/0000559109.html
大阪市「住吉区の都市景観資源(わがまちナイススポット)」
https://www.city.osaka.lg.jp/toshikeikaku/page/0000162573.html
帝塚山スタジオ 市川惠子フラメンコ舞踊研究所「アクセス」
https://www.flamenco-jp.com/access

最終更新日: 2026.09.24