石山寺多宝塔とは ― 建立年の分かる最古の多宝塔

石山寺多宝塔は、滋賀県大津市の石山寺境内に立つ鎌倉時代前期の多宝塔で、建久5年(1194年)の建立と墨書から推定され、昭和26年(1951年)に国宝に指定された。形式は三間多宝塔、屋根は檜皮葺で、文化庁は現存する多宝塔のなかで最も古く、また美しいものと評している。

多宝塔は、方形の下層の上に、亀腹と呼ばれる白い饅頭形の部分を介して円形の上層を載せる、日本で発達した塔の形式である。石山寺多宝塔は伽藍の上段、寺名の由来となった硅灰石の岩塊を見上げた先に立っており、岩と塔を一緒に眺められる構図が石山寺を代表する景観になっている。

寺によれば、建立年は下層の須弥壇上框の裏面に残る墨書で判明している。寺は源頼朝の寄進と伝えるが、墨書から分かるのは年代であり、寄進者は寺伝として受け止めるのがよい。

国宝としての価値

石山寺多宝塔は明治32年(1899年)に当時の制度で指定され、文化財保護法のもとで昭和26年(1951年)6月9日に国宝に指定された。指定には附(つけたり)として棟札1枚が含まれる。

価値の中心は、年代の確かさと姿の良さにある。建久5年という建立年が分かる多宝塔として最古であり、鎌倉時代初期の多宝塔の形を知る基準になる。文化庁の解説は、上層がよく締まって上下の釣り合いが良く、比較的緩い勾配の檜皮葺の屋根に青銅製の相輪を載せた形が見事に調和していると述べている。

構造の特徴

下層は角を大きく面取りした柱の上に出組の組物を載せ、面取りした垂木を二軒に重ねて軒を受ける。上層は円柱の上に四手先の組物を組み、二軒の深い軒を張り出す。下層に比べて上層がぐっと細く絞られていることが、塔全体の軽やかさにつながっている。

内部には高欄付きの仏壇を設け、内陣・外陣とも折上小組格天井を張る。柱をはじめ内部の全面に彩色が施されている。本尊は鎌倉時代の仏師快慶の作と判明している金剛界大日如来坐像で、寺によれば四天柱には密教の教えに基づく54体の尊像が描かれている。像と柱絵はそれぞれ重要文化財に指定されている。

修理の歴史

建立後は数回の修理を経ており、文化庁によれば昭和7年から8年(1932〜1933年)に解体修理、平成23年から24年(2011〜2012年)に屋根の葺き替えが行われた。寺の記録では、前回の檜皮葺の葺き替えは昭和40年(1965年)で、46年を経て雨漏りによる腐朽が進んでいたため、平成24年(2012年)3月23日に葺き替え工事が竣工した。

石山寺多宝塔の見どころ

最初に、硅灰石の岩塊の前から塔を見上げたい。灰白色の岩の上方に、檜皮の屋根を2段に重ねた塔が立ち上がる。文化庁が「釣り合いが良い」と評した上下の比率は、この距離から見るとよく分かる。

塔の前の広場まで上がったら、軒下に目を移す。下層の出組と上層の四手先では、組物の張り出しの深さがまるで違う。上層の円柱が四手先で大きく軒を支える様子は、下から見上げると特に迫力がある。

塔の西側には、源頼朝と亀谷禅尼の供養塔と伝わる2基の宝篋印塔が並ぶ。頼朝の寄進と伝わる多宝塔と、頼朝ゆかりの供養塔を合わせて見ておくと、石山寺と鎌倉幕府とのつながりが伝承の上でどう語られてきたかが見えてくる。

石山寺多宝塔の拝観方法

石山寺多宝塔の内部には入れない。塔のすぐ近くまで寄って外観を拝観し、外からお参りする形になる。境内に入るには入山料が必要で、塔の外観は開門時間内であればいつでも見学できる。

建物の外観は申請なしで自由に撮影でき、寺は多宝塔を撮影可能な場所に挙げている。本堂の東から硅灰石の前を通り、石段を上がると塔の前の広場に出る。境内への行き方、開門時間、入山料は石山寺のページにまとめてある。

Q&A

Q石山寺多宝塔はいつ建てられたのですか?
A下層の須弥壇に残る墨書から、建久5年(1194年)の建立とされます。建立年の分かる多宝塔としては最古です。
Q石山寺多宝塔はいつ国宝に指定されましたか?
A昭和26年(1951年)6月9日に国宝に指定されました。それ以前、明治32年(1899年)に当時の制度で指定を受けています。
Q石山寺多宝塔の中に入って本尊を拝観できますか?
A塔の内部には入れません。塔のすぐ近くから外観を拝観し、外からお参りすることができます。本尊は快慶作の大日如来坐像です。
Q石山寺多宝塔は源頼朝が建てたのですか?
A寺では源頼朝の寄進と伝えています。墨書で確かめられるのは建久5年(1194年)という建立年で、寄進者は寺伝です。
Q石山寺多宝塔は境内のどこにありますか?
A伽藍の上段、硅灰石の岩塊を見上げた先に立っています。本堂の東から岩の前を通り、石段を上ると塔の前の広場に出ます。

基本情報

名称石山寺多宝塔(いしやまでらたほうとう)
所在地滋賀県大津市石山寺1-1-1(石山寺境内)
指定区分国宝(建造物)
指定年昭和26年(1951年)6月9日国宝指定(明治32年(1899年)4月5日に旧法で指定)
員数1基(附 棟札1枚)
寸法三間多宝塔、檜皮葺
所有者石山寺
公開状況外観は境内で拝観可(入山料が必要)。内部は非公開

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁)― 石山寺多宝塔
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/1316
石山寺 多宝塔 ― 大津市
https://www.city.otsu.lg.jp/bz/a/6/28/60797.html
国宝 石山寺多宝塔 平成大修理 ― 大本山 石山寺 公式ホームページ
https://www.ishiyamadera.or.jp/guide/event/tahoutou-repair
境内のご案内 ― 大本山 石山寺 公式ホームページ
https://www.ishiyamadera.or.jp/guide/precincts
撮影申請について ― 大本山 石山寺 公式ホームページ
https://www.ishiyamadera.or.jp/about/shooting

最終更新日: 2026.09.26