石山寺鐘楼とは ― 白い袴腰をまとった鎌倉時代の鐘楼

石山寺鐘楼は、滋賀県大津市の石山寺境内に立つ鎌倉時代後期の鐘楼で、明治40年(1907年)に重要文化財に指定された。桁行3間、梁間2間の2階建てで、下層を白い漆喰塗りの袴腰で包み、上層に梵鐘を吊る。屋根は入母屋造、檜皮葺である。

建っているのは本堂の東側、伽藍の中段にあたる一角で、寺の案内では経蔵と向かい合う位置とされる。石段を上がって本堂のほうへ進むと、木立の間から裾の広がった白壁と、その上に大きく反る檜皮の屋根が目に入ってくる。

寺伝では源頼朝の寄進と伝える。一方、文化庁の国指定文化財等データベースは時代を「鎌倉後期」とし、大津市も建物細部の手法から鎌倉時代後期の建立と考えられると説明している。頼朝の没年は正治元年(1199年)なので、寺伝の年代と建築からみた年代には数十年から100年以上の開きがある。本記事では建物の年代を文化庁の判定に従い、頼朝寄進は寺の伝承として扱う。

重要文化財としての価値

袴腰付の鐘楼は、下層の四周を裾広がりの板壁や土壁で囲い、袴をはいたような姿に見せる形式である。石山寺鐘楼はこの形式のなかでも規模が大きく、寺の案内によれば上層は正面・背面が5.6メートル、両側面が3.3メートルある。この大きさの屋根を檜皮で葺き、白壁の袴腰と上層の木部との釣り合いを保っている点が、建物全体の均整として高く評価されている。

石山寺は天正元年(1573年)の兵火で多くの堂宇を失ったが、寺の記録によれば鐘楼は本堂・多宝塔とともに焼失を免れた。慶長年間(1596〜1615年)の復興で新しく建てられた建物が多い石山寺にあって、中世にさかのぼる数少ない建物の1つである。

指定には附(つけたり)として棟札1枚が含まれている。建物の修理や由来を記した木札で、建物本体とあわせて保護の対象になっている。

上層に吊られた平安時代の梵鐘

上層には平安時代の梵鐘が吊られている。銘は無いが音色の良さで知られ、鐘楼とは別に梵鐘そのものも重要文化財に指定されている。鐘のほうが建物より古く、鎌倉時代後期に鐘楼が建てられた時点で、すでに由緒ある鐘として受け継がれていたことになる。

寺の案内によれば、この鐘は下層から撞木の綱を引いて撞く仕組みになっている。袴腰の中から撞く珍しい構造で、上層に人が上がらずに鐘を鳴らせるよう工夫されている。

石山寺鐘楼の見どころ

まず見たいのは、袴腰の裾の広がりと、その上に載る上層の軽さの対比である。白壁が台座のように建物を持ち上げ、上層の柱や組物は壁に囲われずに外気にさらされている。横から回り込むと、正面5.6メートルに対して側面3.3メートルという細長い平面がよく分かり、入母屋の妻が正面ではなく側面に向く構成も読み取れる。

屋根の檜皮葺も近くで見ておきたい。檜の樹皮を薄く重ねて葺いた屋根は、軒先の断面に幾層もの皮の重なりが現れる。瓦屋根の東大門や経蔵と見比べると、同じ境内でも時代と用途によって葺き材が違うことがよく分かる。

梵鐘は上層の内側に吊られているため、下からは見上げる形になる。袴腰の際まで近づくより、少し離れて上層の内部をのぞくほうが鐘の姿をとらえやすい。

石山寺鐘楼の見学方法

石山寺鐘楼は境内の屋外に立っており、外観は開門時間内であればいつでも見学できる。境内に入るには入山料が必要である。建物内部への立ち入りや、上層に上がることはできない。

個人による撮影は、建物の外観であれば申請なしで自由にできる。寺は撮影可能な場所の1つとして鐘楼を挙げている。三脚を使う場合は周囲の苔や植え込みを傷めないよう注意したい。

本堂から東へ進むと鐘楼の前に出る。境内への行き方、開門時間、入山料は石山寺のページにまとめてある。

Q&A

Q石山寺鐘楼はいつ建てられたのですか?
A文化庁の国指定文化財等データベースは鎌倉時代後期の建立としています。寺では源頼朝の寄進と伝えていますが、建物細部の手法からみた年代は鎌倉時代後期です。
Q石山寺鐘楼はいつ重要文化財に指定されましたか?
A明治40年(1907年)8月28日に指定されました。指定には附として棟札1枚が含まれます。
Q石山寺鐘楼の梵鐘は何が珍しいのですか?
A上層に吊られた平安時代の梵鐘を、下層から撞木の綱を引いて撞く構造になっている点です。梵鐘そのものも重要文化財に指定されています。
Q石山寺鐘楼の中に入ったり写真を撮ったりできますか?
A内部には入れません。外観は開門時間内に見学でき、個人の撮影であれば申請なしで自由に撮影できます。境内に入るには入山料が必要です。
Q石山寺鐘楼は境内のどこにありますか?
A本堂の東側、伽藍の中段にあたる場所で、経蔵と向かい合うように立っています。東大門から参道と石段を上がり、本堂の手前から東へ進むと見えてきます。

基本情報

名称石山寺鐘楼(いしやまでらしょうろう)
所在地滋賀県大津市石山寺1-1-1(石山寺境内)
指定区分重要文化財(建造物)
指定年明治40年(1907年)8月28日
員数1棟(附 棟札1枚)
寸法桁行3間、梁間2間、袴腰付、入母屋造、檜皮葺。上層は正背面5.6メートル、側面3.3メートル(寺の案内による)
所有者石山寺
公開状況外観は境内で見学可(入山料が必要)。内部は非公開

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁)― 石山寺鐘楼
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/1318
石山寺 鐘楼 ― 大津市
https://www.city.otsu.lg.jp/bz/a/6/28/60799.html
境内のご案内 ― 大本山 石山寺 公式ホームページ
https://www.ishiyamadera.or.jp/guide/precincts
石山寺の歴史 ― 大本山 石山寺 公式ホームページ
https://www.ishiyamadera.or.jp/about/history
撮影申請について ― 大本山 石山寺 公式ホームページ
https://www.ishiyamadera.or.jp/about/shooting

最終更新日: 2026.09.26