池田の町並みに立つ煉瓦の一本

中和商店煙突は、徳島県三好市池田町サラダにある大正15年(1926年)頃の煉瓦造煙突で、令和元年(2019年)12月5日に国の登録有形文化財となった。

酒造蔵の東側に建ち、釜場の蒸気を外へ逃がす。用途はそれだけである。所有は合名会社中和商店。享和2年(1802年)に刻み煙草の製造業として池田で創業し、煙草が専売制となったのちに酒造業へ転じた家である。

池田は四国のほぼ中央、吉野川上流の盆地にあたる。四方を山が囲むため冬の冷え込みが厳しく、その気候が醸造に向いた。かつては「四国の灘」とも呼ばれるほど酒蔵が集中していたと伝わるが、現在、三好市内で操業を続けるのは三蔵にとどまる。屋根越しに見えるこの煙突は、その集積がまだ厚みを持っていた時代の輪郭を、いちばん遠くから確認できる印になっている。

工作物としての登録

登録有形文化財の制度は平成8年(1996年)に始まった。おおむね築50年以上の建造物を対象とし、所有者が使い続けることを前提に、届出制のゆるやかな保護をかける仕組みである。中和商店煙突の登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」、登録番号は36-0205。

文化庁の台帳上、この煙突は「建築物」ではなく「その他工作物」に分類される。同じ敷地から同日に登録されたのは、事務所・酒造蔵・仕込蔵・杜氏宿舎の四棟と、この一基。五件がひとまとまりで酒造の場を構成している。

評価の軸のひとつは積み方にある。煉瓦はイギリス積、すなわち小口だけの段と長手だけの段を交互に重ねる積法で、明治以降の産業構造物に広く用いられた。基底部は1.3メートル角、頂部へ向かって少しずつ窄まる。上部には山形鋼と丸鋼を組んだ枠が回され、煉瓦を外側から締めている。地震による煉瓦煙突の被害が各地で知られたのち、こうした補強を加えた例は少なくない。

この規模の煉瓦煙突は、かつて銭湯にも醤油醸造場にも製糸場にも立っていた。残っているものは少ない。使われなくなった煙突は維持費のかかる構造物でしかなく、多くが取り壊された。中和商店の一基はいまも現役である。

見るときの手がかり

この煙突は道から見える。敷地内の他の登録物件と違い、予約も許可もいらない。JR阿波池田駅から東へ約500メートル、徒歩7分ほど歩けば、瓦屋根の上に姿が出てくる。

窄まり方に注目したい。滑らかな円錐ではなく、目地の線に沿って段階的に細くなる。下から見上げても、その割り付けが読み取れる。

高さにも注意を向けたい。9.4メートルは産業用の煙突としては低い部類に入る。工場ではなく、町なかの限られた敷地に建つ木造の酒蔵に必要なだけの高さ、という寸法である。

蔵の内部は通常非公開である。中和商店は稼働中の醸造元で、主銘柄「今小町」の仕込みは例年11月末から3月末にかけて行われる。見学を希望する場合は事前に問い合わせたい。年に一度、様子が変わる日がある。毎年2月の「四国酒まつり」では、中和商店(今小町)が三芳菊・芳水とともに11時から15時まで酒蔵を開放する。第28回は2027年2月20日(土)に予定されており、地酒試飲会の会場は三好市池田総合体育館、酒蔵開放は各蔵元で行われる。

撮影は、公道からであれば制限はない。門の内側では先に断りを入れたい。徒歩15分ほどの「阿波池田うだつの家・たばこ資料館」まで足を延ばすと、この家が酒を造る前に何を商っていたかが具体的に分かり、煙突の来歴も立体的になる。

Q&A

Q中和商店煙突の高さと構造を教えてください。
A高さ9.4メートルの煉瓦造で、基底部は1.3メートル角、頂部に向けて窄まります。煉瓦はイギリス積、上部は山形鋼と丸鋼の枠で補強されています。
Q中和商店煙突は予約なしで見られますか。
Aはい。煙突は公道から見えるため、いつでも見学・撮影ができます。ただし酒蔵の建物内部は通常非公開です。
Q中和商店の酒蔵の中に入れる機会はありますか。
A毎年2月の「四国酒まつり」で11時から15時まで酒蔵開放が行われます。第28回は2027年2月20日(土)の予定です。それ以外の時期は稼働中のため、事前に問い合わせが必要です。
Q中和商店煙突はいつ文化財に登録されましたか。
A令和元年(2019年)12月5日に登録有形文化財となりました。登録番号は36-0205、基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」です。同じ敷地の四棟も同日に登録されています。
Q中和商店煙突へのアクセス方法は。
AJR阿波池田駅から東へ約500メートル、徒歩7分ほどです。阿波池田へは高松・徳島・高知の各駅からJR特急で約1時間、神戸・大阪からは高速バスの直行便があります。

基本情報

名称中和商店煙突(なかわしょうてんえんとつ)
所在地徳島県三好市池田町サラダ1755
指定区分登録有形文化財(建造物・その他工作物) 登録番号36-0205
指定年令和元年(2019年)12月5日
員数1基
寸法煉瓦造、高さ9.4メートル(基底部1.3メートル角)
所有者合名会社中和商店
公開状況公道から常時見学可。蔵の内部は通常非公開(2月の四国酒まつりで酒蔵開放、他は要問合せ)

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁) 中和商店煙突
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00013197
合名会社中和商店 蔵について
https://www.imakomachi.com/warehouse.php
文化庁 登録有形文化財(建造物)の登録について(令和元年7月19日)
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/yukei_kenzobutsu/pdf/91972801_01.pdf
徳島池田 四国酒まつり イベント概要
https://www.shikoku-sakematuri.com/event/

最終更新日: 2026.08.02