お茶の水女子大学本館とは

お茶の水女子大学本館は、東京都文京区大塚のお茶の水女子大学キャンパスに昭和7年(1932年)に竣工した鉄筋コンクリート造3階建の校舎で、平成20年(2008年)に登録有形文化財に登録された。

建てられた当時の名は東京女子高等師範学校本館で、大正12年(1923年)の関東大震災で湯島の校舎を失った学校が、大塚の新しい校地に最初に建てた建物である。昭和6年(1931年)1月9日に起工し、昭和7年(1932年)8月31日に竣工した。工期は600日、延べ55,032人が工事に携わったと大学の記録は伝えている。

平面はコ字形で、建築面積は2,990平方メートル。正門を入った正面に横長の正面を見せ、両翼が南へ延びて中庭を囲む。中庭の中央には講堂(徽音堂)が建ち、本館の中央玄関から廊下でつながる。お茶の水女子大学本館は現在も大学の事務や講義に使われる現役の建物で、1階には大学の歴史資料館が置かれている。

震災復興校舎としてのお茶の水女子大学本館

文化庁は、お茶の水女子大学本館を「造形の規範となっているもの」として登録し、その解説で震災復興校舎の好例と位置づけている。焼失の教訓から不燃の鉄筋コンクリート造が選ばれ、外壁には昭和初期に流行したスクラッチタイルが貼られた。表面を串で引っかいたような筋を持つ茶色のタイルで、手作りのため一枚ごとに色味が少しずつ違う。

設計は文部省建築課で、建築課長の柴垣鼎太郎、設計掛長の高橋理一郎、設計者の田中徳治の名が記録に残る。施工は清水組。アール・デコの意匠を取り入れつつ、布目タイルや富国石といった当時の新しい材料を使っている。

内部には貴賓室も設けられた。皇后や皇族が来校したときに使われた部屋で、館内でもとりわけ装飾が濃い。女子の高等教育を担う学校の本館として、格式を求められた建物だったことがうかがえる。

平成15年(2003年)9月から平成18年(2006年)9月にかけて、講堂を含む本館全体の改修工事が行われた。外観を保存したうえで内装の一部を竣工当時の姿に戻し、その翌々年に登録を受けている。

お茶の水女子大学本館の見どころ

正面の白いレリーフと車寄せ

正門から歩いてくると、茶色のタイル壁のなかで正面中央だけが白く塗り分けられているのがわかる。文化庁の解説が指摘するとおり、大庇を張り出した玄関のまわりに装飾が集められ、白い壁面にはぶどうの房と葉、つるを題材にした植物紋様のレリーフが浮かぶ。左右対称の構成で、近づくほどレリーフの彫りの深さが読み取れる。

車寄せは大きく弧を描き、玄関扉は真鍮製の蝶番や取っ手を含めてほぼ竣工時のままだという。鋳鉄製の換気口のような小さな部材にも、昭和初期らしい簡潔な意匠が施されている。

玄関ホールと階段

玄関ホールの床は白と黒の大理石を市松に張り、天井には緩やかなアーチの装飾がかかる。ステンドグラスは正方形を基調にした幾何学模様で、ガラスの大半が当時のものである。中央階段の手すり子は黒い鋳鉄製で、別の階段の壁にはガーゼを押し当てたような模様の布目タイルが貼られている。館内のところどころに残るアーチ形の化粧梁も、アール・デコの手法を伝える部分である。

旧洋式作法室のマントルピース

中庭に面した121室は、かつて洋式の礼儀作法を教えた洋式作法室で、授業で使われた大理石張りのマントルピースが竣工時のまま残っている。いまは歴史資料館の展示室で、公開日に入れるお茶の水女子大学本館の室内のうち、当時の内装をもっともよく感じられる場所である。

お茶の水女子大学本館の見学方法

お茶の水女子大学本館の外観は、正門で入構手続きを済ませれば屋外から見ることができる。正面のレリーフは正門からまっすぐ進んだ位置でよく見え、撮影も屋外からなら可能だが、学生が写り込まないよう気をつけたい。

室内で見学できるのは、1階の歴史資料館(121室・136室)である。入場は無料で、特別公開日は予約なしで入れる。それ以外の日は希望日の2週間前までに申し込めば、平日午前9時から午後4時30分のあいだに案内を受けられる。旧貴賓室(現在の大学会議室)は内部非公開で、階段教室も授業のあるときは入れない。キャンパスへの行き方と入構の条件は、お茶の水女子大学のページにまとめてある。

Q&A

Qお茶の水女子大学本館はいつ、誰が設計したのですか?
A昭和6年(1931年)1月に起工し、昭和7年(1932年)8月に竣工しました。設計は文部省建築課で、建築課長の柴垣鼎太郎、設計掛長の高橋理一郎、設計者の田中徳治が担当し、清水組が施工しました。
Qお茶の水女子大学本館はなぜ登録有形文化財になったのですか?
A「造形の規範となっているもの」として平成20年(2008年)に登録されました。スクラッチタイル貼の外壁と、装飾を集めた白い玄関まわりを持つ鉄筋コンクリート造の校舎で、文化庁は震災復興校舎の好例としています。
Qお茶の水女子大学本館の中は見学できますか?
A1階の歴史資料館(121室・136室)は入場無料で見学できます。特別公開日は予約不要、それ以外の日は希望日の2週間前までの申込みが必要です。旧貴賓室などほかの部屋は原則として非公開です。
Qお茶の水女子大学本館の外壁のレリーフには何が描かれていますか?
Aぶどうの房と葉、つるを題材にした植物紋様です。茶色のスクラッチタイルの壁のなかで、正面中央の玄関まわりだけを白い壁面にしてレリーフを配しています。
Qお茶の水女子大学本館は写真を撮ってもよいですか?
Aキャンパス内での撮影は屋外に限られています。入構手続きのあと、屋外から外観を撮影することはできますが、学生などの人物が写り込まないよう注意が求められています。

基本情報

名称お茶の水女子大学本館
所在地東京都文京区大塚2-35
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年2008年3月7日(登録)
員数1棟
寸法鉄筋コンクリート造3階建、建築面積2,990平方メートル
所有者国立大学法人お茶の水女子大学
公開状況外観は入構手続きのうえ屋外から見学可。本館内の歴史資料館は入場無料で、特別公開日以外は2週間前までに申込み

参考文献

国指定文化財等データベース「お茶の水女子大学本館」(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00006803
文化遺産オンライン「お茶の水女子大学本館」
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/153405
2011年企画展示「関東大震災とお茶の水女子大学本館―校舎焼失からの復興」(お茶の水女子大学デジタルアーカイブズ)
https://www.lib.ocha.ac.jp/archives/tenji_2011_archive.html
歴史資料館のご案内(お茶の水女子大学附属図書館)
https://www.lib.ocha.ac.jp/06/guide_shiryoukan.html
受験生向け大学見学・説明会(お茶の水女子大学)
https://www.ocha.ac.jp/visit/index.html

最終更新日: 2026.10.01