旧塩屋出店主屋とは
旧塩屋出店主屋(きゅうしおやでみせしゅおく)は、鳥取県八頭郡智頭町智頭の智頭宿にある明治30年(1897年)頃建築の木造2階建の町家で、平成12年(2000年)12月4日に登録有形文化財となった。切妻造・平入の瓦葺で、建築面積は163平方メートルある。
石谷家の分家である旧塩屋出店の母屋で、智頭街道に突き当たる通りに西面して建つ。町の案内によれば、先代の主屋は明治22年(1889年)9月の大火で焼け、いまの旧塩屋出店主屋はその後に建て直されたものである。
正面2階の低さが登録の理由
旧塩屋出店主屋は「造形の規範となっているもの」として登録された。文化庁の解説がとくに挙げるのは、正面の2階の立ちが低く、古風な印象を与える点である。
明治30年頃の建築でありながら、通りに向けた2階の背をあえて低く抑えている。町の案内も、明治の終わりの意匠としては古風だと述べ、通りに並ぶ格子戸を智頭宿の町並みを形づくる要素に位置づけている。
正面は長く、町の案内が記す規模は桁行10間半、梁間4間。玄関はその中ほどに開き、文化庁の解説は玄関の北側をカミテ、南側をシモテと呼び分けている。
舟底天井と床差しの竿縁
旧塩屋出店主屋の2階で、通りに面した部屋の天井は舟底天井である。舟の底を裏返したように中央を持ち上げた形で、2階の階高の低さを補うつくりになっている。階高を抑えた理由には、大火のあとで材木が足りなかったため、あるいは武士が刀を抜けないようにするためなど、諸説があると町の案内は紹介している。
同じ2階では、焼けた材木を使い回した跡や、木を継ぎ足した箇所も見られるという。明治22年の大火からの再建という来歴が、部材の表面に残っている。
1階の畳の部屋は竿縁天井だが、竿縁の向きが床の間と直角になる「床差し」である。ふつうは床の間と平行に竿縁を通すので、旧塩屋出店主屋の天井は少し変わっている。町の案内は、武家屋敷に多い形で、参勤交代の家臣が泊まったためではないかと推測している。玄関の土間まわりは天井を張らず、2階の根太をそのまま見せる。
八畳の床の間とガラスの縁側
八畳間の床の間は、脇床と書院をそろえた本格的な構えである。床柱は紫檀、書院には目の細かい栃の木を使う。書院は一見すると壁と平らな平書院に見えるが、実は廊下側に張り出した出書院になっている。
旧塩屋出店主屋の東側は庭園に面し、L字に回した縁側の外回りをすべてガラス戸とする。戸は1本の溝を滑らせ、開けるときは雨戸のように1か所へ引き寄せる仕組みである。ガラスは建てた当時の手づくりの板ガラスで、いまでは替えがきかない。座敷に座ったまま庭を一望できる。
近年改装された浴室の天井は、中央を一段持ち上げた折上げ天井で、湯気抜きの四面にはそれぞれ違う彫りが入る。廊下の天井にも細工があり、見上げながら歩きたい。
見学のしかた
旧塩屋出店主屋は内部が公開されており、座敷や縁側、2階の舟底天井の部屋まで見て回れる。入館は無料で、上がる前に玄関で履物を脱ぐ。
縁側のガラスは替えのきかない当時のものなので、叩いたり強く触れたりしないよう注意が呼びかけられている。雪の季節には、ガラス越しに白い庭と南天の赤が見える。
通りに出て正面を眺めると、2階の低さと格子戸の並びがよくわかる。旧塩屋出店主屋の外観は、少し離れた向かい側から見上げるのがよい。
Q&A
- 旧塩屋出店主屋はいつ建てられましたか。
- 文化庁のデータベースでは明治30年(1897年)頃です。明治22年(1889年)の大火で先代の主屋が焼けたあとに再建されました。町の案内は明治初期から中期の建築としています。
- 旧塩屋出店主屋が登録有形文化財になった理由は何ですか。
- 「造形の規範となっているもの」の基準で、平成12年(2000年)12月4日に登録されました。正面2階の立ちが低く、古風な印象を残す点が特色とされています。
- 旧塩屋出店主屋の舟底天井はどこにありますか。
- 2階の通りに面した部屋にあります。中央を持ち上げた天井で、低い階高を補うつくりです。
- 旧塩屋出店主屋の中は見学できますか。
- 見学できます。入館は無料で、玄関で履物を脱いで上がります。縁側のガラス戸は建築当時のものなので、手を触れないよう注意してください。
- 旧塩屋出店主屋の床の間にはどんな材が使われていますか。
- 八畳間の床の間は床柱が紫檀、書院が栃の木です。書院は廊下側に張り出した出書院になっています。
基本データ
| 名称 | 旧塩屋出店主屋(きゅうしおやでみせしゅおく) |
|---|---|
| 所在地 | 鳥取県八頭郡智頭町大字智頭545 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) 登録番号 31-0037 |
| 指定年 | 平成12年(2000年)12月4日登録 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 木造2階建、瓦葺、建築面積163平方メートル |
| 所有者 | 智頭町 |
| 公開状況 | 内部公開(入館無料、水曜休館) |
参考文献
- 国指定文化財等データベース 旧塩屋出店主屋(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00002089
- 旧塩屋出店主屋(文化遺産オンライン)
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/193089
- 塩屋出店(塩屋出店・西河克己映画記念館)
- https://shioyademise.okoshi-yasu.com/shioyademise.html
- はじめての方へ(塩屋出店・西河克己映画記念館)
- https://shioyademise.okoshi-yasu.com/first.html
最終更新日: 2026.09.28