初桜酒造仕込蔵

主屋の北側に、南北棟で十六間、端から端まで三十メートル近くにおよぶ細長い建物が延びる。これが酒を醸す仕込蔵である。敷地内の登録建物三棟のうち最も古く、明治初期の建築。建築面積376㎡と、三棟で最も大きい。

屋根は長さの途中で表情を変える。北を入母屋造、南を切妻造とし、ともに桟瓦葺。内部は中央部に床を張って2階建とし、下の仕込みの場の上に作業のための階を取る。

登録の理由と価値

平成18年(2006年)の登録にあたり、仕込蔵の登録基準は主屋とは異なり「国土の歴史的景観に寄与しているもの」とされた。登録有形文化財は重要文化財・国宝とは別の緩やかな区分で、一棟の出来栄えだけでなく、町並みの中で果たす役割によっても評価されうる。

仕込蔵が登録されたのは、街路に向けた長大な蔵の構えが、いまも酒造りの町の中心としての姿を保っているためである。紀の川上流のこの一帯は古く「川上」と呼ばれ、江戸中期以降、地酒の産地として知られた。かつてかつらぎ町には大和街道沿いに十六軒の蔵が並んだ。初桜酒造はその最後の一軒にあたる。

見どころ

敷地を東西に抜ける町道に、仕込蔵は特徴ある北妻面を向けている。壁は柱を見せない大壁づくりで、白い漆喰で塗りこめ、細い桟を組んだ連子窓を開く。長い側面の腰には竪板を張る。

いずれも発酵中の酒に安定した温度を保つための、飾り気のない丈夫な面構えだが、その抑制がかえって妻面に重みを与えている。現役の蔵のため内部は通常非公開だが、予約制の蔵見学では醸造の現場近くまで案内され、明治の仕込蔵の大きさを間近で確かめられる。

Q&A

Q仕込蔵とはどんな蔵ですか。
A酒を仕込み、発酵させる作業を行う蔵です。貯蔵・熟成のための蔵とは区別され、初桜酒造では登録三棟のうち最も古い建物です。
Qいつ頃の建物ですか。
A明治初期(明治時代は1868〜1912年)の建築です。地元では明治2年(1869年)頃の建設とも伝えられます。
Q内部を見学できますか。
A現役の酒蔵のため通常は公開されていませんが、予約制の蔵見学で醸造の現場を見ることができます。日を限って実施されるため、事前に蔵元へご確認ください。
Q飾り気のない蔵がなぜ文化財なのですか。
A「国土の歴史的景観に寄与しているもの」として登録されました。街路に沿う長い構えが、多くの蔵が栄えた町の景観をとどめています。
Q場所はどこですか。
A和歌山県伊都郡かつらぎ町中飯降85。JR和歌山線・中飯降駅から徒歩約5分です。

基本情報

名称初桜酒造仕込蔵(はつさくらしゅぞうしこみぐら)
所在地和歌山県伊都郡かつらぎ町中飯降85
指定区分登録有形文化財(建造物)/登録 平成18年(2006)8月3日、告示 同年8月24日
登録番号30-0093
員数1棟
時代明治初期(1868〜1911年)
構造及び形式木造2階建、桟瓦葺、北を入母屋造・南を切妻造、建築面積376㎡、桁行16間・梁間6間
登録基準国土の歴史的景観に寄与しているもの
アクセスJR中飯降駅(和歌山線)から徒歩約5分
公開状況現役の酒蔵。内部は通常非公開だが、予約制の蔵見学あり

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁)初桜酒造仕込蔵
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00005651
初桜酒蔵|和歌山県公式観光サイト
https://www.wakayama-kanko.or.jp/spots/detail_3305.html
初桜酒造「蔵見学」「呑み比べ体験」|和歌山県公式観光サイト
https://www.wakayama-kanko.or.jp/events/detail_3624.html

最終更新日: 2026.06.22