初桜酒造主屋

旧大和街道に南面し、桁行・梁行とも六間の正方形に近い構えをみせるのが初桜酒造の主屋である。建てられたのは大正初期(1912〜1925年)。慶応2年(1866年)創業の蔵元のうち、いまもかつらぎ町で唯一酒を醸し続ける初桜酒造にあって、住まいと客をもてなす場をかねた中心の建物にあたる。

木造2階建、入母屋造、桟瓦葺。一間は柱と柱の間の伝統的な基準寸法で二メートル弱、六間で正面はおよそ十一メートルとなる。東方を土間とし、西方は床を上げて2列に3室ずつを配する。かつらぎ町は北に和泉山脈、南に紀伊山地をひかえた盆地に近い地形で、寒暖差の大きい気候が酒造りに向く。

登録の理由と価値

平成18年(2006年)8月、主屋は敷地内の仕込蔵・囲蔵とともに登録有形文化財となった。重要文化財や国宝とは区分が異なり、平成8年(1996年)に設けられた、明治以降の建物を中心に広く対象とする制度である。指定のように現状を凍結するのではなく、登録によって記録し、所有者が使いながら受け継いでいける点に特徴がある。

主屋の登録基準は「造形の規範となっているもの」。希少性よりも、つくりの確かさと町家建築としての完成度が評価された。良材を用い、2階座敷の床脇柱など趣向を凝らした手のかかった仕事に、その質があらわれている。

見どころ

1階西方は床上を2列3室に整える。商家の住まいとして筋の通った間取りである。2階正面側には3室の続き間座敷を設け、客間や改まった席にあてる格を与えている。

現在この座敷は呑み比べ体験の場として使われる。畳に座り、雪見障子越しに庭を眺めながら自慢の酒を味わえる。雪見障子は下側の紙の部分を引き上げると透明なガラスが残り、外の植栽を切り取って見せる建具である。

注がれるのは看板銘柄の高野山般若湯。般若湯は寺院で酒をさす古い言葉で、飲酒を禁じられた高野山の僧が、寒夜に身体を温めるためわずかに口にすることを許された酒に由来する。蔵では今も近隣の世界遺産・丹生都比売神社へ献酒を続けている。

Q&A

Q主屋の中に入れますか。
A入れます。主屋では呑み比べ体験や蔵見学が行われ、敷地内には直売店もあります。体験は日を限り予約制で実施されるため、訪問前に蔵元へ日程を確認・予約するのが確実です。
Q重要文化財と同じですか。
A異なります。登録有形文化財は重要文化財・国宝とは別の、より緩やかな区分です。歴史的価値を記録しつつ、建物を日常的に使い続けられる点に特徴があります。
Qいつ建てられた建物ですか。
A大正初期、1912〜1925年の建築です。蔵そのものの創業はさらに古く、慶応2年(1866年)にさかのぼります。
Q高野山般若湯とはどんな酒ですか。
A高野山の伏流水と地元の酒米でつくる地酒です。「般若湯」は寺院で酒を呼んだ言葉で、僧が少量の飲酒を許された故事にちなみます。
Q行き方は。
AJR和歌山線の中飯降駅から徒歩約5分。和歌山県伊都郡かつらぎ町中飯降85にあります。

基本情報

名称初桜酒造主屋(はつさくらしゅぞうしゅおく)
所在地和歌山県伊都郡かつらぎ町中飯降85
指定区分登録有形文化財(建造物)/登録 平成18年(2006)8月3日、告示 同年8月24日
登録番号30-0092
員数1棟
時代大正初期(1912〜1925年)
構造及び形式木造2階建、入母屋造、桟瓦葺、建築面積197㎡、桁行6間・梁行6間
登録基準造形の規範となっているもの
アクセスJR中飯降駅(和歌山線)から徒歩約5分
公開状況現役の酒蔵。主屋は予約制で呑み比べ体験・蔵見学に使用。敷地内に直売店あり

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁)初桜酒造主屋
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00005650
初桜酒蔵|和歌山県公式観光サイト
https://www.wakayama-kanko.or.jp/spots/detail_3305.html
初桜酒造 公式サイト「初桜について」
https://hatsusakurashuzo.com/about/
初桜酒造「蔵見学」「呑み比べ体験」|和歌山県公式観光サイト
https://www.wakayama-kanko.or.jp/events/detail_3624.html

最終更新日: 2026.06.22