主屋より古い、江戸末期の小さな町家

旧村上家住宅付属屋は、愛媛県大洲市大洲字志保町東にある江戸末期(1830年〜1868年)建築の町家で、令和5年(2023年)8月7日に登録有形文化財となった。木蝋商として知られた村上家の屋敷のうち、志保町(しおまち)通に西面する主屋の北隣に建つ。木造2階建、瓦葺で、建築面積は32平方メートルしかない。

数字を並べると位置づけが見えてくる。同じ村上家の4棟のうち、主屋の建築面積は165平方メートル、貸家が39平方メートル、土蔵が34平方メートル。旧村上家住宅付属屋はそのなかで最も小さい。ところが建てられた時期はいちばん新しいわけではなく、主屋の明治2年頃(1869年)より前、江戸が終わる直前の時期にさかのぼる。

つまり主屋が建て替えられたとき、この小さな棟は残された。村上家が木蝋の商いで喜多郡屈指の豪商になっていく過程で、屋敷の正面だけが新しくなり、その北に付いた古い棟はそのまま使われ続けたことになる。令和元年(2019年)に改修を受けている。

登録の理由

旧村上家住宅付属屋の登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。文化庁の国指定文化財等データベースは、主屋と一体となって通り沿いの歴史的景観をつくる町家、と評価している。単独の建築的価値ではなく、隣り合う建物との連なりが評価の対象になった点が、この棟の登録理由の要である。

その連なりを実際に形づくっているのが軒の高さと構法である。旧村上家住宅付属屋は主屋と同じく、通りに面した1階に出桁造(だしげたづくり)の下屋を差し掛ける。桁を柱筋の前へ持ち出して深い庇をつくるやり方で、愛媛県の解説は、志保町通に面してこの形式をとるのは4棟のうち主屋と付属屋の2棟だと記している。並んで立つ2棟の軒線が続いているのは、建築年代が半世紀ほど離れていても構法を揃えたからである。

屋根は切妻造平入桟瓦葺。登録有形文化財は、外観を保ちながら建物を使い続けることを前提とした制度で、主屋と付属屋が別々の登録番号を持ちながら同じ日に登録されたのは、この2棟を分けて考えないためでもある。

見どころ

2階の正面を見上げてほしい。旧村上家住宅付属屋では、この面が壁で閉じておらず、出窓として通りへ張り出し、手摺が付く。主屋の2階が漆喰の大壁と出格子で構成されるのに対し、こちらは開いている。座って外を見るための造りで、通りの祭礼や人の行き来を眺める場所だったと考えられる。

1階は前土間形式である。主屋の中土間が奥まで通り抜けるのに対し、旧村上家住宅付属屋の土間は建物の前寄りに納まる。小さな間口の町家でよくとられる構成で、通りから土間へ、土間から板の間へと、短い動線で奥へ進む。

2階は2室に分かれ、西側の部屋に床構えが備わる。床の間を持つ部屋を、通り側つまり西に置いたことになる。文化庁のデータベースによれば、この4棟はいずれも2階に接客用の座敷を設けており、32平方メートルの小さな棟であっても客を通す部屋を上に持っていた。

見学方法とアクセス

旧村上家住宅付属屋は、分散型ホテル「NIPPONIA HOTEL 大洲 城下町」のOKI棟を構成する建物の一つとして活用されている。内部は宿泊者や施設利用者向けで、一般の見学はできない。志保町通からの外観の見学は自由で、料金はかからない。

外観の撮影は通りから自由に行える。内部は営業中の宿泊施設なので、撮影については運営者の案内に従ってほしい。

アクセスはJR予讃線の伊予大洲駅が起点になる。駅から南へおよそ1.5キロ、徒歩20分ほど、車では5分ほど。運営者は前日までに予約すれば駅からの送迎車を出している。車の場合、松山自動車道の大洲肱南インターチェンジから約10分。宿泊者向けの駐車場は「おはなはん通り駐車場」に確保されている。

旧村上家住宅付属屋を見るなら、正面の真向かいではなく、少し南に離れて主屋の側から見上げるとよい。深い軒が2棟にわたって続き、途中で高さが変わる。志保町通をさらに北へ行けば貸家が並び、屋敷の裏手には土蔵が建つ。

よくある質問

Q旧村上家住宅付属屋の内部は見学できますか。
A内部は宿泊施設として使われており、宿泊者や施設利用者に限られます。志保町通からの外観の見学は自由で、料金はかかりません。
Q旧村上家住宅付属屋はいつ建てられましたか。主屋とどちらが古いのですか。
A江戸末期、西暦では1830年から1868年の間の建築と推定されています。明治2年頃(1869年)の主屋より古い建物です。令和元年(2019年)に改修されました。
Q旧村上家住宅付属屋はどの文化財区分で、いつ登録されましたか。
A登録有形文化財(建造物)で、令和5年(2023年)8月7日の登録です。登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」です。
Q旧村上家住宅付属屋の外観で注目すべき点はどこですか。
A2階正面が出窓になり、手摺が付く点です。また1階に出桁造の下屋を差し掛けており、隣の主屋と軒線が続きます。
Q旧村上家住宅付属屋へのアクセスを教えてください。
AJR予讃線の伊予大洲駅から南へおよそ1.5キロ、徒歩20分ほどです。車なら5分ほどで、運営者が前日までの予約制で送迎車を運行しています。松山自動車道の大洲肱南インターチェンジからは約10分です。

基本データ

名称旧村上家住宅付属屋(きゅうむらかみけじゅうたくふぞくや)
所在地愛媛県大洲市大洲字志保町東379
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年令和5年(2023年)8月7日登録
員数1棟
寸法木造2階建、瓦葺、建築面積32平方メートル
所有者株式会社KITA
公開状況宿泊施設として活用。外観は通りから見学可、内部は宿泊者等に限る

参考文献

国指定文化財等データベース 旧村上家住宅付属屋(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00014694
文化遺産オンライン 旧村上家住宅付属屋
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/590466
わがまちの文化財 旧村上家住宅 主屋・付属屋・土蔵・貸家(大洲市)
https://www.city.ozu.ehime.jp/site/bunkazai/66298.html
えひめの文化財 旧村上家住宅主屋ほか3件(愛媛県)
https://www.pref.ehime.jp/ehimenotakara/758.html
NIPPONIA HOTEL 大洲 城下町 OKI棟
https://www.ozucastle.com/stay/oki
NIPPONIA HOTEL 大洲 城下町 アクセス
https://www.ozucastle.com/access/

最終更新日: 2026.09.04